2022.12.26 19:00
玉袋 しかしね、このニューサニーさん、いいね。このウナギの寝床的なね。しかも、なんかちょっと怪しさもあるっていう。昔はこの辺はピンクもあったらしいっていうね。
しょうこママ そうそう。昔はね。本多劇場ができてから、劇団員とかミュージシャンとかって街になったけど。
小原 この一角だけ当時のままなんですか?
しょうこママ そう、変わってない。
玉袋 びっくりしちゃったからね。下北、変わっちゃって。踏切なくなっちゃったもんな。
しょうこママ それはもう8年くらい前だよ。
玉袋 この店の成り立ちを聞かせてよ、ママ。どうやって宮崎から来ちゃったのよ?
しょうこママ たまたま隣にサニーってスナックがあって。50年以上前の話ね。そこでバイトしてたんだけど、そこのマスターが女と逃げちゃって。そしたら、親切な不動産屋さんが、ここが空いたからあんたやりなさいって言ってくれて、じゃあと思って、始めたの。水商売やろうと思ってやったわけじゃないのよ、最初はね。
玉袋 でも、宮崎から上京してきたわけでしょ。最初は何を目標に来たの?
しょうこママ 何もないね。
玉袋 いやいや、なんかあったでしょ?
しょうこママ 最初は新宿の会社に勤めてたのよ。
玉袋 そこでOLをやりながら。
しょうこママ そう。誘われてバイトで入って、それから延々と。
玉袋 あ、ちょっと待って。見ちゃった。あのホワイトボード。
小原 あぁ、フードのメニューが書いてありますけど。
しょうこママ それ、20年くらい変えてない(笑)。
玉袋 そう! 変わらないんだよ。俺が行ってた阿佐ヶ谷のスナックでも1年中、冷やし中華と鍋焼きうどんって書いてある(笑)。
しょうこママ そうでしょ。で、あるのかって言ったら、ない(笑)。
小原 素麺もあるんですね。
しょうこママ 素麺だけあるのよ。あれ、湯掻くだけで楽だから。
玉袋 またね、お姉さん達(菜央さんと奈美さん)が氷割ってるところがいい。美人揃いじゃない。
しょうこママ そう、うち、いい女ばっかりだもん。
玉袋 ママを筆頭に。
しょうこママ 私ぐらいの齢になると、女の子がいないと、客は来ないよ。
小原 そうですか?
しょうこママ そりゃそうよ。
小原 僕はむしろ若い人がいると緊張しますけどね。
玉袋 またぁ。綾ちゃんね、あんなバンドやってるんだから、ステージを見たら、みんなパンツ脱ぐぜ。
小原 それがそうでもないんですよ。ステージの上はやっぱりステージの上なんですよ。
玉袋 そうなの⁉ イヤだね。もうダメだ。俺もうね、どっちにも惚れちゃってんだ。スナックってそういうところあるわけよ。なんかこう疑似恋愛ができるって言うかね。生々しいことじゃないよ。生々しくなっちゃったらおしまいだから。そこの距離感だよね。
しょうこママ そうだね。
玉袋 このカウンターの幅を一尺としよう。この一尺にドラマがあるんだよ。だってさ、フェロモンがなきゃ店なんて繁盛しないんだから。こんな色気のあるママなんて久しぶりだよ。我々はカウンターのこっち側で適当にガチャガチャやってるだけっていうね。カウンターのこっち側は娑婆。向こう側はもう大変なところだ(笑)。カウンターはどうやったってどかせない。
小原 カウンターの向こう側ってことですね。
玉袋 出たね。またキラーフレーズが出た。
小原 出ましたね!
玉袋 ところで、綾ちゃん、スナックは?
小原 仕事柄、旅が多いから地方では。群馬の四万にあるJOY JOY JOYってわかります? そこに(ビート)たけしさんが足繫く通っているって自慢話をする店主がいて、そこが僕のサンクチュアリですね。
玉袋 出た、サンクチュアリ。でもね、俺もついに下北沢に聖地ができた。それがニューサニーだよ。
しょうこママ うまいこと言うねぇ。
玉袋 店の成り立ちの話に戻るけど、ママ、ここは何歳で始めたの?
しょうこママ 23よ。
玉袋 えぇっ。それから結婚を4回、5回と繰り返して?
しょうこママ いや、籍はきれいなのよ。体は少々汚れてるけど(笑)。
玉袋 ママ、そのフレーズはもう曲だよ。やってらんねえなぁ(笑)。商売上がったりだ、俺達。あ、「商売上がったり」ってタイトルもいいね。一応さ、ママのお話を聞くっていうスナックの連載だから。スナックでママと飲んでると、商売上がったりってフレーズが出てくるんだよな。ベテランの脚本家でも出せないフレーズを出してくるってところが参っちゃうわけよ。しかし、50年続けてこられた秘訣なんてあるの?
しょうこママ 違うのよ。気が付いたら、こんなになってたっていう。最初は恥ずかしかったもの。それがいつのまにか天職よ。仕事は楽しいもの。女子達は「いいよ。ママ、ゆっくりで」って言ってくれるけど、早い時間に出てくるのよ、店が楽しいから。
次のページ