新アルバム『FLOWERS』とバンドの現在地を語る
go!go!vanillas牧達弥に訊くメンバーの進化、新作で立ち返る“自分たちのフィールド”
2022.12.15 17:00
2022.12.15 17:00
お互いにリスペクトし合って変わった
──他の3人も牧さんと同じように見よう見まねでやってみようという精神を持っているとは思うのですが、やはりほぼ全曲の作詞・作曲を手掛ける牧さんが3人を引っ張ってきたところが大きいのでしょうか?
今、自分が好きな曲とか、聴いている曲とかは聴かせたりはしますね。今回だと、ヴルフペックっていうファンクやモータウンみたいな音楽をやっているバンドがアメリカにいるんですけど、そこのジョー・ダートってベーシストのプレイが僕はすごく好きで。うちのプリティ(長谷川プリティ敬祐)とはある意味真逆のプレイヤーなんです。そのジョー・ダートの何がいいのかって言うと、歌心のあるプレイがポール・マッカートニーに通じると言うか、音楽を楽しんでいるプレイヤーの音が僕はすごく好きなんですけど、逆にプリティは自分のプレイに慎重なタイプなんですよ。だから、技術的なものを求めるわけではなく、ヴルフペックを聴かせながら、細かいことを気にせずに楽しんで弾いてみたらって促すって言うのかな。(柳沢)進太郎のギターもそうですね。今回、アルバート・リーっていう60年代から活躍しているカントリーの名ギタリストがいるんですけど、進太郎はカントリーをあんまり通ってないから、そのアルバート・リーを一緒に聴きながら、「ここ、やべえ」「かっこよ」みたいな感じで、これができたら絶対かっこいいよね、みたいなところに持っていく感じで。
──その成果がモータウンっぽいポップ・ソングの「Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)」のアウトロに加えたカントリー風のリックですね。
そうです。その曲のストーリーは、映画みたいな感じで考えたんですけど、最後、出会いから結婚を経て、2人のこれからの人生がばーっと映像で流れて、2人のお墓が並んでいるところでエンドマークみたいなことを表現したいと思って、だったらカントリーだろうってテンポも違うものに変えて、ピアノにあっちゃん(井上)が入ってくれているんですけど、あっちゃんが限界のところまで行こうみたいな話になって、「これぐらいのテンポ、どう?」「全然弾ける」「じゃあ、これは?」「これは?」ってギリギリ弾けるBPMまで上げていったんですよ。それぐらいのテンポになると、感情で弾かないと無理なんです。あえてギリギリ弾けるテンポに設定したところが面白かったですね。
──実は今回のインタビューでは、新作の話のみならず、これまでバニラズが進化してきた中で牧さんはメンバー達の成長をどんなふうに見ているのかも聞かせてほしかったんですよ。ちょうどそんな話になったので、3人の成長についてもうちょっと聞かせてもらっていいですか?
なるほど。(ドラムのジェット)セイヤは一番、直球でロックンロールを愛してきた人間なんですけど、僕がビートルズだとしたら、彼はもっとティンエイジャー・ロックって言うか、下手でもそこにパッションが乗っかってたら最高じゃん、ロックンロールじゃんってタイプだから、僕とは違うんですよ。でも、彼が持っているパッション、エネルギーが僕は大好きで、お互いをリスペクトし合いながら、セイヤも僕が求めているものを、僕に見えないところで研究しているっていう(笑)。以前、「俺には俺のスタイルがあるし」って頑ななところがあって、そこに対して、「それしかできねえのかよ」って僕も思ってたんですけど、お互いにリスペクトし合うようになってからは、もっと求めてくれよって変わっていって。今回の制作でもセイヤから「いや、俺はこうしたいんだ」っていうのは一切なかったですね。基本的に僕が「ここはこういうフィル、タム回しで」とか、「ここはこの音に変えてもらってもいい?」とかって言うと、「それ、いいね」って言ってくれることが多かったですね。お互いがストレスなく、いいプレイをしながらできるようになったってところがあります。
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