本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第5回 熊木幸丸(前編)
Lucky Kilimanjaroの中心人物、熊木幸丸と語り合うダンスミュージックの可能性
2022.11.20 17:00
本間昭光×熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)
2022.11.20 17:00
できるだけ話すように歌おうとしてる(熊木)
熊木 単純に楽しかったんですよね。僕、高校受験が早く終わっちゃって、すごく暇だったんです。で、ギターやるしかなくて。ポルノグラフィティ繋がりでExtremeとかの、ハードロックやメタルを聴くようになりました。
本間 メタル面白いよねえ!難しいしかっこいいし。めちゃめちゃうまいよね、メタルの人たちって。
熊木 MEGADETHが本当に好きで、ずっとコピーしてて「メタルがいちばんかっこいいな」と思ってから、なんだかんだ今こういうバンドをやってるという。
本間 でもそれは全部が血となり肉となりですよ。やっぱりメタルのときの技術に鍛えられたものもあると思うし。メタルってモッシュが起きたり、ある意味ダンスミュージックなところがあるじゃないですか。変拍子多いし、ノれないような感じだけど結局みんなヘドバンとかでノっちゃうし。で、音楽的素養が深い人が多くて、技術も確かだし、フレーズもすごく良いのがいっぱいあるよね。だから(熊木くんは)メタル時代に自然とそういうバランス感覚が身に付いてる感じがします。メロディとか。
熊木 僕、Extremeのギタリストのヌーノ・ベッテンコートとか、MR. BIGとかスティーヴ・ヴァイとか、ちょっとメロディアスだけど技術もすごくてかっこいいっていうのが好きで。ある種歪んだギターのメロディってちょっとシンセの感覚に近いと思っていて、そういうところから自分のリードのシンセのメロディ運びが来ていると思います。
本間 抜けてるもんね、リードシンセ。
熊木 ギターソロ的に考えていると思います。それこそDaft Punkじゃないですけど、そのメロディのためにやっているみたいなことがシンセではよくあって。僕は鍵盤からじゃなくてギターから来ているメロディの感覚なんじゃないかなと思っています。
本間 それすごく分かりますね。やっぱり抜けてくるフレーズが明確で、アルバム全体聴いても「今これを聴かせたいんだな」という音が分かります。それがキックのときもあるし、フレーズのときもあるし、ボーカルのときもあるし。で、ボーカルも結構面白い処理してるなと思って聴いてるんだけど、あれはなにか意識しているの?
熊木 基本的にいつもやってくれているエンジニアの土岐彩香さんに任せっぱなしです。
本間 あの人はマニアックだからねえ(笑)。
熊木 彼女も自分でもDJやるくらいダンスミュージック好きなので、あまりリファレンスとか「こういうしたい」とかを提示せず、「この曲だったらこういう気分になりたいです、以上」のような感じで渡して、ほぼ完成です。ボーカルは特に最近できるだけ話すように歌おうと思っていて、張って歌うとリズムのエンベロープが綺麗にならない感じがあるのでこうやって話す感じで歌おうとはしてますね。
本間 アルバム全体的にそういう感じがあるもんね。彼女は音をよく知ってる。感覚も研ぎ澄まされているし。
熊木 感覚がいいですよね。何をかっこいいと思っているかがはっきりしてる。なので要らない部分はバッサリ削ってくるし。
本間 エンジニアってもはやアレンジャーとかプロデューサーの領域もあるもんね。
熊木 海外だとエンジニアって基本的にプロデューサーでもあり、という感じじゃないですか。それが本来的に作品を良くしていくというか、楽しくいく方向になると思うので、土岐さんには「何やってもいいです」と話してます。
本間 それがいいよ絶対に。今いちばん勢いのあるエンジニアが作るサウンドって、間違いなくアーティストのことも考えてやってるから、今やりたいことと次やるだろうっていうことの道標を想像しながらやってるところが大いにあると思うから。彼女は新しい技術も知ってるし、昔のこととかも知ってるから、ハウスミュージックのことめちゃくちゃ知ってるんじゃない?
熊木 ミニマルから定番のハウスまで全部知ってますね。
本間 そうだよね。さすがだね。
(後編に続く)