2022.10.05 18:00
2022.10.05 18:00
「2年前、この日本武道館で初めてワンマン・ライブをやりました。その時は人数の制限もあって、みんなも声を出せないし、どうなるのかなって思ったけど、めちゃめちゃ最高のライブができました。また戻ってくるその時は満員の日本武道館でやろうぜって言ったよな? 今日、それが叶ったぞ! 最高だ。本当に最高だ!」(牧達弥/Vo, Gt)
go!go!vanillas(以下、バニラズ)は2年前の約束を忘れてはいなかった。もっとも、それがその場限りの発言だとしても、それについてとやかく言う人間は1人もいなかったに違いない。しかし、誰よりもそれを言った本人がその約束を胸に刻み込んでいた。
そして、この日2022年9月30日、バニラズは満員の日本武道館でワンマン・ライブを開催し、2年を経て、見事、その約束を果たしたのだった。
「俺達が選んだことは間違ってなかった」とこの日、牧が言ったように、それがどれだけ彼らにとって大きな自信になったことだろう。そして、バニラズのファンはもちろん、バニラズと同じようにロックンロールを愛する人達をわくわくさせ、夢を与えたことか。
そして、バニラズはこの記念すべき1日を、さらに未来に繋げるためにファンと新しい約束も交わしたのだが、それについては後述する。まずは新旧の代表曲に加え、初披露の新曲も演奏した2時間半の熱演を、順を追って振り返っていこう。
ライブはサポート・メンバーの井上惇志(ピアノ)、手島宏夢(フィドル)、ファンファン(トランペット)を迎えたアイリッシュ・フォーク調のインスト・ナンバー「RUN RUN RUN」でスタート。そのままカントリー・パンクの「Hey My Bro.」になだれこむと、4人だけで「カウンターアクション」「クライベイビー」「お子さまプレート」と繋げ、序盤から観客をジャンプさせ、満員の会場を1つにしていく。
「今日という日を無事、迎えられたことが嬉しいし、ここに立っていることは現実だということをしっかり噛みしめながら、バニラズの最新、最高を更新していきたいと思います。準備はいいですか⁉ 今日は自分達の好きをたくさん集めました。今回、このステージの中にメンバーの好きなものがたくさんあります。さあ、そのアイテムを一緒に探しにいきませんか?」
牧がそう語りかけ、リトル・リチャード風のスキャットからなだれこんだ「サイシンサイコウ」では、セットがリビングルームを思わせるステージに隠されたメンバーそれぞれの好きなものを映し出す手持ちカメラの映像とステージ背面の巨大ビジョンの映像が連動するというアリーナならではの演出も楽しませる。因みにメンバーそれぞれの好きなものは長谷川プリティ敬祐(Ba)がマンガ、柳沢進太郎(Gt, Vo)がゲーム、ジェットセイヤ(Dr)がシルビアと名付けたグレイ型の宇宙人の人形、そして牧が花束だったことも記しておこう。
リズムが跳ねるポップ・ソングの「青いの。」、冒頭の美しいアカペラ・コーラスも聴きどころだった「ペンペン」。そして「ラッキースター」では、「周りを見てごらん。上も下もすごい人だ。がんばってよかった。こんな日が来てよかった。好きなものを好きなだけ貫き通して、辛い時もそうやって乗り越えていく。それは俺達もそうだし、俺達の音楽を聴いてくれてるここにいるあなたも乗り越えてくれたからこそ、今、ここに立ってます。自分に拍手を!」と牧が語りかけ、こんな粋な演出も──。
「そんな幸運な日本武道館。ここにいるすべての人に幸運のお土産を持って帰ってほしいと思います。お手持ちのスマートフォンを出してください。次にやる曲は、とても幸運な曲になってます。この1曲を、写真でもいいし、動画でもいいし、持って帰ってください。(スマホのきらめきが)星のようにめちゃめちゃきれい!」(牧)サポートの3人を再び迎えた「ラッキースター」のオーケストラル・ポップなアンサンブルが観客を酔わせる。伝えたいことがたくさんあるのか、この日の牧はいつも以上に饒舌だ。
「あの2年前の日本武道館から2年経って、まだコロナは完全に安心できるわけじゃないんだけど、少しずつ少しずつ、こつこつと自分達でどんどん一歩一歩前に進んできた結果、あの時よりも素晴らしい光景が俺達の目の前にあります。素晴らしい未来に向かっていることの形の1つだと思います。俺達が選んできたことは間違ってなかったと今、実感しているんで、音楽をいっぱい聴かせてもいいですか? ロックンロールをみんなに届けにやって来たぜ。新曲を聴いてよ!」
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