イナズマロック フェス 2022 特集 第2回
西川貴教ロングインタビュー【後編】──イナズマで得た家族、共に突き進む未来
2022.09.11 18:00
2022.09.11 18:00
呼ばれないんだったら主催しよう
──僕らの世代はほぼそうだと思うんですけど、僕は西川さんのことを「HEART OF SWORD ~夜明け前~」で知った人間でして。そこからビジュアル系バンドがずっと大好きなんですけど、後追いでLuis-Maryでの灰猫を知るって形ではあるのですが、そうして見るとキャリアの唯一無二感がすごすぎるなと。似た方が誰も思いつかないんですよね。
自分でも思ってるんですよ。生き馬の目を抜く業界で、普通はひとたび席を離れると、次に戻ろうと思ってもその席に誰かが座ってるみたいなことがある。だからしがみついて頑張るんだ、って世界だと思うんですけど、誰も僕のところに座ろうとしない(笑)。
──このたびインタビューを任せていただくにあたって、改めて西川貴教という人物を考えてみたところ「あれ!?」みたいな。「例えるべきものがこの方にはない」と思ったんですよね。
僕んとこだけ科と目が一緒みたいな(笑)。それで言うと、母親の顔を見る、面倒を見るって意味で考えれば、別に音楽フェスという流れにならなくてもよかったんですよね。なんだけど、どうしてこのフェスっていう形を選んだのかというと、ライジングサンにしろ、WILD BUNCHにしろ、当時じわりじわりといわゆる地方のイベンターさんがフェスシーンを作って、新しいアーティストをピックアップしていくんだって要素が大いにあったと思うんですよ。ショーケースで見せて、お客様に新しいバンドを発見する機会をつくるっていう。その時まだ自分がフェスをやってなかった頃からすると、いつまで経ってもフェスに呼ばれないわけですよ。まあまあ頑張ってるし、アルバムも出てるし、ツアーもやってるし、この間シングルも出したのに、「全然呼ばれないなぁ」と思ってて。
──はいはい(笑)。
今なら分かりますよ(笑)。でもその頃は気付いてないから。やっぱり主催者からすると、集客の事を考えればそのエリアとか、シーンとか、カテゴリーとか、ジャンルとか、そういう括りで集めた方がいいし。あと通常のライブを見に行く1枚のチケットよりも圧倒的に高いって考えたら、ご贔屓のバンドやアーティスト以外のお気に入りを見つけられたら安い、これで4組気に入ったバンドが見れるんだったらこの価格も高くない、ってなるけど、「私これしか好きじゃないんだけどなぁ……そのいちアーティストの40分か50分だけでこの値段、高くない?」ってなっちゃう。ある程度お客様の満足度を上げていくっていう方法を考えると、さっき言ったみたいに、科目が独立してる人たちは混ざらないんですよ。僕には誰も混ざらないので、誰も呼んでくれないです(笑)。
──たしかにキャスティングの面からすると難しいですよね(笑)。
フェスっていうものに辿り着いたのは、自分が呼ばれないんだったら、自分が主催しようっていう発想だったと思う。無いなら作るしかないっていう発想で、気がついたら今まで誰も見たことがない仕上がりになってたっていう(笑)。誰かを辿っていって、「これいいな、この形はロールモデルとしてありだな」とフォローしていって、どんどんステップアップしていく方法も全然ありだと思う。だけど僕の場合、本当にロールモデルが無かったので、行き当たりばったりであれやってこれやって、大きく滑って転んでとかしている間に流れ流されて、転けた先で「あ!こんなものが落ちてた!」みたいな。気がついたら誰もいない。ほぼ遭難だから(笑)。
──そりゃあ。だってどこのフェスにもミゲルくん出たことないんだから(笑)。
でもそういったいわゆるメインストリームのフェスカルチャーへの憧れっていうのも僕はちゃんとあると思う。それは正直に認めてて。だからこそ、いろんなフェス勉強したし、関わった方からリサーチして、勉強を欠かさないようにしてるし。それが直接的にきちんとイベントに反映されてるかどうかは別としても、そういったものを踏まえて色んなことをやっていくことが僕はたまたま向いてた。自分なりにいろんなことを遠回りした分だけ、ひとり経験値があったから。本当になるべくしてなってると思うし、良くも悪くもですけど、絶対にここは目指さない方がいいと思います(笑)。
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