無数の“YAZAWA”タオルが舞った夜
矢沢永吉が国立競技場の新たな幕開けを彩った2日間──MISIAとB’zと世代を超えた共演でデビュー50周年祝う
2022.08.31 17:30
矢沢永吉(Photo:HIRO KIMURA)
2022.08.31 17:30
2日間で11万人と一体感を生み出した矢沢のロック
そんな初日の様子がSNSやネット・ニュースで伝えられたからなのか、2日目となる8月28日の国立競技場は開演前から、スタンド席で観客によるウェーブが始まる盛り上がりだった。
「2日目の国立競技場です。昨日はめっちゃ暑かった。ステージは40度くらいあったんじゃないかな。今日は10度下がった。最高じゃないか!」
観客ばかりじゃない。矢沢もゴキゲンだ。序盤からロック・ナンバーをたたみかけるようにシャウトすると、「気分いいね、この風。いい風吹いてるね。暑い暑いと言っていた次の日は、こんなものをもらえるだからうれしいです!」と破顔一笑。
前日同様、2時間半にわたって、50年のキャリアから選んだアンコール含め全21曲を熱唱。ロック・ナンバーに加え、バラードもふんだんにおりまぜながら前日をさらに上回る盛り上がりを観客と作っていった。アコースティック・ギターで弾き語りしたソロ・デビュー・シングル「I LOVE YOU, OK」とアリーナの真ん中のセンター・ステージでスポットライトを浴びながら歌い上げた「YES MY LOVE」――矢沢永吉が書くバラードの魅力を存分に味わわせたその2曲はハイライトの1つだったと言ってもいい。
「50年も歌えると思ってなかった。音楽以外にもできることはあるんじゃないかとトライしたけど、ダメだった。でも、ダメでよかった。毎日、いろいろあるけど、ほんのちょっとでもいいことがあればがんばっていける。みんな、そんな感じでやっていきましょう!」
前日と同じように前向きな言葉を観客に投げかけると、後半戦はお馴染みのマイクターンを見せつけながらロック・ナンバーをたたみかけ、盛り上げていく。エレクトリック・ピアノのリフが印象的なロック・ナンバー「黒く塗りつぶせ」では、「昨日、MISIAが駆けつけてくれました。2日目、誰もいないのはまずいんじゃないか。すごいゲストが駆けつけてくれました!」と矢沢に紹介され、サプライズ・ゲストのB’zのギタリスト、松本孝弘とボーカリスト、稲葉浩志が登場。6万人をどよめかせながら、松本が奏でるリフに合わせ、矢沢と稲葉が歌を掛けあいながら、「永ちゃん!」と稲葉が声を上げ、歌を繋げていく。
「たまんないね。もうね、俺、幸せ。もう1曲やろう!」と矢沢が声を上げ、松本と稲葉と演奏したのがキャロルの名曲「ファンキー・モンキー・ベイビー」。松本が奏でる同曲のキャッチーなリフに思わず感激。そして、肩を組んで歌う矢沢と稲葉の姿を見ながら、矢沢からB’zの2人に日本のロックにおける大事な何かが手渡されたような気がした。
「50周年おめでとうございます!」(稲葉)
「朝までずっとやろうぜ!」(矢沢)
そんな世代を超えたロックの交歓が生んだ熱狂の中、ライブは一気に大団円に。前日同様、「止まらないHa~Ha」で終わるのかと思いきや、最後を締めくくったのはロックンロールに人生を捧げ、旅を続ける悲喜こもごもを歌った「トラベリン・バス」。「昨日やらなかった。永ちゃん、やってよ」というファンのリクエストに応え、「止まらないHa~Ha」と並ぶ人気曲をセットリストに加えた演出が心憎い。
「カモン!ヘイ!ヘイ!」という矢沢の掛け声に応え、観客がタオルを投げるコール&レスポンスがダメ押しで大きな一体感を作り上げた。そして、矢沢がステージを降りた後もバンドが演奏するアウトロに合わせ、50周年を祝福するように観客のタオル投げはいつまでも続いたのだった。