コンセプチュアル・アートの騎手、待望の個展
時間とは?価値とは?「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」で見たアーティストのユーモアと鋭い眼差し
2022.08.06 13:00
2022.08.06 13:00
コロナ禍により延期されていた展覧会「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」が、東京オペラシティアートギャラリーで7月16日から9月19日まで開催されている。

1976年イギリス生まれのライアン・ガンダーは、アイデアやコンセプトを軸に作品を組み立てる、コンセプチュアル・アートを牽引する存在として、世界のアートシーンで注目を集めるアーティストだ。そして今回、日本では5年ぶり、東京では初めてとなる大規模個展の開催に至った。

ガンダーの作品は、日常生活で気に留めることすら忘れているあたりまえの物事への着目を起点に、オブジェや絵画、映像、写真、インスタレーションなど、多岐にわたる方法によって表現されている。そこには知的な好奇心とユーモアが満ちあふれ、クスッと笑える仕掛けが満載だ。
さらに、作品の背後でガンダーが行ってきた「見る」ということについての考察や、日常生活で経験したことの鋭い分析が、私たち見る者の好奇心を刺激する。そもそも「見ることとは何か?」「今という時代の時間とは、お金や価値とは、教育とは……?」そんな普段は考えることがない問いすらも、作品を見ているうちにいつの間にか考えさせられ、私たちの想像力に火を灯す。
今回の個展は、ガンダー自身が会場設営に参加し、過去の作品と新作を織り交ぜながら、空間全体がひとつの作品となるように作られている。展示されている作品は全部で91点。その一部を、ガンダー本人の解説を交えながらご紹介しよう。
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