2026.02.21 17:00
2026.02.21 17:00
下北沢に実在するこはぜ珈琲の閉店・移転までの2ヵ月をそこに訪れる客と店員の会話劇を軸に描いた映画『結局珈琲』。
仕事の休憩時間に訪れる青木(藤原さくら)と絶妙な距離感を保つ常連客、そして店員。移転に向かう時の中で青木に起きる変化とは。一人になりたい、でも独りになりたいわけじゃない、そんな誰もが持つ感覚をユーモラスに描き出したこの作品を藤原はどう捉えたのだろうか。
後半はニューアルバム『uku』に至る経緯についてのインタビュー。アーティスト活動10周年の今、藤原さくらの人生のトーンの変化を探る。

私が主役じゃなくていいですって何回か言いました
──『結局珈琲』、めちゃくちゃ面白かったです。
私も試写で初めて見た時、爆笑しました。
──企画趣旨に賛同して出演されたそうですね。
こはぜ珈琲の店長さんが、もともとある店舗から移転するのをきっかけに何か形に残しておきたいっていう、個人的な気持ちから始まった企画のようで。
ポスターのキャッチコピーにあるように、「一人になりたくて、なりたくないわたしたち。」っていう、人間のうまく表現できない感情を描いた作品でもあるのですが、私自身も分かるなと思うことがたくさんありました。家で一人で作業するのがやる気出ない時、カフェに行ったりすると周りに働いてる人たちもたくさんいて、「この人たちも頑張ってるから頑張ろう」って気持ちになって仕事が捗ったりとかもあるじゃないですか。
人生って始まりがあれば終わりがくるように、こはぜ珈琲の移転もそうですし、この映画の中でも自分がこっそり会話を聞いていた人がいなくなって、もう会話を聞けない、そういうことって生きてるとどうしてもあることというか。それを湿っぽく描くんじゃなくて、すごくコミカルにファニーに描いている作品なので、終わった後にちょっと下北の街を歩きたくなるような映画だなと思いました。
──藤原さん演じる青木はいつも一人でこはぜ珈琲に訪れますね。
青木の立ち位置はこの映画を観てる“あなた”と近い気がしていて。なので、私が主役じゃなくていいですって何回か言いましたもんね、喋ってなさすぎて(笑)。

──誰かの視点が必要ってことなんでしょうね。
そうですね。脚本をいただいた時に、これはきっと青木のパーソナルを描くというより「こういうことってあるよね」っていう事象を描いているんだなと思って。
一人だと寂しいけど、でも友達に飲みに行こうよって誘われたらそんな気分ではない…みたいな、絶妙な心情を体現しているキャラクターだと思いますね。でも撮影中はそんな難しいことを考えずにただずっと笑いながら聞いてたっていう感じなので、すごく気楽に臨めました。
──お店に居合わせただけの距離感や表情がリアルでした。
友達になりたいわけではないし、別に話したいわけでもないんだけど、今まであったのになくなっちゃう独特の諸行無常がありますよね。でもそれをさみしいさみしいって感じに描いていないところが好きですね。

──リアルに存在する場所なんだけど、それこそポッドキャストを聞いている感覚に近かったです。
私もカフェや喫茶店行った時に隣の人が興味深い話をしてたりとかすると聞いちゃいますもん。だからこの脚本も「それならやりやすいかも」いう話を最初にさせてもらって。それこそ共演している日高七海ちゃんと一緒に私自身がポッドキャストをやってて、そのポッドキャストのコンセプトが“ファミレスで女の子たちがべらべら喋ってて、それを聞いてたらじわじわ笑えてきた”なので、結構今作とやっていることが近くて。
映画の中でも「武道と葡萄ってどいうイントネーション?」っていうシーンがあるけど、私たちもポッドキャストで「藤井風ってどういうイントネーション?」とか話してたことがあって。そういうのって横で聞いてるとちょっと笑えるじゃないですか。「何言ってんだ、この人たち」みたいな。身近なコンセプトではありましたね。
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