2026.02.10 18:00
2026.02.10 18:00
2026年のうちに、“まだ破ることのできていない”殻を破りたい
──古川さんの近年を振り返ると、とくに2024年はすごかったですよね。『みなに幸あれ』に『雨降って、ジ・エンド。』といった主演作、ヒロインを務めた『言えない秘密』や『Cloud クラウド』など公開が相次ぎました。まさに古川さんの年だったなと。こうした流れがあるから、“映画俳優”というイメージも強くて。古川さんにとってステージに立つことは、どういう意味を持つのでしょうか?
バレエをやっていたこともあり、舞台に立つたびに「ここが自分の原点だ」と感じます。稽古期間も本番も、私にとっては“給水の時間”になっています。

──給水の時間。
はい。舞台に関係するすべてのものが、私は好きなんです。たとえば脚本に関していうと、映像の脚本には映像の脚本の魅力がありますが、舞台もまた、舞台の脚本ならではの魅力があります。今回の『ピーターとアリス』のように最初はどうにもとっつきにくいものも、座組のみんなで解きほぐしていくうちに、物語世界の理解を深めていける悦びがあります。
──それは今日のお話から十分に伝わってきました。
それから、2024年に『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド〜虚空に触れて〜』というイギリスの翻訳劇に取り組んだあと、実際にイギリスに行く機会があって、現地で上演されている作品をいくつか観たのですが、そこで感じたことがあります。それは、劇場の持っているパワーです。
──劇場という“場”が持つ力ですか。
そうです。『Touching the Void』の初演が行われたブリストル・オールド・ヴィックという劇場に足を運んでみたのですが、ここはイギリスでもっとも古い劇場なんです。でも実際に行ってみたら、外観がすごく新しかった。「え……?」と思いました。
──聞いていた話と違うと。
けれども中に入ってみたら、さらに驚きました。新しい劇場の中に、もともとの劇場があったんです。
──もともとの劇場を囲むかたちで、新しい劇場が建っているんですね。
ちゃんと残されているんです。この場の空気に触れることで、これまで舞台芸術に携わってきた人々との繋がりを感じました。いまでは劇場って、芸術に触れる目的で向かう場所ですが、昔はもっとニュースペーパー的な役割を担っていたりもしたそうです。そして、そこではいろんな人々が交流をしていた。それを肌で感じたんです。
──素敵な体験ですね。
劇場とは、目の前のお芝居の物語を追うだけの場所ではないのかもしれない。そう思いました。人々が大切に築き上げてきた空間の一部になることができる。いまの私にとって舞台に立つことの魅力は、これなんです。

──はじめて聞くお話で新鮮です。先ほど「2024年は古川琴音イヤーだった」とお伝えしましたが、ご自身ではどう捉えていますか?
2024年は本当にたくさんの経験をさせていただきました。『雨降って、ジ・エンド。』はお芝居をはじめたばかりの頃に撮った作品で、これが数年の時を経て公開されたことも感慨深かったです。初心に返る機会にもなりましたから。それに『Touching the Void』はイギリスのチームとの作品づくりでしたし、出演作とともに海外の映画祭に参加することもできました。またひとつ、視野が広がった年になりました。
──やはり重要な一年だったんですね。
はい。そんな2024年を経て過ごした2025年は、いまの自分に足りないものを知る一年になりました。新しい世界を知れば知るほど、自分の野心というか、夢も大きくなってくる。そしてそのために必要なものが分かってくる。そういう年だったんです。そこに向き合う苦しさはもちろんありますし、果たしてどこまでできるのか、正直なところ不安もあります。いまもずっとぐるぐる考えながら、足踏みしている感じです。
──そして2026年はこの舞台から始まりますね。
まだ情報公開されてないお仕事がたくさんありますし、これから参加していくものもたくさんあります。どれもみなさんに観ていただきたい作品たちです。『ピーターとアリス』をはじめ、すべてが自分にとって大きなチャレンジになりそうです。
──またひとつ、大きなステップを上がることになりそうですね。すごく楽しみです。
ありがとうございます。ここからまた一歩ずつ着実に進んでいけば、いい状態で30歳を迎えられ、新しいスタートを切ることができそうです。だから気を抜かないようにしたいなと。この仕事を続ける中で、“まだ破ることのできていない殻”があるのを感じています。やれることをやって、2026年のうちに破ってみせたいです。

スタイリスト:山本杏那



