ドラマ『人間標本』での同世代共演で与え合った刺激とは
俳優業には狂気が必要?荒木飛羽×山中柔太朗×黒崎煌代×松本怜生×秋谷郁甫の尽きない芝居談義
2026.02.02 18:00
2026.02.02 18:00
同世代の俳優はライバルか、それとも仲間か
──芸術家の狂気を感じる作品でしたが、俳優もまた表現者。芝居をやっていて、特殊だなと思う瞬間とか狂気がないとやってられないなと感じる瞬間はありますか。
黒崎 初めて会った人に「お母さん」って言うときですね。向こうからしたら、誰だよじゃないですか。そんな人と本当の親子みたいに接しているときとか、狂ってるなって思います。
秋谷 そもそも自分じゃない誰かになること自体、特殊だなって思いますね。もちろんどの仕事も人と向き合うし自分と向き合うところは変わらないけど、俳優業が特殊なのは、存在しない人と向き合う時間がとてつもなく長いこと。だからこそ、役に対する情熱や、表現に対する意欲が必要で。そういう情熱も一種の狂気だと思うし、そこが自分にはまだ足りないなって日々役と向き合いながら感じています。

松本 僕はシンプルに感情が忙しいところが特殊だなって思います。1日の間に、こんなに怒ったり泣いたりする職業ってなかなかない気がして。特にドラマの場合、大事なシーンをカメラ位置を変えて何回も撮る。人間って同じことを何回もやるのは本能的に得意ではないと思うんですよ。どうしたって飽きたり慣れたりするから。それをずっと初めての感覚でやるのは正直狂気というか。嘘と言えば嘘だし、でもそれをリアルに見せるために自分を騙さないといけない。すごい感情や脳みそが忙しい仕事だなって思います。
荒木 以前、撮影初日のワンシーン目で、自分のせいで親友が亡くなって泣くというシーンを撮らなきゃいけないことがあって。と言っても、その親友役の人とまだお芝居をしたこともなければ、会ったこともなかったんですよ。だから、画像を調べるんですけど、出てくるのは宣材写真じゃないですか(笑)。その宣材を見ながら、この人が親友だったんだって思いながら初日のワンシーンを撮ったときは、さすがに変な気持ちになりました(笑)。
山中 僕が特殊だなと思うのは、俳優ってお芝居が上手な人が使われるかと言われたら必ずしもそういうわけではなくて。すごい、すごくないの判定が人それぞれ。その基準を決めるのがいちばん難しい仕事だと思います。俳優がどれだけ情熱を持って努力しても、視聴者のみなさんからの評価が一致しないこともあるだろうし、努力が正当に評価されないこともあると思う。報われない瞬間がたくさんある中で、それでも情熱を絶やさずに努力し続ける姿は、狂気と言えば狂気かもしれないと思います。

──みなさんの演じた5人の若き芸術家はそれぞれの強みを持っていました。みなさんも芝居をやっていく中で、他の人にはない自分だけの個性がほしいと思ったことはありますか。
荒木 あったらもちろんほしいですけど。でもどうやって得られるんだろうっていう話ですよね。
秋谷 自分でなかなかわからないもんね。
荒木 (黒崎を見て)あるタイプじゃん?
黒崎 え。
山中 確かに。
黒崎 身も蓋もない言い方ですけど、そこは星の下だと思いますね。ある人はあるし、ない人はない。でも、別に個性があるからいいというわけでもないし、ないからダメというわけでもない。その中で選ばれ続けて生き残っていかなきゃいけない俳優という生き方は、さっきの話につながりますけど、狂気じみているなと思います。
山中 自分だけの個性はあったらもちろんほしいです。けど、たぶんそれって自分ではわからないものなんだろうなって。だんだん作品を重ねていく中で、他人からの評価で気づかされるものなのかなと思います。
荒木 この人が出ているから見たい、という存在になれたらうれしいですね。
松本 そうだね。
荒木 推しという意味じゃなくて。この人が出てる作品は面白いというふうに言われるようになったら最高なんだろうなと。
松本 僕の場合、声を個性と言ってもらえることはあります。ただ、ずっと自分の中ではコンプレックスでした。特徴的な声だから、声で自分だとバレるのが嫌だったんです。だから、いろんな声の出し方を研究した時期もあって。あるタイミングでこの個性をいかにポジティブに変えられるかだなって考え方を切り替えるようになったら、徐々に評価してくださる方も増えてきたけど、そこの戦いは今もなお続くって感じです。

──松本さんのおっしゃる通り、この仕事をしていると、自分がコンプレックスだと思っていた部分が個性になることってありませんか。
秋谷 それこそ煌代の声は?
黒崎 でも、届かないときはある。「なんて?」って聞き返されたときはダメだなって思う。特に今舞台をやってるんですけど、舞台は絶対こもっちゃダメなんで。でも逆に、静かな映画に出るときはこの声が武器になるから、本当にいいところもあれば悪いところもあってという感じです。
秋谷 そこで言うと、この中でいちばん個性がないのは自分だと思うんです。それこそ喉から手が出るほど個性や武器をほしがった時期もありました。でも最近は、個性がないことが自分だと思うようになったというか。僕は作品を観たり現場で一緒になったりしたときに、この人のこういう表現いいなと思ったものは盗んで引き出しにしまっておくタイプで。でもきっとそれを自分が実際にやってみたら、その人とはまったく違うものになると思うんです。そうやって真似事でやっていたものが、いつか自分の個性になると信じてやっています。
──劇中では、色彩の魔術師と呼ばれる世界的画家・一之瀬留美(宮沢りえ)の後継者の座をめぐって才能を競うことになります。みなさんにとって同世代の同業者はライバルですか。それとも仲間ですか。
荒木 あんまり気にしてないかも。(他の4人に)なくないですか、別に。
松本 このメンバーに対してはないけど、オーディションで毎回かぶる子はかぶるなって思う。
山中 確かに。やっぱり役に合った子が選ばれるから、大体同じような顔ぶれになるよね。ただ、毎回気にしてたらキリがないから僕も気にしてないです。

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黒崎 僕は同じ世代に強い人がいっぱいいたほうが全体が盛り上がるなって考えている人間なので、ライバルがいることはうれしいです。きっとそうやって競い合って盛り上がっていくことで、最終的に自分にも返ってくるものがあると思うので。
松本 考え方が戦闘民族すぎない?
黒崎 オーディションのときも「絶対俺受かる」って思ってる。
山中 自信があるんだ?
黒崎 自信というより、それがまた別の自分の守り方なんだと思う。もし受からなくても、自分がいちばんだと思っていたら傷つかないから。
松本 俺を選ばないなんてセンスないな、みたいな?
黒崎 それくらいの気持ちがないと、我々はいっぱいオーディションを受けるので、やってられないと思う。

──じゃあ、そんなみなさんに聞きます。この5人の中で、これに関しては自分はナンバーワンだと思えるものを教えてください。
松本 はい! 細さです! あ、いや、わかんない。柔太朗も細いな(笑)。
山中 大丈夫。最近、頑張って食べてるから、怜生のほうが軽いと思う。
秋谷 僕はベンチプレスの記録ですね。
黒崎 絶対そうだわ(笑)。
秋谷 つい最近95kgまでいきました。もうちょっとで100kgなので、このまま突き放していきたい。
黒崎 俺は声の低さナンバーワンです。
秋谷 間違いないね。
荒木 僕は、うまい人と比べたら劣るんですけど、なんでもちょっとできるみたいな。とりあえずいろんなことがちょっとだけできるみたいな部分は強みかもしれない。

黒崎 器用貧乏ナンバーワン?
荒木 かもしれない。スタートダッシュだけ早いんですよ、僕。で、そのうち追いつかれる(笑)。初速ナンバーワンです。
山中 僕はサッカーです。
松本 そんなこと言ったら、俺も野球ナンバーワンだわ(笑)。
山中 みんなやったことない?(と、確認して)じゃあ勝ちました(笑)。
荒木 ポジションはどこだったの?
山中 ボランチ。トラップが得意でした。だから、どんなキックが来ても止めます!

荒木飛羽:反田 やよい/関野 聡美(Creative GUILD)
山中柔太朗:礒野亜加梨(studio mamu)/平松彩希
黒崎煌代:坂本志穂/能城匠
松本怜生:望月光(LEIMAY)/松田 泰典
秋谷郁甫:三宅茜/津野真吾(impiger)



