映画『WIND BREAKER』出演の注目株が思う「強さ」とは
今は「一人分の力」じゃ満足できない。役者・濱尾ノリタカが“本気”を誓う理由
2025.12.16 18:00
2025.12.16 18:00
水泳部の監督に謝りに行って、やっと負い目がなくなった
──濱尾さんといえば、高校時代にジュニアオリンピックカップに出場、リレーで全国4位になるなど競泳に真剣に取り組んでいたことでも知られています。ただ、ご本人は大学時代に挫折を覚えたという話もしばしばされていますよね。夢見た場所で1回挫折した経験が、今の自分にどういう影響を与えているか聞いてもいいですか。
僕は挫折して、そのまま逃げてる人間なんです。そういう弱い自分がいることをわかっているというのは大きいですね。逃げたらどれだけ惨めな気持ちになるか、嫌になるくらいわかっている。だったら頑張るほうが楽だなという気持ちで今はやっています。

──逃げたという負い目があるんですね。
あります。実際逃げましたし。競泳で1番になりたいとずっと思っていて。でも、なれないと気づいた瞬間、僕は一気にダメになった。頭がダメになると、心も体も追いつかなくなるんです。それがはっきりとわかりました。
──心と体が追いつかないというのは、たとえばプールに入りたくないみたいな、競技にまっすぐ向き合えなくなることですか。
練習の「あと1本」が頑張れなくなるんです。あとは、「これをやって意味があるのか?」といったふうに、いろんなことに不要な意味づけをするようになってしまう。そういう世界ではないので、本気で競技をやるというのは。本気でやるということがどういうことなのかは、挫折をしてよりわかりました。だから今も本気でやることにだけはシビアです。
──今まさしく俳優の世界で本気でやってらっしゃるじゃないですか。そのときに、あと1本が頑張れない瞬間ってありますか。
ないです。

──それはもう覚悟を決めたからですか? 競泳と同じように、お芝居の世界にも上には上がいて、才能のある人だらけ。自分にはできないと思う瞬間だってあると思うんです。
きっとそう思ったら辞めていると思います。自分にはできると、そこだけは信じないと。競泳をやっているとき、僕はそこが信じられなかったらダメだった。もう二度と同じ失敗はしたくなくて、今は無理やりにでも信じています。自分の可能性を信じるって、本当に土台の部分。そこが崩れてしまったら終わりです。だから、なんとか崩れないように騙し騙しやっています。
あと何より、まだ自分にはできないと言えるレベルにも達していないと思っているので。この道において、自分はまだまだあまちゃん。弱音を言ってる場合じゃない。作品の真ん中をとって初めて一歩目が踏み出せたと言えるんだと思っています。
──強い人はどういう人かをさっき聞きましたが、その感じでダサい人ってどういう人のことだと思いますか。
本気じゃない人。スカしているのはダサいなと思います。僕は言い訳が好きじゃないんです。自分でもたまにしそうになるので、そのときのために普段からこうして言い訳はダメだって口にするようにしています。自分で言っておいたらやらないじゃないですか。

──今、お芝居以外で何をやってるときが楽しいですか。
水泳です。
──今もプライベートで続けているんですよね。競泳から逃げたという負い目とどう折り合いをつけているんだろうって気になりました。
実際、こういうインタビューのために趣味は水泳って言っていますが 、泳ぐのなんて本当に数ヵ月に1回くらい。プールを契約してるのに全然行かなくて、ただお金を払ってるだけみたいな、水泳の試合を見るのが嫌な時期もありました。
でも今はそういう領域じゃなくなりました。たぶんそれは、自分には役者があると思えるようになったから。今の僕にとって、泳ぐことはマインドフルネスです。泳いでる間は無になれるし、逆にとても考えていて。泳いでる間って頭も体も予想外のことがいっぱい起きるんです。それが最高です。
──競技として泳いでいた時期と、水に入ってるときの気持ちも変わりましたか。
全然違うかもしれない。話しながら思い出したんですけど、ちょうどこの作品に入る前くらいに監督に水泳部を途中で辞めたことを謝りに行ったんです。僕はずっと辞めたことを負い目に感じていて。でも、監督は大して気にしていなかったみたいで、とても笑っていました。
自分だけが勝手に後ろめたさを引きずって、それはそれでとても恥ずかしいなと思いましたけど(笑)。謝って示しがつけられたから、リスタートできたのかな。泳ぎに対する負い目がなくなりました。
ダサいことの答えがもう一つ見つかりました。負い目があることです。これからの人生、何に対しても負い目なく気持ち良く生きていたいですね。

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