2025.11.26 18:00
2025.11.26 18:00
『凪のお暇』では、主人公の隣の部屋に住む小学生の女の子。『テセウスの船』では、タイムスリップした先で主人公が出会う幼き日の姉。その後も『流浪の月』では主人公の幼少期を、大河ドラマ『どうする家康』では覚醒した茶々の魔性を艶やかに演じるなど、まだ10代ながらその才能は破格。
現在は連続ドラマ『ぼくたちん家』に出演中。鮮烈なインパクトを残し続ける白鳥玉季がまた最高地点を更新した。それが、11月21日より公開中の映画『金髪』だ。
演じたのは、校則への抗議の意思を込めて金髪にした中学生・板緑。スクリーンでも堂々たる佇まいを放つ白鳥玉季の素顔は、猫が大好きな、大人と子どもの間で揺れる15歳だった。

板緑は誰かのことを責めたいわけじゃない
──今回、白鳥さんが演じた板緑は、非常に弁の立つ女の子でした。
とにかく今回は台詞が多くて、台本を開くと台詞がびっしり並んでるんです。今回取材を受けさせていただくにあたって、久しぶりに台本を開いたんですけど、「よくこれだけの量を覚えてたな」って自分でもびっくりしました。
──しかもそれを立て板に水のように喋らないといけません。
立て板に……?
──あ、よどみなくスラスラと話すという意味です。
初めて知りました(笑)。
──演じるにあたって板緑の台詞回しのどんなところに気をつけましたか。
板緑は、単純に言えば伝わることをいろんな難しい言い方をして回りくどく伝えるタイプ。一つのことを伝えるのに、十も二十も言う子なので、なるべく何を言ってるのか聞き取りやすいように意識はしました。でも、初号を観たら全然できていなかったなって反省することばかりで……。
──全然そんなことなかったですよ。そんな板緑の怒濤の喋りを、岩田剛典さん演じる市川が聞き流しているというか、あしらっている感じがすごく面白かったです。
いいですよね。私がいっぱい喋るんですけど、市川は全然反応せずに流すじゃないですか。すごい気持ち良さそうだなって。私も次はスルーする側に回りたいなと思いました。
──白鳥さんは板緑みたいに口が回るタイプですか。
全然そんなことないです。頭がいいほうではないので、難しい言葉を覚えるとすぐに使いたくなるんですけど、意味はほぼ間違っていることのほうが多いです。
──ちなみに最近覚えた難しい言葉は?
今おっしゃった「立て板に水」です。
──じゃあ、今後の取材で「立て板に水」っておっしゃっていたら真似したなと思っておきます(笑)。
はい。どこかで使わせていただきます。
──ということは、あまり白鳥さん自身は自分の気持ちを言葉にするのが得意ではない?
そうですね。あまり得意なほうではなくて。もっと話せるようになりたいんですけど。

──現場で監督に自分の考えていることを伝えないといけないときってあるじゃないですか。どうしてるんですか。
私、ジェスチャーが激しいんです。なので、今のところ身振り手振りでなんとかやっています。
──台本を読むときはどうですか。役の心情を読み取るにあたっても、言語化能力は重要になってきそうですが。
私は、文字を追っているだけではあんまり頭に入ってこないんです。なので、ト書きとかも1回口に出して読んでみると、わからなかった言葉もスッと理解できたりして。そういう台本の読み方をしています。
──お芝居のアプローチとしては理論派ですか。それとも直感派ですか。
直感だと思います。もちろん1回読んでそれでいいやということではなくて、何度も何度も台本は読むんですけど、結局最初に感じた直感が基盤になっていることが多くて。そう考えると、直感派なのかなって。

──今回の場合はどうでしょう。板緑は金髪デモの発起人ですが、彼女が何に対して怒りを感じているのか、彼女が何を抱えているのかという背景は映画では描かれていません。その描かれていない部分をどう埋めていきましたか。
たぶん板緑は怒っているわけじゃないと思います。誰かのことを悪いと責めたいわけでもない。ただ単に間違っていると思っていることに対して、これはおかしいよと教えてあげているだけ。たとえば、数学の問題があるとして、他の人の解き方が間違えていたら、違うよって教えてあげるじゃないですか。たぶん彼女の中ではそれとやっていることは変わらないんじゃないかなと思います。
──世間はセンセーショナルに捉えているけど、彼女の中では特別なことをしている意識はないと。
自分が間違っていると思っているから、間違っていると伝えているだけで。たぶんそんなに大きなことをしているつもりはない気がします。
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