2025.11.17 18:00
「Do it!YAZAWA 2025」DAY2公演より/Photo by HIRO KIMURA
2025.11.17 18:00
矢沢永吉、7年ぶりの東京ドーム単独公演「Do It!YAZAWA 2025」が去る11月8日、9日に開催された。 本公演をもって「東京ドーム単独公演・最年長記録」がポール・マッカートニー(2018年10月の来日公演、当時76歳)と並んだとのこと。もちろん、国内アーティストでは矢沢永吉ただ1人だ。また一つ新たな偉大にして前人未到なる伝説と記録を樹立した本公演、ここでは2日目の模様をお届けする。(※写真は1日目のものも含まれます)
の、前に、まずは開演時刻少し前の東京ドーム周辺の様子からお伝えしたい。そこには真っ白のセットアップに同色のパナマ帽という矢沢のアイコニックな装いを筆頭に、特注だと思われる矢沢へのメッセージが背中に入ったスカジャン、または革ジャン・革パン・リーゼントなどなど、思い思いの愛の形でバッチリキメている永ちゃんファンがびっしりと。入場前から圧巻であったその光景には早くもこちらのロックンロール魂が燃え上がってしまいそう。

昂る気持ちを抑えつつ堪えつつのドーム入場。そこにはさらなる光景が広がっていた。先述のイカした永ちゃんファンたちの全身全霊の永ちゃんコールが場内に轟きまくっていたのだ。そこには一種のルールめいたものや誰が1番声がでかいかと互いを牽制し合う様子もなく、それぞれのグルーヴで矢沢への愛を表現している。かと思えば誰かがどこかで起こしたであろうウェーブが伝播し、美しく会場の末端まで繋がっていくだなんて一幕も見られ、永ちゃんファンのグルーヴは時にとっ散らかりつつ、時に一体となって、矢沢が立つ今宵のステージ、その開演までの時間を盛り上げに盛り上げているではないか。なんと自由で奔放な愛の形、そして最高最強のオープニングアクトなのだろう。これにはもう感動したという他にない思いであり、開演前にも関わらず一度こちらのロックンロール魂は見事に燃えきってしまった(笑)。
開演時間を少し過ぎた頃、場内が暗転。BGMとして流れているご機嫌なロックンロールのボリュームが上がり、そちらに合わせ入場時にファン一人一人に配られたザイロバンドによってドーム内が激しく明滅。加えてステージにセットされていた放射状のレーザーが激しく場内を照らし出し、そこはさながら音と光のショーであった。ダイナミックに噴き上がる火柱でオープニングがピークを迎えると、割れんばかりの大歓声。こちらのロックンロール魂は見事に再点火である。
袖から登場したロングコートにサングラスでキメた矢沢がステージ中央、自身のアイコンである真っ白のマイクスタンドの前に立ち、華麗にコートとサングラスをオフ。その中は光沢感のある生地を使用した細身のネイビーのセットアップだ。「レイニー・ウェイ」からライブはスタート。維持し続けている抜群のスタイルから繰り出されるしなやかなステージアクション。後方で頭上高くに左腕を振り上げながらスネアをバシバシと鳴らすジェフ・ダグモア(Dr)のビートが一曲目にして早くもドームを激震させる中、矢沢もキレキレのマイクターンを披露。真っ白のマイクから伸びる真っ白なケーブルの軌道までもが完璧にキマッている。笑ってしまうほどのカッコ良さだ。

「ようこそ!いらっしゃい!」と手短な開幕宣言を済ませるや否や、図太いリズムで繰り出される「Rambling Rose」。“Rambling”とは日本語で“意味もなく歩き回る”などといった意味を持つ単語であるが、こちらは言わば気まぐれな薔薇のような魔性の女との情事だろうか、むせかえるエロティシズムがドームを一瞬で陶酔させてしまう。ヘヴィなリズムはさらなる重みを増し、前曲でジャケットを脱いだ矢沢がさらなる色気を纏って歌う「ゴールドラッシュ」の後、バックスクリーンにデビュー当時の矢沢の姿が映し出された「世話がやけるぜ」でプリミティブなロックンロールの旨みを存分に聴かせてくれる。

楽屋のない会場でのライブで、やむなく隣の駄菓子屋の六畳一間を着替え部屋として借りたなんていうソロデビュー当時のエピソードも含め「青春ど真ん中だった」と振り返りつつ、こうして50周年を迎えたというその感慨をMCで語った後は、ダンサブルな16ビートが印象的な「さめた肌」へ。こちらと前曲は今年3月惜しくもこの世を去った木原俊雄の作詞によるもの。矢沢とは木原が学生時代からの仲であり、キャロルの前に矢沢が組んでいたバンド「YAMATO(ヤマト)」のメンバーでもあり、その後矢沢のバックバンドメンバーとして合流。作曲家としても吉川晃司「モニカ」やアン・ルイス「六本木心中」「あゝ無情」などで知られる人物である。そんな盟友に捧げる形での選曲なのだろうか。矢沢はこの選曲の意図についてライブ中に語ることはしなかったが、友への深い情に満ちたなんとも粋な采配であった。
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