2025.11.10 18:00
2025.11.10 18:00
観てる人の昔の恋を絶対否定したくなかった
──3回目となると、当然eillさんと『ラブトラ』の距離感も変わってきていると思うんですが、今回の「ラストシーン.」を作る上での気持ちはどうでしたか?
やっぱり人気の作品ですし、ご一緒する上で、ちゃんと奇跡的なケミストリーが起こってほしいというのは思ってました。あと、自分的にはちょっと『ラブトラ』を映画っぽくしたかったんです。

──映画っぽく?
より名作感というか、「『ラブ トランジット』は名作だ」みたいな感じを、主題歌で残したかったんです。だから、ストリングスを生で録ったりして。前作は結構オルタナの方向に進んで、私のエゴがボーンって出てしまった部分もあったんですけど、今回は視聴者の皆さんが重ねている恋も、出演者の皆さんの恋も、1本の映画みたいに見えるような楽曲にしたいっていう気持ちで作りました。
──確かに、「ラストシーン.」はこれまでの「happy ending」「happy ever after」と比べてもいちばん直球のバラード、堂々たるバラードだなと思うんです。今までは尖った部分を入れることによってeillの曲になるっていうアイデンティティがあったと思うんですけど、今回は本当に作品の方に身を投げてるっていうか。
そうですね。作品に対して楽曲を書くときの気持ちがかなり変わりました。真ん中にセリフが入れられるようにインターの部分を入れたりとか。1、2話ぐらい先にいただいて、観ながら歌詞を書いてたんですけど、1回ちょっと映像の音をオフにして、自分の曲を流して、実際に流れたらどうなるのかイメージしたりして作りました(笑)。
──アーティストとしてのエゴじゃないんですね、この曲を作らせたものが。
そうですね。もともとデモがあったので、あとはそのデモを『ラブトラ』にどう寄せていくか、みたいなイメージでした。
──先ほど原型は18歳で作ったとおっしゃっていましたけど、当時の気持ちは覚えていますか?
覚えています。何をやりたくて作った曲なのか、すごくリアルに話すと、18歳のときの話で。私韓国が好きなんですけど。
──はい。
高校を卒業して、別に留学するわけでもなく、初めて1人で韓国に音楽を作りに行くってなって。3日とかなんですが、でも、私にとってはそれって大きなことだったから、「ごめん、私は韓国に行くから」って言ってお別れをしたんです。
──3日行くだけなのに。
でもそのぐらいの覚悟で韓国に曲作りに行くみたいなのがあったんですよね。それで、そのお別れ話をした帰りに書いたのがこの曲でした。

──その話を聞くと、〈どんなに苦くても/同じ人生歩んで/あなたとまた恋に落ちるでしょう〉っていう歌詞が俄然重みを増してくる感じがする。
その部分は『ラブトラ』を観てリライトした歌詞です(笑)。デモはもっとピュアというか幼稚な歌詞で、結構わがままをずっと言い続けるみたいな歌詞だったんです。そこから書き直したんですけど、『ラブ トランジット』でもみんな一度別れているのって、何か直してほしいところとか改善できなかった点があるわけじゃないですか。それは一種のわがままでもあって、それがお互いにあるからぶつかって、また恋愛するときにそれが大きな壁になる。だから別に間違ってはいないのかなと思って、方向性としてはそのままいこうと思ったんです。
──大人になったというか、俯瞰して見ているなと思うのが、〈あなたとまた恋に落ちるでしょう〉っていうところなんですよね。eillさん、これまでは「もうあなたと一緒になれない」って、2曲連続で言ってたんですよ。
憎み系でしたよね。でも、視聴者さんの声も結構届いてくるので。たとえばパートナーがいる人でも、『ラブトラ』を観て、昔の恋を思い出して泣いたりとかするわけじゃないですか。でもその恋を絶対否定したくないし、もう一回人生を最初からやり直してもこのタイミングでこの人と恋するよねっていうのを肯定する曲でありたかったんです。
──そう、いろいろな人の心をちゃんと掬い上げるような普遍性をもった曲なんですよね。そこがおっしゃっていた名曲ということなのかなと思うんです。
そうですね。今回、シーズン3でご一緒させていただくことが決まる前に、『ラブトラ』チームの皆さんとごはんに行かせていただいたんです。そのときに制作の裏側を伺って、出演者の方々と一緒になって悩んだり泣いたりしながら、本当に熱量を持って番組を作っていらっしゃるのを知ったんです。その熱量って何にも変えられないものだし、そこにちゃんと私もジョインしたいという気持ちがあったんですよね。だから、最初に話したコライトをやるときのスタンスと近いものがあって。それができた曲になったかなと思います。
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