全国ツアーを前に語るソロでの願いと新曲、BiSHへの思いも
自分で自分を愛すと決めたセントチヒロ・チッチの現在地、3年間で育んだCENT“らしさ”とは
2025.10.23 18:00
2025.10.23 18:00
「元BiSH」とつけて何が悪いかわからない
──作詞においても、サウンドによって自分から出てくる言葉が変わってくる部分もあると思います。
歌詞は出てくる時と全く出てこない時がありますね。スルッと出てくる時もあるんです。「書くぞ!」ってなったら机に向かうタイプなので。「よーし!メモしよう」とかできないんですよ。メモはずっとできなくて(笑)。その時に出る新鮮な感情を歌詞に書きたいんですよね。どうしても私は記憶から掘り出したものが新鮮に感じられなくて。歌詞を書く時は、何歳になっても歌える言葉でありたいと思っていて。メモすることってその時感じた体験をメモしたりするんだけど、忘れてたり「何だったっけ?」みたいなことめっちゃあるんですよね。1回メモしてみたんだけど、「何これ?」ってなったから(笑)。
だから、一生懸命それを掘り出すくらいだったら、今新鮮に出たものが一連のものとして歌詞にした方が、今の自分らしさが出ると思うんです。

──話を聞いていても、この3年間は本当にすごく大きかったんだろうなと思います。
そうですね。難しいって思うこともたくさんあったけど、自分が自分を一番愛せるように、それを大事にしていたら、愛してくれる人たちが現れてくれて。そういうふうに何かがつながっていって、今こうしてソロ3年目、ここにいるなという感覚があります。
──まず自分を肯定する、認めてあげることが大切ということですね。
自信はなくても、ちゃんと自分を愛することは大事にしています。
──難しいと思ったことというのは?
「グループ解散しました。何がしたい?」って言われたら、もちろんあるんだけど、全力疾走して自分が人生かけてやってきたグループをやり遂げた後って「何がしたいかな?」って、ちょっと思っちゃった瞬間はあって。でも私は切り替えもすごく早くて。意外とネガティブじゃないんで。「あ、こうしたいから移籍しよう」とか(笑)。
「もう全部環境変えよ!」って思った。今までお世話になってきた方々のことは今でも大好きだけど、レーベルもそうだし、イベンターさんもそうだし、わざわざ自分で環境を変えましたね。
──それができるのは強いですね。そのあたりはなかなか踏み出せない人の方が多いと思います。
変わらないことも正義だし、それも大事にしてるんだけど、変わらなきゃいけないこともある。居心地がいいところにいると、私はきっと変われないなと思ったので。変わらないままは嫌だから、新しいところに飛び込んでサバイブする自分の方が好きだなって。
──そこで保守的じゃない部分が出る。
そうかもしれないですね、確かに(笑)。
──BiSH最後のドーム公演は、傍から見てても濃密だったと思うし、燃え尽き症候群になってもおかしくないと思うんですが。
誰も燃え尽きてはなかったですね。先の未来が楽しみだったんじゃないですか、みんな。やりたいことがある人たちだから。やりたいことがなかったら、解散まで走り抜けることもままならないくらいすごく大変だったと思うし。ちゃんとみんなに希望があって良かったなと思うし、現状みんな楽しんで生きてる姿が見えてるから、私はそれで最高ハッピーです。
でも私は今でも解散に納得したわけじゃないから、それを抱えたまま生きていくからねって感じですね。私は「解散したくないです」ってずっと言い続けて。解散日まで言っていて(笑)。「その気持ちのまま解散する」って言ってました。
──その思いをずっと持ってる、今も。
持ってます。それで「再結成したい」って言われたら、「ほらね」って言うと思う(笑)。だってそれくらいBiSHは超カッコいいって思っていたし、私はバンドが好きだったので長く続けることのカッコよさをいろんなバンドから学ばせてもらったから。BiSHってジャンルとして、BiSHでしかなくて。だからどんな形でもBiSHでいられるって私は自信を持ってたんですよね。だからこそ、長く続けるという選択肢も私の中にあったんだけど、もちろん、いろんな意見がありますから。
心臓があっても足が動かなかったら前に進めないじゃないですか。だから私だけが動いていてもしょうがなくて。そういう受け入れ方はしてるんだけど、解散を受け入れるっていうのは嘘になるから、「受け入れてない」って言わせてくださいって言ったら、「もちろんそれはチッチらしさだからいいよ」ってメンバーもスタッフさんも言ってくれて。
だから今も地続きだって思ってる。テレビとかで「元BiSH」とか言うと、「BiSHにすがってる」とか「まだ『元』つけてんのか」という意見もあるんですよ。でも、何が悪いのか私には分からないし、超愛してやってきたことを掲げてるんだから最高じゃんって思うんです。それがあったから今ここにいるから。

──本当に地続きなんですね。
地続きです。こういう性格だから、ソロになってBiSHの曲を歌うの嫌だなとか、どのタイミングで歌ったらいいかな?とかめっちゃ考えちゃって。好きすぎて。でも意固地になってる自分も1回脱ぎ捨てられたんですよ。「この考え方、だっせーなー!」と思って(笑)。
──それは最近ですか?
それは去年ですね。他のメンバーが歩んできた1年半くらいを見て、みんな自由にやってるなと思ったから。私もあんまり難しいことを考えてなくてもいいのかな?って思うようになって。あとは、たまたまそのタイミングでeastern youthとのツーマンがあって。
──最高ですね。
eastern youthはずっと大好きだし、BiSHのルーツのバンドなんです。THE YELLOW MONKEYとeastern youthはBiSHのご先祖様みたいな方たちなので。eastern youthとツーマンが決まったということは、何か意味があって、神様が「始まりの曲を歌いなさい」って言ってる気がしたんです。だから、「スパーク」という曲を私は歌い繋いで行こうと思ったんです。それがなかったら決められてなかったと思う。だから、「スパーク」だけは歌い繋いでいきます。
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