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今年ならではの魅力と2人の冒険譚が“伝えたい想い”を紐解く

朗読劇『ハロルドとモード』開幕、黒柳徹子×七五三掛龍也の呼応が観る者にもたらすものとは

2025.10.04 16:00

2025.10.04 16:00

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「演劇」とは、肉体の芸術だ。生身の人間がそこに存在し、演じることで、強い説得力とリアリティを持つ……そんなことを心の底から実感させてくれる。舞台『ハロルドとモード』が2025年9月30日、六本木EXシアターで開幕。それに先駆け29日、公開舞台稽古と記者会見が行われた。

自らの死を演出することでしか存在を証明できなかった19歳の青年・ハロルド(七五三掛龍也)。ある日、“赤の他人の葬式への参列”という趣味を通じて、破天荒でキュートな79歳の女性・モード(黒柳徹子)と出会う。初めて“心から一緒にいたい”と思える人と出会ったハロルドは、少しずつ“生”の意味を見つけていく。そんな中、彼はモードの80歳の誕生日パーティーを計画するが……というストーリー。

『ハロルドとモード』公開舞台稽古より

舞台上には椅子がずらりと並び、登場人物たちは台本を読む、いわゆる朗読劇のスタイル。しかし他の朗読劇とは違い、登場人物はときに舞台衣装を身につけ、ときに立ち上がって演技を行う、通常の演劇にも少し近いタイプの演出が施されている。朗読劇は観客の想像力に委ねられる部分が多いのがメリットだが、その想像が追いつかないときには観客が置いていかれてしまう危険性もある。今回の演出はある意味、この寓話的な物語を“観やすくする”ための工夫が随所に施されていて、その匙加減が絶妙。ハロルドとモード、2人の繰り広げる冒険譚を、すんなりと観客に想像させてくれる。

しかし……これは観た人なら全員が同意してくれると思うのだが、とにかく「黒柳徹子」という存在の凄まじさ! 彼女がどういう人物でどういう活躍をしている人物かは説明不要だと思うし、こういう言い方は御本人にとっては不本意なのかもしれないが、現在「92歳」だ。その年齡でテレビのレギュラー番組を続けているのはもちろん凄いことなのだが、今回は生の舞台、演劇である。果たして、どう演じられるのか……正直なところ、少しドキドキしながら足を運ぶ観客も多いはずだ。

モード役の黒柳徹子

しかし、そこにいるのはまぎれもなく、79歳のモード! 車を乗り回し、ピアノを弾いて歌い、ハロルドを翻弄する。ハロルドをはじめ、さまざまな登場人物たちの掛け合いもテンポよく。いたずらっぽく笑う姿は、なんともキュート。

実は、舞台女優としてかなりのキャリアを持つ黒柳徹子。約30年にわたり自身が主演のプロデュース舞台をほぼ毎年行い、ニール・サイモンやピーター・シェーファーなど、さまざまなコメディ作品を演じ続けてきた。そのコメディエンヌぶりは、未だに健在! ベテランとしての存在感を、まざまざと見せつけた。

そんな超人とも言える女優と対峙するハロルド役に挑んだのは、Travis Japanの七五三掛龍也。これまでに毎年相手役は変わっており、生田斗真、藤井流星(WEST.)、佐藤勝利(timelesz)、向井康二(SnowMan)、松島聡(timelesz)という顔ぶれ。演じる人によりハロルドという役の造形が微妙に変わり、モードとの舞台上の関係性も変わって見えてくるのがこのシリーズの面白さだ。

ハロルド役の七五三掛龍也(Travis Japan)

では七五三掛のハロルドは? これが、彼の持つイノセントな雰囲気とぴったりと合っている。手の込んだ狂言自殺を繰り返し、赤の他人の葬儀に参列して、マイカーとして霊柩車を乗り回すハロルド。しかしその奇妙な行動の理由や内面はセリフでわかりやすく説明されることはなく、そういう意味ではある意味難しい役だ。しかし七五三掛のハロルドは厭世的というよりは、純粋さゆえにこの複雑な世界に生まれ落ちてしまった事自体を戸惑っているような、そんな空気をまとっている。会見で「いろんなことを取っ払って、一番美しいものは純粋な愛なんだなというのを物語を通して感じている」と語った七五三掛。ハロルド役は、彼のその実感を体現していると言えるだろう。

なお、記者会見では七五三掛の実年齢「30歳」を黒柳が知り驚愕する場面も合ったが、舞台での彼は本当に“19歳の少年”そのものだ。それだけに、ハロルドがその孤独の中で60歳も年上のモードに惹かれていくという展開に説得力が生まれるし、観ている方もすんなり納得してしまう。そして、物語の終盤でハロルドが体験することになる悲しみに、誰もが胸が締め付けられるのだ。

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黒柳徹子がこの作品にこだわる理由とは

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作品情報

朗読劇『ハロルドとモード』

『ハロルドとモード』キービジュアル

『ハロルドとモード』キービジュアル

朗読劇『ハロルドとモード』

【東京公演】
日程:2025年9月30日(火)~10月10日(金)
会場:EX THEATER ROPPONGI
主催:テレビ朝日 サンライズプロモーション東京
チケット料金:S席¥10,800 A席¥9,000(全席指定・税込)

【大阪公演】
日程:2025年10月16日(木)〜19日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
主催:サンライズプロモーション大阪
チケット料金:¥10,800(全席指定・税込)

公式サイトはこちら

キャスト&スタッフ

出演:黒柳徹子 七五三掛龍也(Travis Japan) 森迫永依 前野朋哉 松尾貴史 和久井映見

作:コリン・ヒギンズ
上演台本・演出:G2
音楽・演奏:荻野清子
演出補:平田純哉

企画・製作:テレビ朝日 サンライズプロモーション東京

宣伝:キョードーメディアス

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