この1年間の自己評価は?手応えを確信した『セフ恋』を語る
「やればやるほど成長できるから、これからの自分が楽しみ」山下美月が忙しさに満足しない理由
2025.09.30 18:00
2025.09.30 18:00
仕事に追われることは「頑張る」に入らない
──作品の話に戻りますが、面白かったのが一樹と元カノの別れ話を聞いているとき、川端先輩がちょっと笑いはじめますよね。あそこは監督と話し合う中で生まれたものですか。
確か台本のト書きに書いてあったと思います。あそこの川端さんは、最初はちょっと年上のお姉さん的な立ち位置で大人の余裕を出しているんですよね。でも二人の話を聞いているうちに、自分にも思い当たる節がありすぎて、どんどん感情が昂っていく。あの場面もワンカットだからこそ自然に気持ちをつくっていけて、面白いシーンになったなと思います。

──人の修羅場なんて、周りからすれば滑稽じゃないですか。だから、あの笑いはすごくリアルだなと思いました。
しかも一樹に見えないように顔を逆の向こうに向けて手でちょっと隠してるんですけど、おかげで視聴者のみなさんには川端の表情の変化がよくわかるんですよね。あの撮り方もすごく素敵だなと思いました。
──キャッチーな台詞も多いですよね。「幻滅した?」とか普段でも言ってみたいですか。
え、言いたくないです(笑)。たぶん一生言わないです(笑)。
──そんな川端先輩と一樹の生々しい駆け引きをスタジオ出演者のみなさんがツッコミながら観るというウォッチパーティー感も、この番組の醍醐味の一つです。山下さんも普段からテレビを観てツッコんだりしますか。
めっちゃしますね。恋愛リアリティショーとかよく観るので、友達と一緒に観ながらツッコむときもあるし、観終わった後に友達に連絡してワイワイ感想を言い合うのも結構好きです。
──恋愛リアリティショーでハマった番組はありますか。
『ラブ トランジット』がすごく好きで。シーズン1もシーズン2も観たのですが、すごくリアルというか。『ラブ トランジット』の面白いところは、出てくる男女がみんな誰かの元カレであり元カノなんですよ。その中で以前の恋人と復縁するか新しい人のもとへ行くかで揺れている。当事者のみなさんは心苦しいと思うんですけど、客観的に観たらめっちゃ面白くて。そこが好きでした。

──『ラブ トランジット』の中で気になったキャラクターはいますか。
シーズン1に出ていたキャンドル空間アーティストのミナイマサシさんという方が面白かったです。レストランにキャンドルを信じられないくらいバーッと並べて、その中でお食事をされるんですよ。それが天国でご飯を食べているみたいに見えて(笑)。最後に「どのキャンドルがいちばん好き?」って聞いて、女性側がどうしようって感じになってるところとかとんでもないなって。いちばん好きなシーンでした。
──今年だけでもたくさんの出演作品が公開されています。乃木坂46を卒業して1年余り。現在の役者としての自分に対する自己評価を聞かせてください。
まだまだ足りないところだらけだと思います。この1年、バタバタと忙しかった自覚はあるのですが、現場に行って、いろんな役者さんとご一緒するたびに、いつも「自分でいいのかな」という不安と戦っていました。まだ自分をちゃんと役者として見られていないというか、迷いや不安がすごく大きくて。
ただ、その中でも「自分はもっとこういうお芝居がしたいんだ」「こういう表現の方法にもっとトライしてみたいな」という発見がたくさんありました。それをもとに今年は去年とは違うお芝居の仕方にアタックできている気がします。役者は、やればやるほど表現の幅も可能性も広がっていくお仕事。これからの自分が楽しみですし、応援してくださる方にも成長していく私を楽しみにしていただけたらうれしいです。
──新しい発見という意味では、特にどの作品との出会いが大きかったですか。
これは本当にリアルな話なのですが、『セフレと恋人の境界線』がこの1年の中でいちばん手応えのあった作品でした。川端さんという役が今までいただいたどの役とも違っていたので、演じていてすごく楽しかったですし、撮影中もエンタメとしてめちゃくちゃ面白いものをつくっているという確信がありました。こういう生っぽいお芝居にもっともっとトライしていきたいです。

──最後に聞きたいのですが、多忙な毎日を送っているにもかかわらず、先ほど自分のことを「全然頑張ってない」と話されていましたよね。本来であれば忙しさと「頑張った」という感情は比例するものだと思うのですが、山下さんはそうじゃない。山下さんにとっての「頑張る」の定義を聞かせていただけますか。
私にとってお仕事はやった分だけ対価をいただくものなので、それを「頑張る」というふうに捉えるのは、なんだか違う気がするんです。だから、労働している時間は私の中で「頑張る」には入らなくて。でも、たとえば最近、新しいドラマ(『新東京水上警察』)をきっかけに船舶免許(一級小型船舶操縦士免許)を取ったのですが、それは自分で教室を探して、自分でお金を払って勉強したものだから、「頑張る」って言っていいのかなって。
忙しいと仕事に追われるだけになって、自分はこのままでいいのかなって焦燥感に掻き乱されてしまう。仕事以外のプラスアルファの時間がないと、なかなか自分で自分のことを頑張ったと認めてあげられない性格なんです。いただいたお仕事を全力でやるのは当たり前。その上で、仕事以外の時間を使って人間的に成長することが、私にとっての「頑張る」です。

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