2025.09.23 17:30
2025.09.23 17:30
お芝居と関われることが今本当に嬉しい
──須田さんは過去のインタビューで「台詞のないパフォーマンスにも挑戦したい」というお話をされていました。今回限りなく少ない台詞量で、表情とか目線で感情を表現しなきゃいけない役柄だったと思うんですけど、いざやってみていかがでしたか?
本当に楽しくて。ラストにかけて“男神”と対峙するシーンでは、神様は見えないけど動いてるのが分かるようにって監督から説明されていて、実体がないけどそこにいるっていうのが確かに分かるようなお芝居を現場でもしなきゃいけなかったんです。本当に全くいない状態で「あの辺、今あそこにいるよ」っていう言葉での説明だったので、それに合わせて重機を操縦したり、アクションを起こしていく作業は面白かったです。私は元々クラシックバレエを13年やってからアイドルになったので、声のない表現のほうが自分は子供の頃からやってきたことで。だから台詞がなくても、「悔しい」って思ったり、苦戦している表情をしたりするのはやっていて楽しいというか、「心地良いなぁ」と感じる瞬間でした。

──今回の映画、感情の部分でやりたかったことが叶えられたんですね。
お芝居と関わらせてもらえてるのが今本当に嬉しくて。今までは、やりたいことだったけどなかなか辿り着けないものっていうイメージで、憧れであり続けるのがお芝居のような感じがしてたんですけど、ちょっとずつ憧れから自分の現実に近づいてきたなぁっていう感じがします。「難しいなぁ」とか「結局どうやってやるのが正解なんだろう」みたいな、まだ自分のやり方も見つけられてないっていうお仕事はなかなか少なくなってきたので。
15年で大体のことをやってきたので、色んなことが引き出しに入ってるし、こういう仕事の時はこうやって努力をして仕上げていこうみたいな……例えばコメンテーターの仕事のためにニュースをちゃんと見るようにしたりとか、準備のやり方がだんだん分かってきてるけど、お芝居に関しては一生懸命準備するけど自分のやり方をまだ見つけられていないのが楽しいなと思って。人によって役へのアプローチとか作り上げ方とかが全然違うから、色んな人に「どうしてますか?」って経験談を聞きながら学ばせてもらえるのが面白いなって思います。

──弟役の岩橋さんは、元々アイドルグループにいて今回が映画初出演。須田さんも映画2作目で、境遇がちょっと近いところもあるのかなと思ったのですが、現場で会話はありましたか?
すごく会話したわけじゃないけど、めちゃくちゃ優しかったです。一般のお客さんも普通にいる牧場での撮影で、そこに儀式の格好をしてたり、山伏とかカウボーイハットの人がいたりして、なんか色んなキャラクターの濃い人たちがいるから、「なんかやってるぞ」みたいな雰囲気になっていて。私もプライベートで遊びに行ったことが何度もある地元の愛知牧場なんですけど、私が「人が多いのはちょっと不安だなぁ」みたいなことを言ってたら、スタッフさんに私の心配をさりげなく伝えてくれてたりとか、私があんまり現場で言えないこととかを、ちゃんと間に入ってくださったり。
──初出演と思えないぐらい堂々とされていたんですね。
本当に、頼れる面がたくさんあったっていう言葉がしっくりきます。映画は初めてかもしれないけど、本当にアイドルとして、アーティストとして今まで色んな現場を経験してきたからこその「プロだなぁ」っていう感じがあったので。初々しさっていうよりはもう、プロとして佇まいがちゃんとされてました。

──須田さんは25歳の時、著書『コンプレックス力〜なぜ、逆境から這い上がれたのか?』の中で、30歳の自分へ宛てた手紙に「映画には出演しましたか?」と書かれていました。今回2作目ですが、ご自身の出生地である日進市での撮影が叶ったことについてはどう思われていますか?
どうだろう……やっぱり嬉しいが一番ですし、今回本当にたまたまオファーをいただいて、マネージャーから「こんなお話があって、日進市で撮るみたいですよ」って言われた時も「えー、映画出たい!」みたいな感じで(笑)。「日進か、めっちゃ近いなぁ」と思いながらも。
──地元で撮ることに対して、プレッシャーはなかったんですね。
全然(笑)。「え、日進で映画撮るの? 楽しそう、出たい」ぐらいの感じで。フランクに、普通に嬉しくて受けたっていう感じですね。出身地は名古屋だけど生まれた病院が日進で、子どもの頃からよく祖父母が遊びに連れていってくれた場所が日進だったりしたので、馴染みのある場所で撮影できるのは「家から近いし、なんか面白そう」ぐらいの感じでした。あんまり不安もなく。

──楽しみな気持ちだけ?
はい。ただ、いざ監督と顔合わせでおしゃべりをさせてもらった日には、結構壮大な作品だぞ……と思って。儀式がなんとかで、目に見えない神がいて、いついつ時代の……って話し始めて「やばい、私ついていけないかも」と思って、「私でも大丈夫ですか?」ってなりました。あんまり分からないことが多い自分でもついていけるのか、しかも監督はロシアの作品とか世界的に映画を手掛けてる方だから、日本のお芝居もあんまり経験がない私の意見とか悩みとか分かっていただけるのだろうか、と。本当に壮大すぎてどうしようって思ったけど、監督がスタッフも役者もみんな対等だよっていうふうに言ってくれたおかげで、すごく好きな環境で、映画を撮り始めるまでも撮ってからも楽しみました。
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