2025.09.21 11:00
MUSE(Photo by POLOCHO)
2025.09.21 11:00
デビュー25周年を経たMUSE(ミューズ)が、2025年9月に8年ぶりの来日公演を開催する。基本的には親日家のバンドなのだが、なんと8年……コロナ禍もあり、最長のインターバルとなってしまった。大阪はインテックス大阪で開催される「SONIC OSAKA EXPO 2025」への出演となり、MAN WITH A MISSIONとgo!go!vanillasも出演。9月25日(金)のKアリーナ横浜公演は単独公演となる。
まずは90年代の音楽シーンを振り返るが、米国でグランジ、オルタナティヴロック旋風が巻き起こる中、英国ではブリットポップ・ムーブメントと称された、90年代版ブリティッシュ・インヴェンション(60年代にビートルズやローリング・ストーンズら、さらにはモッズ系バンドが米国シーンに多大なる影響を与えたムーブメント)が台頭。オアシスやブラーは米国でも成功を収め、最近もオアシスの再結成は大きなニュースとなった。
それからやがて米国オレンジカウンティを中心としたメロディックハードコアの攻勢が、パンクムーブメントのみならずメタルシーンにも影響する人気となり、オフスプリングやNOFX、日本ではHi-STANDARDなど、キャッチーなメロディとスピード感で、ライブハウスにおけるオーディエンスの在り方にも大きな変化をもたらした。かつてストーン・ローゼズのイアン・ブラウンが「これからのロックシーンはフロアが主役なんだ」と言ったときはピンときていなかったが、気づけば日本でもライブハウスにおけるオーディエンスの連帯感なり、自由な盛り上がり方はそれまでのシーンにはないものへと変貌。90年代からの20年をかけて定着したのが今のライブハウス文化である。
これに加えてPA機器や照明、ミュージシャンの使用楽器もテクノロジーが著しく進化を遂げて、コンサート会場におけるPAコンソールもアナログからデジタルへ置き換えられて、ライティング演出などもコンピュータにより、繊細な光量レベル調整なども自動的に制御。一層複雑な表現が可能となった。それにかつては大変だった打ち込みとの同期演奏のシステムもどんどん簡略化されて、今やほとんどのバンドが同期演奏を駆使したパフォーマンスを行なっている。弦楽器のエフェクトも進化して、今ではパッと聴きでギターの音なのかシンセサイザーなのかが判別できないようになった。実際のパフォーマンスを見て、あ、ギターで出しているんだ!なんて驚いたことがある人も多いはず。
前置きが長くなったが、こうしたあらゆるオルタナ以後のロックミュージックの推移……いや、今や伝統的な英国ロックの血筋を継承するとともに、近年のテクノロジーの恩恵をもっとも受けたバンドと言えるのがMUSEである。マシュー・ベラミー(vo,g,key/父親は「テルスター」のヒットで知られるトルネイドースのギタリストだったジョージ・ベラミー)、クリス・ウォルステンホルム(b,vo)、ドミニク・ハワード(ds,syn,vo)のトリオ編成で、ライブでは現在モーガン・ニコルズからバトンタッチしたダン・ランカスター(key,g)、そしてルケコがヴァイオリンなどをプレイしつつ、マニュピレーター役をも担う5人編成。00年代以後、最先端のバンドスタイルとして世界中にショックを与えたのがMUSEと言っていい。
英国ロックファンにおいて名プロデューサーとして認知されているジョン・レッキーがデビュー作『Showbiz』(1999年)を手がけたことで、日本においてもMUSEはデビューから注目を集めた。同時期にレディオヘッドの『The Bends』リリースもあり、共に次世代のバンドサウンドモデルを体感させてくれたが、面白いことにレディオヘッドは『The Bends』で出会ったナイジェル・ゴッドリッチと組んで、『OK Computer』『KID A』の黄金期に向かっていくこととなる。一方のMUSEは引き続きジョン・レッキーと共に2ndアルバム『Origin of Symmetry』を2001年に発表。米国ではウィーザーが独自のオルタナロックを奏でる一方、ジミー・イート・ワールドらが代表格のエモコアシーンも盛り上がる中だったが、英国ではMUSEの大躍進が続いていき、ミリオンセラーバンドとしてブリット・アワードを賑わせる存在に育っていった。
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