2025.09.13 17:30
「乃木坂46 真夏の全国ツアー2025」明治神宮野球場公演より/写真:鈴木健太(KENTA Inc.)
2025.09.13 17:30
乃木坂46の「真夏の全国ツアー2025」ファイナルとなった会場は、グループの聖地である明治神宮野球場。2014年に始まった乃木坂46の明治神宮野球場公演だが、2001年からの四半世紀においてこの場所で単独ライブを開催したアーティストは乃木坂46のみであり、今回は記念すべき10回目の単独公演。4日間にわたり行われたツアーファイナルであったが、ここでは最終日となるDAY4の模様をお届けする。

「OVERTURE」を経て、軽快なギターのカッティングからバウンスする4つ打ちのリズムで走り出す「君に叱られた」が1曲目としてパフォーマンスされ、オーディエンスからの歓喜のコールが湧き上がった瞬間「今日のライブはとんでもないことになる」という嬉しい予感が身体中を駆け巡った。今回2度目の全ツ(「真夏の全国ツアー」の略称)座長である賀喜遥香が初座長を務めた「真夏の全国ツアー2022」ファイナルの本編ラストとしてパフォーマンスされていた同曲だが、時を経てのメンバーの成長、そして楽曲の浸透っぷりたるや。1曲目にして完全に神宮を掌握してみせた。

曲ラストの振り付けである通称“冠ポーズ”を賀喜がキメると、そこからグループは歴代のシングル表題を飾った夏曲を最初のブロックから惜しげもなく連打。問答無用でぶち上がってしまう「ジコチューで⾏こう!」では間奏にメンバーが「だるまさんがころんだ」に興じ、鬼となったメンバー(ここではセンターを務めた遠藤さくら)がその肩を叩くメンバー(賀喜)に何かをするという恒例のパートが存在するのだが、神宮4日間でこちらはすっかりエスカレートしていた模様(笑)。最終日に至っては、頬にキスを求める賀喜の口を塞いだ遠藤がそのまま自身の手の甲にキスをするという変則間接キスをお見舞い。オーディエンスがたまらず大歓声をあげると、ラストは遠藤が満面の笑みでサムズアップだ。

続く「裸⾜でSummer」では、最新シングル「Same Numbers」のフロントメンバーとなった川﨑桜がセンターを務め「メロメロにしちゃうぞ!」とイタズラっぽくオーディエンスを煽り立てる。それに応える形でサビ小節頭の「Hey!」のコールと共にオーディエンスが掲げる色とりどりの推しメンタオルが客席を染め上げる光景が実に美しかった。神宮を何度も彩ったこの光景であるが、乃木坂流トロピカル・ハウスとも言える趣きのトラックと胸を締め付ける切ないメロディの合わせ技はJ-POP、とりわけアイドルソングというものの自由度の高さや楽曲そのものの完成度の高さを改めて感じさせてくれる。
そして同じく「Same Numbers」のフロントメンバーである一ノ瀬美空が自身の推しメンであった山下美月からセンターを受け継いだ「ガールズルール」。こちらでは一ノ瀬がまだまだ序盤なのにも関わらず喉が張り裂けんばかりの勢いで煽り文句をシャウト。再び賀喜センターの「好きというのはロックだぜ!」では、イントロのコーラスを会場一丸となってシンガロングしながら一心不乱にタオルを振り回す。曲の中盤ではグループがライブ前に必ず行う円陣の掛け声「努力! 感謝! 笑顔!」や「うちらは乃木坂上り坂!」のコール&レスポンスがアレンジとして挟み込まれるなど、ひたすらに楽しいオーディエンス参加型のパフォーマンスで盛り上げに盛り上げる。ツアーのテーマとしてアナウンスされていた“全員がヒロイン”の言葉通り、メンバー全員の頭上には王冠型の髪飾りがセットされていたが、その言葉以上にオーディエンス1人1人にもパートを与えることであたかも神宮に集結した“全員がヒロイン”であり“ヒーロー”なんだよといった圧倒的な一体感を見事に演出していた。

最初のMCを終えると、今度は最近の乃木坂46がリリースしてきた楽曲たちをピックアップ。井上和と中西アルノのWセンターで「ネーブルオレンジ」が披露される。儚げな楽曲も多い乃木坂46の中でも一際の儚さと郷愁を呼び起こさせるナンバー。Bメロを筆頭にところどころ和風な音階を感じさせるメロディラインがそんな気持ちにさせてくれるのだろうか。そろそろ夏の終わりを意識せざるを得ない9月の神宮の空に、しっとりとメロディを歌い上げるWセンターが主導する彼女たちの声はどこまでもこだましていくようだった。

全国ツアー初合流となった6期生たちが期別楽曲としては2曲目となる「なぜ 僕たちは走るのか?」を力強くパフォーマンスすると、ステージ中央から伸びる花道中央の円形状のステージでストリートファッションに身を包んだ賀喜、遠藤、弓木奈於、林瑠奈、川﨑、小川彩によるユニット曲「ってかさ」が披露される。この曲は1994年にEAST END×YURIが発表した楽曲「DA.YO.NE」の令和版を思わせる楽曲としてリリース時から話題を呼んでおり、またこのユニットでのラップ調の楽曲としては「アトノマツリ」「あと7曲」に続く3作目。これらは筆者一押しのユニット曲でもあり、先述のJ-POP、アイドルソングの自由度の高さというものを存分に味わっていただける楽曲たちでもあるので、是非とも一聴いただきたい次第だ。


続くのはこちらもまた先述の自由度を感じさせてくれる、アップテンポな掛け合いが楽しいK-POP調の最新アンダー楽曲「不道徳な夏」。楽曲での単独初センターを務める金川紗耶の気合十分な煽りに、10⽉7⽇から横浜BUNTAIで3日間に渡って開催予定のアンダーライブへの期待もより一層高まるばかりだ。

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