初主演映画『蔵のある街』がくれた自信、飾らない素顔に迫る
あきらめ癖は俳優としての“切り替え力”に、20歳の実力派・山時聡真を成長させる向上心
2025.08.25 18:00
2025.08.25 18:00
宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』で主人公・眞人の声を演じ、一躍脚光を浴びた山時聡真。以降、着実にステップアップを果たしてきた若き実力派が、ついに映画初主演を射止めた。それが8月22日より全国ロードショー中の『蔵のある街』だ。
舞台は、岡山・倉敷市。幼なじみの紅子とその兄で自閉症の恭介のために、美観地区に花火を上げようと奔走する高校生・難波蒼を演じている。子どもたちの無謀な計画に、大人たちは誰も力を貸そうとしない。けれど、蒼の本気の想いはやがて人を動かし、街そのものを動かしていく。
演じた蒼同様、実は何事も続かない性格だという山時。あきらめが早いと自覚する20歳の飾らない素顔に迫った。

好奇心が強い分、飽き性なんです
──山時さんにとって初めての映画主演(中島瑠菜とのW主演)となります。
撮影が始まるまでは緊張しかなかったです。台詞量も出番も今までにないくらいたくさんあって、背筋が伸びるような思いでした。実際にお芝居をやってみるとそれがうれしくて。今までは台本に書かれている限られた情報から役をつくっていたのが、今回は物量が多い分、ヒントになるものも多かったので、すごく役に入りやすかった。お芝居をしながら、自分の体を通して蒼という役をつくれた感覚がありました。
──やっぱり主演と助演ではアプローチの仕方が違いますか。
そうですね。主演は作品の流れを自分でつくっていかないといけないので、責任が大きいというか、甘えられないところはあると思います。ただ、今回の蒼に関しては、脚本の段階で成長をわかりやすく書いていただいていたので、そこをちゃんと読み取って台本に忠実にやれば、おのずと伝わるだろうなという安心感があって。すごく脚本に助けられたので、僕としてはありがたかったです。
──まさにこの映画は蒼の成長物語です。序盤の蒼は、本気で打ち込めるものが見つからなくて、サックスを筆頭に何をやっても三日坊主でした。
僕は蒼の気持ちがすごくよくわかるんです。と言うのも、僕もわりと三日坊主で。一生懸命集めていたカードゲームを、いきなり集めなくなるなど普通にありました(笑)。たぶん飽きてしまうんですよね。好奇心が強い分、趣味は増えるけど、続かない。次々に他の何かに興味がいってしまうところがあって。
それか、自分の中で極めたと思うと、もうそれでよくなってしまう。昔、空手をやってたんですけど、それも黒帯を取れた瞬間、ぱたっとやめました。自分の中で終えるきっかけをつくっているところはあるかもしれないです。
──じゃあ、三日坊主というより、短期集中型なんですね。
そうです。勉強でも台詞覚えでも、わりと短期でパッと覚えるタイプです。
──つまり、勉強に関しては一夜漬けだと(笑)。
はい(笑)。なので、定期試験の点数はいいけど、模擬試験はダメなタイプです。

──あ、それわかります。自分もそうなので。
この気持ちをわかってくださる方がいるだけでもう幸せです(笑)。定期試験はいつも前日くらいまで「わー、まずいまずい」と騒いでるんですけど、1日やればなんとかなるので、答案が返ってくると周りからいつも「お前、できてるやん」と言われてしまいます。
──それはウザがられるやつですね。
ウザがられます(笑)。よく「嘘ついてた!」と怒られてます。でも、模擬試験はそれまでの積み重ねの勝負だから全然ダメなんですよね。
──じゃあ、山時さんはやりたいことが見つからないというより、やりたいことがありすぎるタイプなんですね。
そうですね。サックスも作品に入ってる間はずっと吹いていたんですけど、終わってからはまったくさわっていないです。基本的にうちはスポーツ一家で。家族全員、音楽の才能がないんです。僕がちょっと弾けるのはピアノだけ。それも優里さんの「ドライフラワー」という曲を弾けるようになりたくて、そのときはすごく練習していたんですけど、弾けるようになった瞬間、飽きてしまいました。
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