原点を見つめ自らを「エイリアン」と位置付けた理由とは?
ロックシーンに襲来した気鋭バンドOchunism、新作EP完成までの苦悩と葛藤の日々を明かす
2025.07.16 20:00
2025.07.16 20:00
結成からほどなくメジャーレーベルから声がかかり、ニューカマーとして頭角を現してきたバンド・Ochunismの最新EPが愉しい。その名も『Strange,Dance,Rock』。往年のテクノ、エレクトロへ接近したかと思いきや、軽やかかつコシのあるファンクネスが飛び出し、ネオソウル系のメロウな揺らぎもあればエモーショナルなロックサウンドも顔を覗かせる。
自然とジャンルを横断し洒脱にまとめ上げるセンスはいかにもDTMネイティヴ世代だがしかし、どこか良い意味での引っ掛かりが残されているあたり、言い得て妙なタイトルを冠した快作だ。60曲以上ものデモを制作した中から練り上げていったというEPを紐解く本インタビューでは、この間にバンドが直面したという迷いや原点にある想いまで、凪渡(Vo)とイクミン(Dr)の2人がとことん語ってくれた。

今作は原点をブラッシュアップした感じ
──新たなEP『Strange,Dance,Rock』、まさにタイトル通りの作品だと思いました。余計な要素を削ぎ落として、ストレンジでダンスでロックな音でもって刺しにいったというか。バンドの肩書きとしても「ストレンジダンスロックバンド」というのは謳ってますが、結成当時からそういう音楽を標榜していたんですか?
凪渡 いえ。最初は正直、どんな音楽をやるかをあんまり考えずに、その時々で作りたいものを作るためだけに集まってました。この言葉自体は去年の11月に「GIVE ME SHELTER」を出したときから掲げるようになったので、かなり最近なんですけど、方向性をがっつり変えたというよりぼんやりしていた部分に言葉をつけて、はっきりさせたみたいな。
──初期の作品から既に、青さのような部分よりも洗練された印象が強くて。勢いとか衝動重視ではなく、表現したい音を見据えてそこへ向かうアプローチを緻密に組み上げていたのかなと思うんですが。
イクミン 当時は気づいてなかったんですけど、バッと合わせたそのままのものを出すより、凪渡が「この音を聴かせよう」という考えから、余計な音を減らす作業をしてたんやなって。そこが洗練されてるとおっしゃっていただいてる要素なんかなと思うんですけど。
凪渡 たしかに、当時からみんなのやりたいことをボンと詰め込むんじゃなくて、はっきり僕が「それ要らん」って言える関係やった。メンバーもそう言われて「えー、やりたい」じゃなくて「じゃあ減らしてみよう」みたいなタイプやったんで。

──そういった雰囲気は残しつつ、今作でかなりはっきりとバンドのカラーが出たなと思うんですよ。
イクミン 出たね。
凪渡 うん。嬉しいです、それはすごく。個人的に今作は原点をブラッシュアップした感じやなと思っていて。作詞とか音楽への向き合い方、スタジオで楽器を鳴らすこととか、いろんな部分で原点に戻った感じなので、最初の頃ともそんなに離れてないかもしれないです。
──むしろ、最初期よりもピュアにやりたいことに対して真っ直ぐ出力している気すらして。
イクミン 多分、昔は純粋に「かっこいい」「やりたい」って思ってた音楽を形にするのが難しかったんです。でも曲を作っていくうちに編曲の仕方もわかってきたことで、そのまま形にすることができるようになったから。
凪渡 元々が結構ピュアで、ちゃんとキャッチーなものを作りたいタイプやと思うんですけど、人が心地よく感じたり届きやすいものを作るには、いっぱい繰り返されてきた伝統とか知識も必要となってくるじゃないですか。最初はその辺を感覚だけで探っていたのが言語化できてメンバーとコミュニケーションもとれたし、よりピュアに作れるようになったのかもしれないです。
──逆に一つ前のアルバム『Scramble』に至るまでというのは、守備範囲を広げていこうとする感覚もあったのかな?と感じたりもしたんですが、その辺りはどうですか。
凪渡 『Scramble』はシンプルに色んなことに挑戦した部分が大きくて。今までやってこなかった、家に集まってパソコンで作曲したり、アレンジャーさんと一緒にやったりとか。音楽性自体を広げる意図はそんなになかったんですけど、良くも悪くも「広い」作品にはなったんかなぁと。

──それは自分自身の意識や興味の変化に応えていった結果ですか?
凪渡 うーん……リアルなことを言うと、迷走しちゃってた部分もあって。関わる人も増えてくる中で、自分がまず何を表現したいんだろう?とか、なんで音楽やってるんだろう?とかも正直わからなくなってたので。わからないなりに「人に良いって思われるものを作らなきゃ」って色々と手を出すんですけど、でもやっぱり音楽を作る一番のエネルギーって、「これが表現したいんだ!」っていう自己表現に対するストイックさじゃないですか。正直、『Scramble』のときは表現したいもの自体がわからなくなってたので、色々と試しながらやっていました。
イクミン 初めてリスナーに目線を向けた作品でもあって、どういうふうに作ったらそのままの形でリスナー受け取ってもらえるのか?っていうことも、当時はすごく考えてたと思います。今作ではその経験を入れながら、ちゃんと自分のやりたい形も残しつつできるようになりました。
凪渡 『Scramble』の経験を経た上での今作というのがめちゃくちゃ良かったんですよね。当時チャレンジしたことが、本来ピュアに表現したいものと繋がった感覚があって。
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