映画『ルノワール』での共演を経て語るそれぞれの思春期
「大人になる」と何が変わる?鈴木唯×石田ひかり×リリー・フランキーが出した一つの答え
2025.07.07 18:00
2025.07.07 18:00
唯ちゃんには子役と大御所俳優の要素がある
──このやりとりからお三方の空気感が十分に伝わってきますが、きっと映画を楽しみにしている多くの方が鈴木唯さんはどういう人なんだろうと気になっていると思うんですね。石田さん、リリーさんから見て、鈴木さんはどんな人か教えていただけますか。
リリー この『ルノワール』という映画に定着しているものの半分はフキ、もう半分は唯ちゃんから生まれたものだと思います。この瑞々しさは、お芝居だけでは出てこない。これが15歳や20歳の唯ちゃんなら、また違うことができるんでしょうけど。いちばん大切なのは、11歳の唯ちゃんしかできないものが、この映画に記録されているということ。お芝居を超えた瑞々しさをちゃんと出せることが素晴らしいですし、それはカンヌで褒められますよ。
鈴木 (照れながら)ありがとうございます。
石田 リリーさんのおっしゃった通りです。まだそんなにお芝居の経験がないからこその佇まいというものが本当に素晴らしかったです。

──練り上げられた俳優さんと一緒にお芝居するのとはまた違う感覚なんでしょうか。
リリー 面白いのが、瑞々しさだけじゃなく、練り上げられた人からしか出てこない間も持ち合わせているんです。たとえば僕と手をつないで土手を歩いてるシーンがあるんですけど、向こうから学校の友達がやってくるんですね。それに気づいた瞬間、パッと僕の手を離して、あっちに行っちゃう。で、友達が通り過ぎていったら、また戻ってくる。あのタイミングなんてもうベテランの域ですよ。
石田 絶妙ですよね。
リリー 子役と大御所俳優という両極端の要素がある。
石田 すごくよくわかります(笑)。
リリー 今、中1になったんだっけ?
鈴木 はい。
リリー 中学生になったと聞いただけで、僕らからするとちょっと不思議な感覚がするからね。
石田 そうですよね。この間まで小学生だと思っていたら。

リリー 学校ではどういう子なの?
鈴木 学校では無口なほうです。話すときは思い切り話すけど、誰からも話しかけられなかったら何も話さないです。
リリー 僕はね、子どものとき、学校ではめちゃくちゃしゃべるけど、家では一言もしゃべらなかった。帰ってもオカンしかいないから、僕の好きな話題についてきてくれないの。唯ちゃんは妹がいるけど、どうなの?
鈴木 妹とは大体喧嘩しています(笑)。
石田 どうして喧嘩になるの?
鈴木 妹が可愛すぎて、よくちょっかいを出すんですね。ちょんちょんってやったり、びっくりさせたり。でもそのあと、「可愛いね可愛いね」って頭を撫でるんですけど、そうしたら妹が「気安くさわるな!」って怒るんです(笑)。
石田 そうなんだ。いくつ違い?
鈴木 2歳違いです。妹はツンデレで。ツンのときもあるけど、デレのときは頭を撫でるとすごく喜んでくれるんです。そこが可愛くて可愛くて仕方ないんです……。妹のためならなんでもするタイプです!

リリー 唯ちゃんに似てるの?
鈴木 全く似ていないです。妹はポワポワしていて不思議ちゃんだから。
リリー 唯ちゃんも結構不思議ちゃんだけど、もっとなの?
鈴木 もっとです。
リリー それは家の中がカオスだね(笑)。
鈴木 お母さんは妹のことを宇宙人と呼んでいました(笑)。
──映画では、フキの目線から見た大人の世界が描かれています。石田さん、リリーさんは11歳だったとき、大人の世界ってどんなふうに見えていましたか。
リリー この映画を観ると、自分が子どもの頃の感受性を思い出すんですよね。これくらいの年齢のときにこういうふうに大人を見てたなとか。たぶん僕に限らず、世界中の人が何かしら自分の思春期を思い出すものがあると思っていて。ひかりさんはどうですか? もうこれくらいの年齢のときはお仕事を始めてましたか。

石田 私はデビューが15歳でした。
リリー 大人っぽい子どもだったんですか。
石田 全然です。夜まで外で遊んでいるような。
リリー グレてるじゃん(笑)。
石田 違います違います(笑)。遊んでいると言っても、公園でローラースケートをしてるとか、そういう感じです。
リリー さすが。光GENJI世代だ。
鈴木 一つのことに集中すると時間が経っていることを忘れちゃうような子どもでしたか?
石田 たぶんエネルギーがあり余ってたんだと思います。私がこの映画を観て思い出したのは、子どものときに感じた、人に言えないような気持ちでした。たとえば、フキも友達の家に遊びに行って、開けちゃいけないものを開けたりする。私の子ども時代にも、ああいうようなところがあって。つい友達にちょっと意地悪をしたくなったり。胸の奥がキュッとなるような感情を思い出しました。
リリー そういうのって他人に言わないまま大人になるから。誰にも言えなかった気持ちをこの映画が代わりに言ってくれる気がします。
石田 監督がその頃の感覚や経験をすごくリアルに覚えていらっしゃるんですよね。漠然とした死への恐怖とか、大人の世界に対する好奇心とか、そういう感覚って国境を超えるんだなとカンヌに行って実感しました。
リリー 監督の子どもの頃の私小説だからね、この作品って。監督の記憶の中にあるものとか、最近監督が見て思ったディティールが描き込まれている。そこがいいんでしょうね。
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