映画『ルノワール』での共演を経て語るそれぞれの思春期
「大人になる」と何が変わる?鈴木唯×石田ひかり×リリー・フランキーが出した一つの答え
2025.07.07 18:00
2025.07.07 18:00
子どもの頃、世界はどんなふうに見えていたのだろうか。『ルノワール』は11歳の少女から見た大人の世界、そしてひと夏の出来事を通じて少女がほんの少し大人になる瞬間を描いた映画だ。
監督は、『PLAN 75』の早川千絵。同作で第75回カンヌ国際映画祭にてカメラドール特別賞を受賞した才能は本作でさらに深化を遂げ、第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に日本で唯一選出。現地記者や批評家から温かな拍手を浴びた。
主人公・沖田フキを演じるのは、オーディションによって選ばれた新星・鈴木唯。フキの両親を演じるのは、石田ひかりとリリー・フランキー。
思春期の入り口。かつて誰もが味わった、危うくて、鋭くて、はがゆくて、瑞々しい感情を、映画館で再体験する。
中島歩さんは朝ドラでは別人みたいでした
──まずは早川監督の現場で印象的だったことから伺えますか。
鈴木 印象的だったことは、みなさんとオリエンテーションをやった時に超能力ゲームをしたことです。
リリー 映画の中に出てくるんですね、そういうシーンが。
鈴木 トランプを裏返しておいて、その数字が何かを当てるんですけど。
石田 撮影に入る前に3人が仲良くなるための時間を監督が設けてくださって。そこでいろんなゲームをして、その中の一つに超能力ゲームがあったんです。
リリー やったね、あの謎のゲーム大会(笑)。フキの周りでそういうものが流行っているという記憶を唯ちゃんに埋め込むために、そういうリハーサルを事前にしたんだと思います。
鈴木 ちひろ役の高梨琴乃さんと一緒にやったら、90%くらいの確率で当たりました。子ども同士だと通じるのかなあ。
石田 あとは、監督の作品づくりに対する姿勢そのものが印象に残りました。俳優に対する指示は冷静かつ的確。一方で頑固なところもあって。現場の隅っこで俳優さんとつきっきりで練習されているところを見ました。ここは譲れないというところに関しては、妥協をされない方なのだなと思いました。

──それは、本編のどのシーンでしょうか。
石田 実はそのシーンはカットになってしまったんです(笑)。
鈴木 私も監督から「ここはもうちょっとこうしてほしい」という要望を何度もいただいて、なんとか監督の理想の形にできたらいいなと頑張ったシーンはありました。
リリー へえ。それはどのシーン?
鈴木 そのシーンもカットになってしまったのですが。
リリー あれだね。話を聞いていると、監督が何度もやってくれと言ったシーンは全部切られてるんだね(笑)。
鈴木 例えば、ネタバレになっちゃうかもしれないんですけど。
リリー ダメだよ、犯人は中島(歩)さんとか言っちゃ(笑)。

──そういう映画じゃないです(笑)。
リリー (中島さんのお芝居を真似して)「おじさんの顔、面白い?」って。
石田 本当、そこ好きですよね、リリーさん(笑)。あの気持ち悪さが絶品だって。
リリー 素晴らしい(笑)。
鈴木 中島さん、今やっている朝ドラ(連続テレビ小説『あんぱん』)に出ていますよね。この前観たんですけど。
リリー 嫌なやつだった?
鈴木 『ルノワール』の御前崎さんとは別人みたいでした。

リリー そうか。じゃあ朝ドラでは気持ち悪くない人なんだ。
鈴木 優しくて、ほわんとしていて、周りを温かくさせてくれるような人でした。
リリー 何の役? ジャムおじさん?
鈴木 主人公の前の旦那さんです。
リリー あれ、『アンパンマン』の実写版じゃないの?
鈴木 『アンパンマン』じゃない! 『アンパンマン』を描いた人の奥さんの話です!
次のページ