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INTERVIEW

出演舞台『春醒』への思い、現在の活動を支える信念とは

「いつか胸を張って女優と言えるように」北野日奈子が少しずつ認められるようになった“自分のこと”

2025.06.10 12:00

2025.06.10 12:00

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笑っていない自分を否定されて戸惑う時期もあった

──乃木坂46にいた頃から、お芝居についてはどういう意識でしたか。苦手意識が強かったとか。

苦手というより、当時、生田絵梨花ちゃんとか伊藤純奈ちゃんとか、お芝居が上手で舞台にもたくさん出ているメンバーが周りにいて、その子たちと肩を並べて女優になりたいですと言えるほどの能力は自分にはないな、と思っていました。

──そこから演技って奥が深いな、もっとこの先にあるものを知りたいなと思えたのは、いつ頃のタイミングでしょう。

卒業してすぐに出させていただいた『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』が大きかったですね。出演者の中で女の子は私一人だけ。だからちょっとは優しくしてもらえるのかなと思っていたんですけど、演出の岡村(俊一)さんがずっとつかこうへいさんの作品を演出している方で、その現場では女の子が一人で、あとは男の人ばかりというのも日常茶飯事。だからまったく甘やかされることはなく、私が困っていてもみんなとくに構ってくれもせず(笑)。でも、その構われない感じが逆に良かったんです。

──泥臭い演劇人たちに思い切り揉まれたわけですね(笑)。

今でも覚えているのが、初めての通し稽古が始まる10秒前くらいに、銀ちゃん役の味方(良介)さんが私の席までやってきて、「別に泣きたくなかったら泣かなくていいから」と言ったんです。私が演じた小夏は、旦那さんが自殺する役。すぐそばで味方さんも石田(明)さんも大泣きしているのに、泣かないわけにはいかないじゃないですか。でもずっと私は涙が出なくて、泣いているふりをしていたんです。それを味方さんは良くないと思ったんでしょうね。涙が出ないなら泣かなくていいし、悲しくないなら悲しい顔をしなくていいんだと教えてもらいました。

──それで、実際にどうしたんですか。

泣かなかったです。稽古中も一滴も涙が出ず。本番でもずっと泣かずにやってきたんですけど、一度だけ、確か千秋楽までラスト3回という日に初めて涙が出たんです。

──そのときは何が違ったんでしょうか。

初めてお客さんから見られているという意識がなくなって。自分が今いる空間は、この板の上だけなんだって感じられたんです。そしたら、銀ちゃんがどういう思いなのかが伝わってきて、自然と涙が出ました。これが役で泣くということなんだなって。涙って泣こうとしても出てこないんだってよくわかったし、涙が出ることが大事なんじゃなくて、ちゃんと気持ちが伝われば涙は出ていなくても泣きの演技は成立するんだっていう発見にもなりましたね。

──その経験は、その後の女優業にも生かされていますか。

そうですね。今回の『春醒』でも悲しくて泣くシーンがあるんですけど、昨日はここで泣いたけど今日はここで泣けるとか、日によって違うんですね。ちょっとした違いで自分の反応が変わってくるのも舞台ならではだし、また新しい感覚だなと思っています。

──卒業後の北野さんは、自分の好きなことを着々と仕事にしてきているように見えます。一方で、ご自身のInstagramでは「私はずっと「自分らしさ」を探しながら生きている」と綴っていました。自分らしさがわからずにもがいていた時期というのが北野さんにもあったんでしょうか。

たとえば、アイドルをやっているときはステージ上では笑顔でいることが求められます。私自身、楽しいから自然と笑顔になるんですけど、瞬間瞬間では笑っていないときもあって、その一瞬だけを切り取られて、笑っていない私を否定されることがありました。そのたびに、「私、そんなにずっと笑っていなきゃいけないのかな」と戸惑うことがあって。

──人間ですから、笑っていないときだってありますよね。

握手会でも「自分のときだけ笑っていなかった」と言われたり。もちろんその人がそう思ったならそうなんだろうし、せっかく来てもらったのに申し訳ないという気持ちはあるんですけど、でも「そうじゃないのに」と訂正したくなる自分もいて。だけど、グループにいるとそれができない。何も言えないまま、違和感だけが心の中に生まれていって、自分らしさがわからなくなることはありました。

──グループでいると、“乃木坂46としての北野日奈子”を守らないといけないですからね。

もちろんファンの方は「どんな私でもいいよ」と包み込んでくれるんですけどね。でも、表に出ていると、それだけじゃない声も届いてきて、それを無視して生きられるほど私も強くはなくて。

今でも自分らしいってなんなのかわかるときもあれば、わからないときもある。でも、自分が大事にしたいものを命懸けで大事にできるのは自分の強みなのかなと思えるようにはなりました。

──ワンちゃんをはじめ動物全般に対する愛が深いですし、家族も大事にされていますし。愛情深い方なんだなというのは見ていて感じます。

たぶん自分の好きなものを否定されたら、逆に思い切り布教して、その人を好きにさせるくらいの愛はあると思います!(笑) そういう自分の中のブレない正義とか信念はあると思いますし、愛をくれる人に対しては愛で返せる。そういうところは自分のいいところだと思います。

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家族への想いと最近感じた些細な幸せ

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作品情報

SUGARBOY 6th. mini theater creation 2025『春醒』

SUGARBOY 6th. mini theater creation 2025『春醒』

2025年5月21日(水)〜6月15日(日)
会場:下北沢OFF・OFFシアター
チケット(全席指定・税込):一般 6,900円、U-22 3,500円

DVD・Blu-rayの発売も決定(詳細は公式X、公式サイトまで)

公式サイトはこちら

キャスト&スタッフ

出演:加藤将 北野日奈子 寶珠山駿 立野沙紀 川尻恵太
作・演出:川尻恵太
音楽:あらいふとし
美術:片平圭衣子
舞台監督:田中 翼
照明:榊󠄀 美香
音響:志水れいこ
衣裳:ヨシダミホ
衣裳進行:細井奈津美
演出助手:白鳥雄介
撮影:ワタナベアニ
宣伝美術:村上 健
宣伝ヘアメイク:武部千里
Webデザイン:岡崎龍夫
制作:高橋戦車 豊田夕羽希
企画・製作:MASHIKAKU

北野日奈子

アーティスト情報

1996年7月17日生まれ、北海道出身、千葉県育ち。身長158cm。O型。
2013年、乃木坂46の2期生として加入。8枚目シングル「気づいたら片想い」で初の選抜入りを果たした。
写真集は『空気の色』(幻冬舎)、『希望の方角』(白夜書房)の2冊を発売。
2022年4月に乃木坂46を卒業し、舞台やドラマに立て続けに出演。また、2025年3月よりJRAの年間プロモーション担当としてオンラインコミュニティJRA FUN CLUBの「公式会員」に就任。

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