2025.05.16 18:00
2025.05.16 18:00
現像されたチェキを確認しながら「ビジュイイじゃん」とスタッフが声をかけると、「あ〜! イイじゃんポーズをすれば良かった!」とおどけて周囲の笑いを誘う。目の前にいる彼女は、ドラマや映画で観るよりずっと明るくて物怖じしない天真爛漫な女の子だった。
18歳にして芸歴17年。物心がついた頃からずっとお芝居に関わり続けてきた豊嶋花は今、着々と本格女優への道を歩みはじめている。
作品世界にすっと溶け込む確かな演技力。胸の内を覗き込みたくなる圧倒的な吸引力。この天性の女優の正体は何者か。役というヴェールを脱いだ豊嶋花の素顔に迫る。

草彅さんのギターで「丸ノ内サディスティック」を弾きました
──豊嶋さんが出演しているNetflix映画『新幹線大爆破』が世界独占配信中です。もうとにかくすごい映画でした。
「日本で可能なんだ!」っていう規模ですよね。本物の新幹線を使って撮らせていただいたシーンもありますし。あとは木更津の大きい倉庫に1.5車両分のセットをつくって、そこで撮影を行いました。セットがあまりにもリアルすぎて、すごいという言葉しか出てこなかったです。
──完成した作品をご覧になっての感想も聞かせてください。
もうオープニングから迫力に圧倒されました(笑)。関係者向け試写会のとき、生徒役の子と3人で並んで観たんですけど、みんなずっと口が開きっぱなしで。

──監督は、世界の樋口真嗣さんです。樋口監督はどんな方でしたか。
すごく朗らかな方です。私と共通の趣味があって。お菓子づくりなんですけど。
──可愛い。
しかもガチなんです。私は、マカロンとか、可愛いものをつくりたいタイプで。監督はお店レベルのマフィンとかマドレーヌとかスコーンをつくっていて。だからレベルは全然違うんですけど、撮影の合間に「あれはつくるのが難しいですよね」とか、つくり方のコツを聞いたりして、盛り上がりました。
役についても、「次のシーンはこういうふうにしたいんですけど、どうですか」とか細かく相談させていただいて。おかげで演じやすかったです。
──非常にやりがいのある役でしたね。
いつかこういう役を演じてみたいと思っていました。こんな大役をこの作品でやらせてもらえるなんて、すべてが夢のようで、クランクイン前から撮影が楽しみでした。
──何か心がけていたことはありますか。
撮影は主に木更津だったんですけど、撮影期間中は基本的に家に帰らず、ホテルで滞在していました。やっぱり実家に帰ると、完全にスイッチがオフになってしまうんですね。荷物の替えもあるので、ずっとホテルにいることは難しかったですけど。撮休明けのシーンが大事な場面だったりしたら、気持ちを切らさないように、休みでもあえて家には帰らず一人ホテルで過ごしたりして。友達と電話がギリギリのライン。とにかく集中力を切らさないようにしていました。
──撮影期間中は、役を引きずるタイプですか。
役によりますけど、今回は特に意気込みもすごかったので、あとから撮影期間中のオフショットを見返してみると、いつもより表情が固くて。無意識に役に入っていたんだなと思いました。
──主演は草彅剛さんです。どんな方でしたか。
すごく優しい方でした。話し方が本当に優しいんです。最初は緊張していたんですけど、撮影の合間に草彅さんとお話しすることで気持ちがほぐれていきました。
現場にギターを持ってきて、よく弾いてらっしゃったんです。それで「私も実はギターが好きで」という話をしたら、「ちょっと弾いてみてよ」と言ってくださって。私、草彅さんのギターを弾かせていただいたんです。
──なんてレアな体験……!
私もどうしようってなったんですけど、いざ弾いてみるとすごく弾きやすかったです。「このギターおいくらくらいなんですか」って聞いたら「豊嶋さんでも買えるよ〜」と言ってくださったんですけど、その場にいた松尾(諭)さんが「草彅さんの『買える』は、若者には『買えない』だから」とツッコんで、みんなで笑ったりして。すごく明るい現場でした。

──ちなみに草彅さんの前でなんの曲を披露したのでしょうか。
椎名林檎さんの「丸ノ内サディスティック」を弾きました。もう今考えると畏れ多い!(笑)
──劇中でも草彅さんとのやりとりが多かったですね。
草彅さんの演じた高市は優しくて、車掌として乗客を守る責任感に溢れた人物なんですけど、お芝居をしていても草彅さんの優しさがそのままにじみ出ているようなところがあって、何度も高市が草彅さんで良かったと思いました。
実は終盤のほうで私の演じた柚月と高市に、同じところに傷がついているんです。あそこは、高市と柚月がリンクしているという監督のこだわりで。関係者向け試写会で観たとき、思わずうわっと感動で鳥肌がたちました。
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