劇団☆新感線『紅鬼物語』が開幕間近、今の目標と原動力とは
デビュー7年目で念願の初舞台へ 一ノ瀬颯の心を占める「自分磨き」への思い
2025.05.05 18:00
2025.05.05 18:00
人にはそれぞれターニングポイントがある。あのときのあの経験が、今の自分をつくっている。そんな転換点をどれだけ持てるかが、人の成長を左右する。
俳優・一ノ瀬颯にとって、この作品との出会いが大きなターニングポイントになるかもしれない。5月13日から開幕する劇団☆新感線『紅鬼物語』に出演。役者人生7年目にして初舞台となる。
2019年に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で俳優デビューして以降、『Believe-君にかける橋-』『若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-』『119 エマージェンシーコール』など話題作への出演が続く一ノ瀬だが、かつては自分のいいところを見つけるのがあまり得意ではなかったと言う。自己評価が低かった彼はどうやって自分を認められるようになったのか。その心の変遷を追った。

「これでいい」じゃなくて「これがいい」と言える芝居を
──昨年、『バサラオ』をご覧になっていたそうですね。まずは一ノ瀬さんから見た劇団☆新感線の印象をお聞かせください。
その頃には来年自分がお世話になるということは決まっていたんですけど、そんなこと関係なく、普通にお客さんとして楽しんでいました(笑)。なんて言うんだろう。今まで自分が観たどの舞台ともまったく世界が違うというか。
──わかります。新感線は、新感線という一つのジャンルですよね。
上演時間は結構長いほうだと思うんですけど、全然飽きさせない展開で、音の使い方もカッコいいし。今まで知り合いが出ているものを中心にストレートプレイからミュージカルまでいろいろ観させてもらいましたが、いろんな作品のいいところを全部持ってきたような作品だなと。
──歌から殺陣まで要素が多いのも新感線の特徴です。映画『仕掛人・藤枝梅安2』で殺陣にはすでに挑戦されていますが、舞台の殺陣となるとまた別ですよね。
そうですね。映画のときは殺陣の練習の時間が限られていたのですが、今回はある程度期間を設けて稽古をさせてもらえると聞いているので楽しみです! きちんと安全面に配慮しながら、観ているお客さんにリアルに感じていただけるような殺陣ができたらと思っていますが、そのあたりはまだこれからですね。(※本取材は稽古前に実施)
──歌はどうでしょう。以前、歌うのがお好きとおっしゃっていましたが、舞台上で歌う気持ちというのは。
緊張しますね。いずれ歌いたいとは思っていましたけど、もうちょっと助走をつけてからと考えていたので、いきなり人前で歌うことになるとは。
──助走がなかったですね。
いきなり「よーい、どん!」って感じです(笑)。ただ、あくまで物語の延長線上に歌があるという形なので、何もないところで素の僕が歌うのとはまたちょっと違うのかなと。役を通す分、歌いやすいのかなと今の段階では思っているんですけど、実際にやってみてどう感じるのかは自分でも楽しみです。
──以前、いずれ舞台をやりたいということをお話しになっていました。俳優として、舞台に立つことにどんな期待があったのでしょうか。
デビュー作の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』でヒーローショーやトークショーをやらせてもらったことがあって、応援してくださる方々の反応を生で得られることに対して、すごくやりがいを感じたんです。そのライブ感というのは、舞台の魅力だと思います。
あとは今まで共演させていただいた方の中に舞台出身の方々が多くて。お話を聞いてみたら、みなさん舞台の経験が財産になっているということをおっしゃっていて。僕はずっと映像でやってきたので、舞台に立つことで今までと違う芝居のアプローチや感覚を学べたら、役者としての幅を広げるきっかけになるんじゃないかと思っています。

──映像と舞台の違いの一つが、稽古期間です。じっくり時間をかけて芝居を練っていけることに対して、どんな興味がありますか。
確かに映像はそれぞれが持ってきたものをその場で出して、それに対して監督から違う指示が出れば修正します。ただ、その修正にかけられる時間というのは限られていて。監督がオッケーを出してくださっても、自分の持っている力の何パーセントを出し切れているのか、正直、役者側からするとわからないところもあるんですよね。そういう意味では、稽古で自分がどれだけ芝居を深めていけるか、僕自身もすごく興味があります。
あと、『リュウソウジャー』のときに監督から「違う、もう1回」と何度も言われて、40〜50テイク撮ったことがあったんです。そのときは正直苦しかったですけど、今思えばすごくありがたかったなって。
──ちなみに、そのときの監督はどなたですか。
上堀内(佳寿也)監督です。
──なるほど。特撮ならではの洗礼を浴びたわけですね。
もう全身に浴びました(笑)。他の現場でそこまでテイクを重ねることってなかなかできないので、すごく貴重な経験だったなって。もちろんどの現場でも常に自分なりに100%を出す気持ちで臨んでいます。でも、いろんな要因が重なって、できないときもある。舞台の場合は、それこそ公演中もどんどん改善されていく部分が出てくると思うので。「これでいい」じゃなくて、「これがいい」と言えるところまで芝居を突きつめることができれば、映像・舞台に限らず、今後の自分の芝居の磨き方も変わってくるかもしれない。その可能性にワクワクしています。
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