ドラマ『子宮恋愛』キャスト3人がそれぞれの価値観を語る
松井愛莉×大貫勇輔×沢村玲の生き方鼎談 「人生の主人公は自分」と思うための重要要素とは?
2025.05.01 18:00
2025.05.01 18:00
自分が最上と思っていたら何も吸収できない
──でも、実はまきみたいな自分の意志を持てない人って珍しくない気もします。
松井 たぶん持っていないわけではないんですよ。でも、ここで自分が何も言わないほうが場がおさまるなと考えてしまったり、面倒くさいけど私がこの役目を背負ったほうが楽かなと思って引き受けてしまったり。そういう意味ではまきって他人に優しくて、意外と芯の強い人なんだという見方もできると思います。
──大貫さんと沢村さんはどうでしょう。ちゃんと自分の意志があって意見を言えるタイプですか。
沢村 僕は10代の頃はすごく自我が強い人間でした。バスケをやってたんですけど、いちばんコーチの指示に従わない人だって言われてて(笑)。ここはちゃんと人の話を聞いたほうがいいタイミングだって俯瞰してわかるようになったのは、本当に最近のことかもしれないです。

──それは何かきっかけがあったんですか。
沢村 歌をやってるときに、急に高音が出なくなっちゃったことがあるんです。それまでずっと自分のやり方を貫き通していたんですけど、そこでボイストレーナーさんのアドバイスを聞いて実践してみたら、すごく変わったんです。そこから人の意見を受け入れることで、自分の可能性が広がるんだって実感しました。今は自分の意見がないわけではないですけど、いろんな人とディスカッションした上でいいものができたときがいちばん気持ちいい。役者業に関しても、自分はこうだじゃなくて、まずは先輩方が演じているのを見て、いいと思ったものを取り入れるように心がけています。
大貫 僕もかなり近いかもしれない。昔はとにかく唯我独尊、自分が最上だと思っていましたから(笑)。
一同 (笑)。
大貫 本当に尖りまくっていたので(笑)。やっぱりダンサーとして生きていくためには、自分のスタイルをいちばんカッコいいと思っていないと、できないところもあったんだと思います。それが芸能界に入って、自分ができないものとどんどん出会っていく中で、自分が最上だなんて思っていたら何も吸収できない、もっとゼロにならなきゃダメだって考えるようになりましたね。

──松井さんは、意見が言えないまきのことを「昔の自分を投影しているみたい」とおっしゃっていました。ということは、今は自分の意見を言えるようになったんでしょうか。
松井 今はわりと言えるようになったというか、言うようにしています。言わないと始まらないなと思って。今でも自分の意見を言うのは苦手ですが、その分、どういう言い方をしたら伝わるかなって考えるようになりました。自分の考えを人に伝えるようになってからモヤモヤしていたものが吹っ切れたというか、以前ほど悩まなくなりました。
──劇中に、「自分の人生の主人公は自分」というような台詞が出てきます。まさにこの作品の支柱になる台詞ですね。
松井 読んでいて「はっ! 確かに」となりました。でも同時に「でもな……」と思う自分もいて。実際、人に支えられて生きているし。確かに自分が主人公なんだけど、まだはっきりと主人公だとは思えていないところがあるんでしょうね。(二人に)どうですか?
大貫 ちょっと真面目な話になるのですが、高校生の頃に生と死について考えたことがあって。生まれてきたことがスタートだとしたら、ゴールは死ぬことだなと思ったんですね。で、もしゲームなら、より早くゴールできた人が勝ち。だったら早くゴールに行こうと思って死のうと思ったんです、高校2年生のときに。
松井&沢村 (真剣に聞いている)
大貫 でも屋上に立った瞬間怖くなって、これは違うなと思った。人は死ぬために生きてるんじゃないなと気づいたんです。そこからまた何のために生きているのかを考えて。出た結論は、僕の中には何かを「変える」ことに対する欲求が常にあって、それを満たすために生きているんだなと。

──「変える」?
大貫 それはつまり人の心を変えることもそうだし、自分自身が変わり続けることもそう。だから、僕は表現をしているんです。表現によって人を感動させたり、自分自身が変化していくことが、僕の人生。そのことを手放さない限り、僕は僕の人生の主人公であり続けるんだと思います。
沢村 僕は自分が主人公になったほうがいい場面とそうじゃない場面を見極めることが大事なのかなと考えています。さっきの話の流れで言うと、昔は全部自分が前に立てればいいと思っていたんですよ(笑)。でもそれで失敗したこともあったし、自分が前に出ようとすることで、周りの人が下がってしまうこともあった。それは良くないなと思って。場面場面で求められる役割は違う。自分が前に出て引っ張ったほうがいいなと思うときは自分が主人公のつもりでやるし、引いたほうがいいときはあえて下がる。そのほうが、結果的に自分の良さを消さずにすむんだって、いろいろ経験してわかるようになりました。

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