映画『早乙女カナコの場合は』公開を迎えた思いを素顔で語る
「どんな現場でもフラットな姿勢は変わらない」旬を更新し続ける俳優・山田杏奈を成り立たすもの
2025.03.24 18:00
2025.03.24 18:00
等身大で、飾らない。どんな仕事にも、フラットに臨む。山田杏奈のキャリアを振り返ってみたとき、彼女がどれだけ作り手たちから信頼されているのかが分かる。
恋愛を軸としながらユニークな群像劇が展開する映画『早乙女カナコの場合は』でも、彼女は自然体のまま光る存在感を見せた。本作で山田は、大学デビューを機に「異性からどう思われるか」に価値を見出すも、主人公のカナコや憧れの先輩・長津田との関わりの中で変化していく麻衣子を演じている。
先の「第48回日本アカデミー賞」では昨年の活躍が評価され、2つの賞を受賞。常に最旬を更新する山田杏奈は今、何を思いながら俳優活動に取り組んでいるのだろうか。

息苦しさを感じることは誰にでもあると思う
──本来インタビューは映画の公開前に行うものですが、今回ちょっと異例で、昨日から上映が始まりこれから公開記念の舞台挨拶が行われるというタイミングです。今どんな心境ですか?
舞台挨拶を前に、純粋に今はワクワクしているのと、主人公のカナコをはじめとするキャラクターたちの生きる世界を、みなさんがどのように受け止めてくださるのか、すごく楽しみにしているところです。
──舞台挨拶でお客さんと対面できるのは、やはり俳優である山田さんにとって特別な機会ですか?
そうですね。舞台挨拶が上映前ならこれから映画を観るお客さんの、上映後なら観たばかりのお客さんの、みなさんの表情を見ることができますから。私が関わった映画に、どれだけの方が興味を持って劇場へと足を運んでくださったのかを体感できる。SNS上の反響や興行的な数字の面で知ることも多いですが、対面だとやはりよりダイレクトに感じられますね。
──本作は橋本愛さんが演じるカナコと、中川大志さんが演じる長津田を中心としたユニークな群像劇が展開しますが、初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?
群像劇ならではの、一人ひとりのキャラクターのお話に惹きつけられて、読み進めていくうちにどんどんのめり込んでいきました。人それぞれに、それぞれの生き方がある。私が演じる本田麻衣子は、先輩である長津田に恋をするキャラクターです。彼女がどうなっていくんだろうということもやはり気になりましたし、全体の印象としては、とても人間らしさに溢れている脚本だと思いました。
──映画本編からもそれを感じました。
すごく愛おしいんですよね。
──最初から麻衣子視点で読むというよりは、やはり客観的に全体像を掴む感じですか?
やっぱり最初は、いったいどんなお話なんだろうってなるべくフラットな気持ちで読みますね。その次の段階から、このお話の中で麻衣子がどういう役割を担っているのか、物語が展開していく中で彼女はどんな気持ちでいるのだろうかと、少しずつ視点を絞っていきます。

──作品そのものが持つ大きなテーマもありますが、麻衣子たち一人ひとりも何かテーマのようなものを背負っていると感じました。
私も登場人物の一人ひとりが何かしらのテーマを背負っていると思いました。麻衣子の場合は、長津田に好きになってもらうことや、可愛くあることに価値の重きを置いています。でも次第に、自分のこの価値観は自分だけのものでしかないことに彼女は気がつき、変化していく。そこがすごく魅力的だなと。
──どのキャラクターもそれぞれ魅力的ですが、とくに麻衣子の生き方に共感する人は多いと思います。
自分らしくあることと、誰かと一緒にいるために作り上げた自分でいることに、息苦しさを感じてしまう。そういうのって、誰にでもあると思います。一人きりでいるときの自分と、誰かといるときの自分は違う。そんなことを思いながら脚本を読み、麻衣子のキャラクターについて考えていました。
──俳優として表に出る山田さんだからこそ掴めた部分も多いんじゃないですか。
うーん……どうなんですかね。

──俳優さんは、自分らしくあることを我慢しなければならない瞬間も多いのかなと。
たしかに、この仕事だからこそというのはありますね。作品の全体像を掴みながら、演じるキャラクターの役割について考えていると先ほどお話ししましたが、それは私たちの誰もが日常的に無意識のうちにやっていることじゃないのかなとも思います。
──というと?
たとえば、今この場での私は意識的にも無意識的にも、自分の役割を理解していると思います。
──それはインタビューの場としての?
そうです。そして私は、この場における自分のベストな振る舞いを、無意識のうちにやっていると思うんです。それがいい結果につながることもあれば、自分自身を抑圧し、制限して、何か可能性を狭めてしまっていることもあるのかなって。演じる役について俯瞰的に考えるときにも強く感じることですね。
──すごく納得感があります。
『ドラえもん』でいうところのジャイアン的な役割のキャラクターだとか、つい一面的に捉えて人物像を作り上げようとしてしまいがちなのですが、私たち一人ひとりに人生があるように、物語に登場するキャラクターにも人生がある。これは役を演じる現場においても、日常生活においても、大切にしていきたい考えです。
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