映画『飛べない天使』で初共演した二人が日常を語り合う
福地桃子&青木柚が思う“いい日”の定義 すり減りがちな現代で大切にすべきものとは
2025.02.27 18:00
2025.02.27 18:00
二度寝しちゃうと逃げたくなります(笑)
──そんなお二人が演じた『飛べない天使』ですが、すり切れた現代人の心を癒すような、ファンタジックな手ざわりがあって素敵でした。
福地 聡太郎との出会いによって優佳が救われる場面がたくさんあるんですけど、二人の心が通い合うさまを見ながら、映画をご覧になっている人たちとも心のどこかでつながれるような体験ができたら、すごく素敵だなと思いました。
青木 ロードムービーじゃないですけど、一緒に旅をする時間の中で、お互いの心の空洞が埋まっていく。現実にはこんな出会いはないかもしれないけど、こんなふうに寂しさを抱えた人同士が出会って、世界が広がっていくのっていいですよね。
──お二人は現実から逃げたいなと思うことはありますか。
福地 もちろんあるにはあるんだと思います。でも逃げるにしても逃げないにしても、その都度自分はこういうことが好きなんだと伝えたりして、自分で選択する楽しみを持っているから、今の仕事をしているのかなと思ったりしますね。
青木 僕は逃げたくなるのはしょっちゅうです。すぐ逃げたくなる、人前に立つと(笑)。

──人前に立つ仕事をしているのに(笑)。
青木 お芝居って意外とクローズだなとも思うんですよね。
──どういうことでしょう?
青木 お芝居をやっているときは誰かに見せようとしているわけではないし。相手とのやりとりで生まれているものじゃないですか。だから、できるんですけど。それ以外は、できないなって思うことだらけですね。舞台挨拶を思い出して「あそこであれ言わなきゃ良かったなって」って急に逃げたくなったりとか。やっぱりできないことはできないんだなって思うことはとても多くて。福地さんの言う通り、その中にも楽しみがあるから、逃げずにやってこられてるんだとは思います。
──福地さんはどういうときに逃げたくなるんですか。
福地 ……早起きが得意だったはずなのに、最近つい二度寝しちゃうなとか。
──冬は寒いですからね。
福地 最近は二度寝がすごく楽しみです。でも、ひとつ得意だったものが減っちゃったって悲しいなって。
青木 何の話してるんだろう。そういう意図の質問だったのかな(笑)。

──今の時代、疲れていない人なんてきっといなくて。情報量が多くて、しかもそれが消費されるスピードもあっという間。人気やトレンドが重視される世界にいるお二人は「消費されているな」と感じたりしますか。
青木 いろいろなエンタメのコンテンツとかを見ていて感じるときはありますね。その枠組みの中での葛藤も何かには生きるなと思う反面、健康でいるためにも、しっかり考えて過ごしていきたいなと思います。
──その話、もう少し詳しく掘り下げてもらってもいいですか。
青木 なんだろう。やっぱりちょっとわがままでいることも大事だと思っていて。もちろん人に迷惑をかけたり傷つけるようなことはしちゃいけないけど。そういうことでないのであれば、わがままでいることは悪くないなというか。こだわりという意味ですね。物事をちょっと斜めに見てしまうひねくれた自分も、ある程度まで良しとするというか。枠組みの中にいても、芯を持つことを忘れないでいたいです。
──福地さんはどうですか。
福地 私は、自分の心で思っていることを言葉にして届けることがあまり得意ではなかったんです。自分の感じたことと受け取ったひとのなかで感じ方が微妙に変わることへの臆病な気持ち、そこへの楽しみを見つけられていなかったということもあったと思う。でも、自分が感じたことをちゃんと言葉にして相手に届けようとすることはやっぱり大事なことだと思うので、向き合い続けたいと思っています。

──それはどうしてですか。
福地 自分がどこかで期待してしまっている答えではない、予想外だった時こそ気づきがあって、相手のことをよく知ることができる気がしています。だから、あきらめずに、粘れるようになりたいと思っています。
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