映画『飛べない天使』で初共演した二人が日常を語り合う
福地桃子&青木柚が思う“いい日”の定義 すり減りがちな現代で大切にすべきものとは
2025.02.27 18:00
2025.02.27 18:00
ここではない、どこかへ行きたい。そんな願いを胸のうちにしまいながら、慌ただしい日常を誰もが踏ん張るようにして生きている。
でももし、この現実から一瞬だけエスケープできる非常出口があれば──。そんな真夜中の出会いから始まる心の解放を描いた映画『飛べない天使』が、2月21日に公開された。
オフィスファッションの優佳と、パジャマ姿の聡太郎。違う世界で生きてきた二人は、電車に乗って飛び立つ。誰も追いかけてこない場所へ。これは、翼を持たない私たちの逃避行の物語だ。
優佳役を演じたのは福地桃子。聡太郎役に扮したのは、青木柚。めまぐるしい日々の中で心が削り取られてしまわないために大切なこととは、果たしてなんだろうか。

何歳のときに今の自分になりましたか?
──作品を拝見してのざっくりとした印象なんですけど、醸し出す雰囲気がお二人は似ている気がしました。
福地 うれしいです。今回、初めて一緒に作品をつくらせてもらったのですが、中編で登場人物も少なく、スタッフも大人数ではないという環境がプラスに働いて、優佳と聡太郎として過ごす時間の中で、自然とお互いのことを知ることができたんですね。今思えば、すごく貴重な時間だったなと思います。
青木 僕は福地さんの現場での佇まいを拝見していて、仕事もそうですけど、自分の日常を大切にしよう、豊かにしようという生き方みたいなものをすごく感じたんですね。そこに共感したからこそ、安心して作品をつくれる関係になれた気がします。

──自分の日常を大切にする、というのは?
福地 なんだろう。たとえばですけど、食べるのが好きなので、お腹が空いたときに何を食べるか真剣に考えようとか?
青木 あとは着る服とか食器とかも素材にこだわっていたり。普段日常で使うものに対する造詣の深さとかセンサーの張り方がリスペクトできるなって。
福地 うれしい。何かを選ぶときは真剣になることが楽しいのかもしれない。
青木 あるよね、そういうところ。好きなものとか集めたりするでしょ?
福地 普段から探し歩くというよりは、ふっと覗いた雑貨屋さんとかご飯屋さんで、誰かがそっと差し出してくれたものに対して、いいなと思うことがよくあって。そういう出会いが結構好きなんだなぁって思います。
青木 すごく印象的だったのが、待ち時間のバスの中で「何歳のときに今の自分になりましたか?」って聞かれたんですよ。
福地 うん、聞いた。
青木 そのときにすごいうわってなって。すごく面白い視点の質問だと思ったし、そういう感覚の話ができることがうれしくて。
福地 その質問を以前先輩にしたことがあるんです。ずっと作品を拝見していた方で、やっとご一緒できたタイミングで聞いてみたら、その方の中で明確に何歳のときに今の自分になったという答えがあったんですね。それがとても興味深くて、気になる人にその質問をするようになりました。
青木 で、僕が21〜22と答えて。
福地 私も22で。今の自分になった年齢が同じだったんです。

青木 朝ドラ(連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』)がちょうど21のときだったり。環境もそうですし、すごく自分の中で変化があった時期だったんです。
福地 私も作品をはじめ、22のときに出会った人とか物の思い出が濃くて。今も変化はしていると思うんですけど、今の自分になったという意味では22のときかなって。
青木 僕も本当に何人かにだけこの質問をしたことがあって、面白いのが聞く人は一瞬でこの質問の意味を理解してくれるというか。「どういうこと?」ってならない。すぐに「◯歳かな」って答えが出る。それに対して、わーってなるんだよね(笑)。
福地 私も誰に対しても聞くわけじゃないんですけど、ふと会話の中で思い出すよね。あ、今聞いてみたいかもって。
青木 わかるな〜。
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