映画『雪子 a.k.a.』主人公に重ねた自分自身と“経験”への想い
「柔軟性が幅になればいい」山下リオが何でもやる理由、俳優として目指すビジョン
2025.02.06 18:00
2025.02.06 18:00
2022年に事務所を退所し、フリーとして活動していた山下リオ(2025年1月に新事務所所属を発表)。30歳を前に人生に迷った小学校教師の女性が、ラップを通して自分と向きあっていく姿を描いた映画『雪子 a.k.a.』は、彼女が自身の状況と重ね合わせ、役と共鳴している姿がまざまざと映像に映し出され、見る人の胸を打つ作品となっている。
映画や舞台、ドラマなどさまざまな作品で活躍する彼女だが、実は一時期は「俳優を辞めようと思っていた」とか。『雪子 a.k.a.』という作品との出会い、フリーでの活動について……山下リオという俳優の“現在地”について、いろいろと伺った。
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雪子は私の写し鏡のような人物
──この『雪子 a.k.a.』のオファーが来たときはどう思われましたか?
以前いた事務所から独立し、フリーランスで活動を始めて、最初にもらった映画のオファーでした。監督からメールをいただいたのですが、私へのオファーの経緯やこの映画にかける想いなど、とても情熱溢れる内容で印象深かったです。そこから台本を読ませていただいたのですが、当時私は30歳を迎えるタイミング、同い年の雪子は、私の写し鏡のような人物だなと思いました。未来への漠然とした不安……頑張ってても思うように前に進めない。自分に自信が持てない。そんな雪子と寄り添えるのは私しかいないとも思えました。その後、監督とプロデューサーさんと3人でお会いする機会をいただいたんですが、私も含めて今回のチームはみんな心に静かな炎を持ってるなと感じました。それがこの作品をあたたかくするし、誰かを優しく照らす作品になると確信しました。
──そのときには、来たオファーを受けるかどうか判断するのはご自身だったんですか?
今年からまた事務所に所属させていただいてますが、当時はマネージャーもいなかったので全部自分です。
──2022年に事務所を退所し、その後独立してフリーで活動されていましたよね。以前の事務所にいらっしゃった頃って、作品出演の交渉などは事務所のスタッフの方がメインでやられていたと思うんです。でも、独立して自分で仕事のことを「決めていく」ようになるのは、大きな変化ではなかったですか?
そうですね。俳優業と並行して、マネージャー業や経理の仕事もやりつつ、全ての責任を自分で持つわけですから、環境はガラリと変わりました。それでも、コロナ禍の経験が大きかったのですが、俳優として社会の役に立ちたい想いとは裏腹に、誰にも求められてないと感じることも多かったので、独立して仕事がなれけば、この仕事を諦めようと思ってました。だからこそ、いただいた仕事は、死ぬ気でやり切ることだけに集中していたので、何も怖くなかったです。一人ぼっちの孤独さはありましたけど、その分自由で身軽な選択ができることも楽しめました。スタッフさんとも直接連絡も取り合うので、より一層チーム感を感じられたり、社会人としてこの仕事を一から勉強させてもらった気がします。予想外にいろいろなオファーを頂くことになり、今に至るのですが、すごい転機だったと思います。
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──出演作品を選ぶ基準はあるんですか?
タイミングとかスケジュールの都合があり、全てが自分の思い通りにはならないので、基本的には先にご縁があった方とお仕事してました。作品選びにしても、もちろん台本の面白さも重要ですが、「やってみないとわからない」と、全ての作品に思ってるので、食わず嫌いをしないというスタンスでいます。
──この作品は、劇中でラップシーンもたくさんありますね。それに関してはどうでしたか。
実はもともと、ヒップホップは好きだったんです。映画『8mile』から始まり、『フリースタイルダンジョン』のような番組やそういうバトルの動画をYouTubeでも観てはいました。でも、今までは見てるだけで自分が“ラップをする方”になるとは思いもしなかったので、新しい分野に挑戦できるというのはワクワクしました。音楽劇やミュージカルで歌うことも経験していたので、そういったスキルがうまくこの映画で生かされたらいいな、とも思いました。ラップは初めてだったので、クランクインの半年前ぐらいからラップ教室に通ってレッスンしたり、自宅でひたすらエイトビートを流して、リリックを作ってみたり、監督たちと一緒にスタジオに入って、フリースタイルでバトルしてみる、みたいなことはしていました。
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──監督自らバトルに!?
素人同士なので、私は悪口みたいに言葉になっちゃったり、監督は優し過ぎて何も言い返せなくなっちゃったりしてましたけど(笑)。でも、純粋にその時間も楽しかったですし、ラップで生まれるコミュニケーションも経験できました。映画の中で披露しているラップについては、即興感を大事にしたかったので、あまり練習はしてません。生の録音で緊張はしてましたけど、その場の空気をどう動かすかという部分では、ラップをしていたけれど、お芝居の方に重点を置いて演じてました。面白いのが、私も雪子にすごく共感したんですけど、監督は監督で雪子のような方なんです。お互いが思う別々の違った雪子像が、映画を通して重なり合った姿が作品に映る“雪子”かな、と思っていますね。
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