関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第22回
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』公開記念、アクションの未来を切り開く谷垣健治との特別対談(後編)
2025.01.21 19:00
2025.01.21 19:00
『トワイライト・ウォリアーズ』のアクションは本当にすごかった
関根 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』見ました。最初の20分間はとにかくガッチリと隙なく、仕掛けが早い!
谷垣 元々はむっちゃ長かった。でも、濃縮したんです、早く九龍城砦に入れなきゃダメだから(笑)。
関根 あのセットはどうしたんですか?
谷垣 作りました。
関根 すごいですね! 僕、九龍城が壊れるちょっと前に行きました。
谷垣 全部じゃないですけど、セットでいろいろ再現しました。僕らは“積木”と言ってたんですけど、建物をね、それぞれ30個くらい作るんです。今日はこんな感じ、明日はこれをこうと変えていくんです。レゴを作るように、シーンごとにいろいろと組み合わせて装飾を変えていく。
関根 アクションも多岐に渡って。ワイヤーも使いながら。
谷垣 手を変え、品を変えて。あんだけ人物がいて、皆がアクションをできるわけじゃないし。撮り方や仕掛けをいろいろ変えないと飽きちゃうじゃないですか。
関根 主人公(不法移民の若者チャン)を演じた方はアクションができるんですか?
谷垣 役者なので、もちろん型はうまくやりますけど、本当にできるわけではありません。そういう人には、特殊な設定を作ってあげる。ストリートファイトのような荒削りな戦い方をするようなキャラにしたり。それだと、ある程度雑でも逆にそれがキャラの魅力になる。アクションにおける近接格闘技って、割とやりやすいと思います。でも、関根さんが「明日、テコンドー使いの役です」と言われたら、そんな簡単にできないじゃないですか。テコンドーとかはやっぱりウソがつけない。だから、一人いち動きでスタイルを作っていく。刀を使える人には持ってもらうとか。
関根 あと、敵になる若い人(フィリップ・ンが演じた気孔使いの悪漢、ウォンガウ)は、いい体してたし動きも速い。
谷垣 彼は本当に武術の経験がありますからね。ものすごい強い敵にしなきゃいけないので、気功でカタナも槍も入らないという、「これどうやって倒すんだよ!」と言う無敵な設定を作りました。
関根 怖かったですね。
谷垣 今の世の中は、4人でひとりを攻撃すると“弱い者いじめ”だと。映画『るろうに剣心 伝説の最期編』でも、志々雄に対し剣心たちが向かっていくところで指摘されたことがありました。だから弱い者いじめじゃないように見せるには、むちゃくちゃ強くしないといけない。ということで、あのキャラと戦い方が出来上がりました。
関根 うん、この映画はアクションが本当にすごかった。
谷垣 ロンギュンフォン(ルイス・クーが演じた、九龍城砦を仕切る男)はパンチがすごい。でもそれは当たり前じゃないですか。じゃあ、回したらどうなんだと。スクリューパンチをして、(食らった)向こうもスクリューしたらと発想を。それで、2回転したら「回りすぎだよ」と。半回転だったら「回らなすぎだ」と(笑)。一回転だったら、ありえないけど……あるかも! くらいな感じを狙ってね。『カンフーハッスル』までいったら、今のお客さんは冷めちゃうので。
関根 どのくらい(撮影は)かかりました?
谷垣 半年くらいですね。といっても、エンディングとかは一日27時間くらい撮ってました(笑)。
関根 怪我も結構したんじゃないですか?
谷垣 怪我は意外と少なかったです。しょうもないときに皆、怪我をします。僕も怪我しましたけど、溝に足を突っこんだときでした。
関根 僕が気に入っているところがあるんです。変な恋愛がない!
谷垣 (激しく同意するように手を叩く)
関根 恋愛を入れてくる映画がいっぱいあるんですよ。「邪魔だな、ここ編集したいな」といつも思います。
谷垣 おかげ様で大ヒットして社会現象にもなりましたけど、本当に売るつもりがあったなら、こうは作らなかった(笑)。やっぱりアクションに正論を入れるとつまらなくなることがあって。バスのアクションシーンに関して、助監督か誰かが「バス停に停まらなくていいのか?」と言ったんです。でも停まるとアクションが終わっちゃいますよね。「じゃあ、トラックの中にする?」という話になった。だけど、トラックの中の暗闇で戦っても面白くもなんともない。最後には監督が「バスにしよう」と。それで、香港の1980年代初頭にしかないバスの中で戦うという、記憶に残るアクションになりました。全部を理詰めで作るとトラックになるけど……感性も必要じゃないですか。
関根 そうなんですよ、そういうのは無視していいんです! 古澤憲吾監督かな、『ニッポン無責任時代』を撮った人。植木等さんに「植木、もっとデカい声で笑え」と。なんで笑うんですかと言われても「そんなこと考えなくていいんだよ、いいから笑え!」と。監督がぐいぐい引っ張ればオッケーなんですよ。観て面白けりゃいい(笑)。
まるで旧来からの友人同士のように、好きなカルチャーの話題で盛り上がり続ける2人だった。サモ・ハンやルイス・クーら香港映画界のマスターたちが出演した超大作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は、2025年1月17日より劇場公開中。谷垣健治が魂を込めた、最高のアクション演出をぜひスクリーンで観てほしい。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』場面写真 ©︎2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.