13曲入り1stアルバム『Raise』に込めたこだわりと強みとは
いくらでも上を目指せる世界で、叶え続けたい夢がある。和田雅成がアーティスト活動にかける想い
2024.12.16 19:30
2024.12.16 19:30
役者でもあるから、思いの強さで勝負したい
──13曲をレコーディングしながら自分の声に向き合う時間が長かったと思いますが、歌手としての和田雅成さんの魅力はどんなところにあると思いますか?
他の歌手の方たちがどんな風に楽曲に向き合っているのかは正直、僕にはわからないんですけど、僕は役者であるという大前提があって、その上で歌を歌っているので、どちらかというと思いを乗せるタイプだと思います。舞台上でもセリフを自分の言葉にして、自分の思いにして発するので、もしかしたら他の歌手の方たちとは違う作り方をしているのかもしれないですね。ピッチが合ってることに越したことはないんですけど、それよりも僕はたとえ音が外れようが思いの強さで勝負したいんですよね。特にこのアルバムを作っている時は舞台の本番中で、けっこうメンタルがやられる芝居だったんですよ。10月に主演させていただいた舞台『月農(げつのう)』という作品で、自分の好きだった人が死んでしまったところからスタートするんです。そういうメンタルがぐちゃっとなる作品の本番中にレコーディングしていたので、それは他の方たちには経験できないことだと思うし。レコーディング中もどこかでその作品のことが自分の中にあって、そこから出てくる声なので、それは自分の強みというか、自分にしかできないことなのかなと思います。
──俳優ならではのアプローチですよね。
そうだと思います。僕って、役者もそうですけど、すべてをさらけ出して作品だったり歌だったりに向き合わずにはいられないタイプなんですよね。人それぞれに作り方はあると思いますけど、僕はそれが強みだと思いますね。
──レコーディング中に、こんな風に歌ってほしいといったディレクションはありましたか?
感情に関してはあまりなくて、この言葉を強くしたいからここを強く歌ってほしいといったことはありました。でも、曲によって違う方がディレクションしてくれたので、人によっていろんなディレクションの仕方やアプローチの仕方があるんだな、というのは勉強になりましたね。
──舞台作品を作る時に演出家がディレクションをするのとはまた違う感じでしたか?
そうですね。これも役者の強みだと思うんですけど、言葉で自分の感情を想起させる、そしてその流れを最初から最後まで作る、ということはできるんですよ。ただ、自分の中で感情は出来上がっているんだけど、それを音楽としてどう表現するか、例えばサビのこの部分を強く訴えかけるにはどうしたらいいか、というのは僕にはわからなかったので、それを教えていただいたという感じですね。音楽のことは音楽のプロに任せて、僕は思いをしっかり乗せることに注力しました。
──全13曲のアルバムの中で、一番苦戦した曲はなんですか?
12番目に収録されている「ピリオド」ですね。メロディーがめちゃくちゃ難しいんですよ、この曲。曲自体が難しかったのと、舞台の本番中というのもあって、心とリンクしない部分があったり、感情的になりすぎたりとかして。ちょうど舞台の終盤で疲れも溜まっている中で、またキーが高いんですよ。そのキーの高さと感情がリンクしなくて苦労しましたね。心はすごく暗いのに、メロディーは高くて、感情のすり合わせがすごく難しかった曲だという印象があります。演じていた役も気持ちにドライブはかけちゃいけない役だったので、そんな中で音に気持ちを乗せて歌うというのはすごく難しかったです。
──逆に、すごくスムーズにレコーディングできた曲はなんですか?
全体的にアップテンポな曲は早かったかもしれないですね。「プライド」とかも早かった気がします。僕はこの「Fly Higher」という曲が大好きなんですけど、この曲も早くレコーディングできましたね。この曲は「高く飛べ」というシンプルなタイトルではあるんですけど、歌詞の内容がまっすぐで、僕に刺さる歌詞でしたね。
──ストレートに情熱的な歌詞の曲ですよね。和田さんが好きなアニソン的な雰囲気もあると思います。
この「Fly Higher」とか「Now Loading」はまさにアニソンですよね。僕はアニソンっぽい曲を作ってほしいとお願いをしていたので、イメージ通り背中を押してくれるような曲に仕上がっていると思います。
──ドラマ主題歌となった「Dice」と「own world」にはどんな思い入れがありますか?
「Dice」は『神様のサイコロ』というドラマの主題歌で、そのタイトルから取った曲名なんですけど、1から6まで目があるサイコロを自分の人生になぞらえた曲なんです。例えばすごろくをやっていてサイコロの出目が6だったとすると、1から5までは飛ばすわけじゃないですか。そうしたらそこにもう戻れないですよね。それが人生だとしたら、サイコロで6が出た時、飛ばしてしまったコマには何があったんだろうって思うんです。逆に1が出続けたとしても、もしかしたらそこには見なかった方がよかった景色、見てはいけなかった景色があるかもしれない。そういうことってたぶんこれまでの自分の人生にも起こってたんですよ。振り返りたくない過去だったり、懐かしい過去だったり、楽しい過去だったり、逆に楽しい未来、暗い未来、いろんな過去から未来を想起しながら、思い出しながら挑んだ曲でした。だから、歌っていてめっちゃしんどかったです。そうしないと勝負できなかった曲でした。
──自分の人生をあらためて振り返ってしまった曲だったということですね。でも1曲1曲にそれだけ全力で向き合ってるということですよね。
みんなそうだと思うんですけどね。曲が世に放たれるっていうのはその曲が一生残っていくということなので、当たり前のことですけど絶対に手は抜けないし。この「Dice」は和田雅成としてレコーディングした一発目の曲だったので、特に思い入れがありますね。あと「own world」は舞台『月農』の脚本・演出の私オムさんが脚本を書いたドラマ『0.5D』の主題歌で、彼が歌詞も書いてくれたんですよ。もともとプライベートで仲がよくて、ドラマの脚本も書くということで主題歌の作詞もしてもらいました。オムくんは僕のこともよく知っているので、僕のことを考えながら書いたよって言ってくれましたね。
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