2024.12.10 18:00
浅井健一「OVER HEAD POP TOUR」2024年11月22日 EX THEATER ROPPONGI公演より
2024.12.10 18:00
50代ラストライブでも不変のベンジー節
「OK、じゃちょっと懐かしいのやるわ」と、ギターのストロークと歌だけで「シルベット」を演奏し始める。話すようなテンションからバンドが入り、広大なフリーウェイと孤独な二人ぼっちの景色が綴られる。続いてもJUDEのレパートリーから「海水浴」をプレイ。小林のパーカッシブなフロアタムの使い方がラテンな味を醸す。世界に二人しかいないようなロマンと切なさを感じる2曲が続いた。さらに16ビートのジャズテイストもある「Not Ready Love」で、小林のプレイのレンジの広さを実感。曲が描く部屋のイメージをシャンデリアに見立てたミラーボールが効いていた。切なさと不可思議さを纏う物語は新曲「猿がリンゴ投げた」にうまく接続し、続く「見た事もない鳥」で、溜めてきたテンションの圧を最後に爆発させた。曲間はほぼ無言でステージの上も下も集中力が極まったところに、あの単音リフが放たれると、再びフロアは暴発。ブランキーの「SKUNK」だ。
浅井のリフ、一瞬のブレイクから暴走するようなアンサンブルというある種、ストップ&ゴーを繰り返すこの曲のユニークさに改めて気づいていると、立て続けにキラーチューン「ガソリンの揺れ方」を本編ラストにぶち込んできたのだからフロアの熱狂は止まらない。歌い出しの「ガソリンの香りがしてる」からシンガロングが起こり、サビの「淋しさだとか 優しさだとか 温もりだとか言うけれど」に至ってはオーディエンスの声はもう叫びだ。むしろ浅井のボーカルは今の包容力のようなものを携えていた。安易な共感に陥ることのない孤高の感性は彼が生きてきた時間の分だけむしろ強くなった印象を受けたのだ。それが冒頭の問いへの一つの答えだった。
アンコールでは宇野がこの日のライブが浅井、50代ラストのライブであることを話す。そう。12月29日に還暦を迎えるのだ。にわかに信じがたいが本人は「絶対、赤いちゃんちゃんことか着んわ。プレゼントしないでね」と釘を刺し、「歳はとっていくけど、みんなで力を合わせて世界をよくして行こうぜ」と不変のベンジー節も飛び出した。その言葉を受けて宇野が「日本でファンタジーを歌えるのはこの人だけ。最高のロッカー、浅井健一!」と愛と尊敬が充満するシンプルな言葉を捧げた。
そこから、アンコールと呼ぶには贅沢かつ本編とも作用し合う、新曲「うさぎのドアマン」、「危険すぎる」、そしてこの日のラインナップでは珍しいガレージテイストでBLANKEY JET CITYとしてのラストシングル「Saturday Night」と、もう一つの流れを作り出して、新作のラストを飾る「けっして」をこのメンバーで演奏した。後ろを振り返らずに生きるなんてできないと、一旦歌いながら、もう一度決意して歩き出すときには「けっして後ろ振り向くな、前だけ見て生きろ」と自分に言い聞かせる、そういう曲だと思う。
毎回全力で都度のツアーにどんな意味があるのかなんて話さないベンジーだけど、このアンコールのラストはさらに進むための集大成的な大きさがあった。なので、もうここで終わりでも納得したのだが、なんとダブルアンコールで再々登場。「ありがとう、またどこかで。その時まで元気で」と、深々とお辞儀をした後、掛け値なしのロックンロール「SALINGER」で爆走して、ツアーを完遂した。浅井がこの3人での作品作りはブランキーにちょっと近いと言う意味もわかったライブ。しばらくこのトリオの化学反応を見ていきたいとも思った。
なおBLANKEY JET CITY結成から35年となる来年には、これまでの活動全キャリアからベストセレクトする新たなツアーも開催決定。今回見逃したファンも、今のベンジーの絶好調ぶりをぜひ確認してほしい。
セットリスト
浅井健一「OVER HEAD POP TOUR」
2024年11月22日 EX THEATER ROPPONGI
1. あおるなよ
2. Vinegar
3. SWEET DAYS
4. Fantasy
5. パイナップサンド
6. Calm Lula
7. HUNDRED TABASCO AIRLINE
8. JODY
9. 宇宙的迷子
10. BLUE BLONDE
11. Come on Cusion Fight
12. シルベット
13. 海水浴
14. Not Ready Love
15. 猿がリンゴ投げた
16. 見た事もない鳥
17. SKUNK
18. ガソリンの揺れ方
ENCORE
19. うさぎのドアマン
20. 危険すぎる
21. Saturday Night
22. けっして
W-ENCORE
23. SALINGER