2024.12.09 18:00
櫻坂46「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」より(写真:上山陽介)
2024.12.09 18:00
音楽史で継がれる系譜に答えた最新シングル
移行からの移行、度重なる世界観のワープとも言える大胆にして強引なステージングではあるが、先述の通り世界の担い手であるメンバーはどの一幕においても表現の手を緩めることはない。楽曲の雰囲気、歌われる歌詞はそれぞれ違えど、このメンバーによるマンパワーのグルーヴが乱れないからこそ、オーディエンスたちは徹頭徹尾に至るまで統率され、徹頭徹尾に至るまで陶酔することができる。そんなライブ運びにこちらの知覚はショートを呼び起こされ、その感覚が快感へと変わっていく頃、遂にその世界観は統一される。
本編ラストスパートとして配置されたアップテンポでハードなダンスナンバーのラッシュ。これがもうとにかく圧巻だった。「マンホールの蓋の上」から畳み掛けられた計5曲。前シングル『自業自得』のカップリング曲で9月開催の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」ではラスト前での披露という異例の処遇も記憶に新しいアジテーションソング「もう一曲 欲しいのかい?」。当曲の異常なまでのBPMの速さ、この速度で打たれる4つ打ちはダンスミュージックのジャンルで言うと“ガバ(ハードコアテクノの一種で非常に速いBPMとノイジーに処理されたキック音が特徴)”的ですらあり、曲中執拗に繰り返される“Ride on la la la la ta ta”と“Get down da da da la ta ta”が熱狂を煽りに煽り、楽曲冒頭のけたたましいシンセと重低音をライブ用にアレンジ、本編に突入するまでたっぷりと焦らしてから投下された「承認欲求」の直線的なビートで会場を縦に揺らしたかと思えば、直後に過激なディストーションが施されたような「自業自得」のブレイクビーツが今度は横に会場をブン回す。
オーディエンスの熱を巧みに操るパフォーマンス及びセットリストの妙の極みはやはり本編ラストであった。前曲まで続け様に楽曲を披露し、煽り、揺らし、ブン回し切ったところで突如静寂が訪れる。最新シングル「I want tomorrow to come」である。当曲センターの山下瞳月がゆったりとした足取りでステージ中央まで移動、そして横たわると共に歌入り。たおやかに音を紡ぐピアノ、ギター、ストリングス、そして呟かれる歌詞。およそ49秒の序章的で叙情的なパートはハードなキックとベースのスラップによって切り裂かれ、猛スピードで繰り広げられる譜割りとダンスにオーディエンスは熱狂を超え狂騒の様相を呈する。
全く異なるパートの正面衝突的な作風、Queen的な大仰さやプログレ的な組曲の趣き、それらの手法を2000年代にアップデートしたMy Chemical Romance、さらにその手法を現代にアップデートさせたBring Me the Horizon、そんなカルチャーに対する日本のアイドルからの回答(と捉えている)には畏怖の念すら覚えたほどであったし、独立した楽曲を一つにまとめたオープニングと独立したようなパートによって描かれる、1曲というセットリストのスタートとラストの対比構造を考えると心の底から震え上がる思いで、「超カッコいい……」と感嘆するしかなかった。
今回の「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」を観て、引き続き櫻坂46の動向を追いたいと心から思う。この幅の広さ、世界観の多次元構造、落差の快感は、他では到底代えがきかないからだ。
セットリスト
櫻坂46「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」
2024年11月23日(土)・24日(日) ZOZOマリンスタジアム
DAY1
00. Overture
01. ドローン旋回中・Anthem time
02. 嵐の前、世界の終わり
03. 何歳の頃に戻りたいのか?
04. BAN
05. 一瞬の馬
06. 引きこもる時間はない
07. TOKYO SNOW
08. 五月雨よ
09. 縁起担ぎ
10. イザベルについて
11. コンビナート
12. ブルームーンキス
13. 思ったよりも寂しくない
14. 最終の地下鉄に乗って
15. Start over!
16. マモリビト
17. マンホールの蓋の上
18. もう一曲 欲しいのかい?
19. 承認欲求
20. 自業自得
21. I want tomorrow to come
EN1. Buddies
EN1. 櫻坂の詩
DAY2
00. Overture
01. ドローン旋回中・Anthem time
02. 嵐の前、世界の終わり
03. 何歳の頃に戻りたいのか?
04. BAN
05. 一瞬の馬
06. 本質的なこと
07. TOKYO SNOW
08. 桜月
09. 標識
10. On my way
11. 今さらSuddenly
12. ブルームーンキス
13. 思ったよりも寂しくない
14. 最終の地下鉄に乗って
15. Start over!
16. 静寂の暴力
17. マンホールの蓋の上
18. もう一曲 欲しいのかい?
19. 承認欲求
20. 自業自得
21. I want tomorrow to come
EN1. Buddies
EN1. 櫻坂の詩
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