2024.12.09 18:00
櫻坂46「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」より(写真:上山陽介)
2024.12.09 18:00
この幅の広さ、というよりそこで描かれる世界観の多次元構造とは一体なんなのだろう。
櫻坂46が去る11月23、24日にZOZOマリンスタジアムにて行った「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」を観た直後、改めて2日間で披露された楽曲群、そのセットリストを見て思った。
両日ともにライブのオープニングを飾った「ドローン旋回中」&「Anthem time」。こちらは異なる2つの楽曲によるメドレーとなっており、前者は所謂メロコア的な響きを持つ2ビートで颯爽と駆け抜けるナンバーで、後者は三期生楽曲の中でも一際ポップで爽やかな疾走感が溢れるナンバー。昨年の「3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE」では中盤の起爆剤として2曲続けてのパフォーマンスだったが、今年はそれを繋げて1曲にしてオープニングでぶっ放してしまおうなんて、突飛かつ最高に楽しいライブならではのアレンジだった。
ここから即座に最新シングルカップリング「嵐の前、世界の終わり」へと移行。既にここで前曲とは何もかにもがまるっきり変わってしまう。先の「ドローン旋回中」は学生目線の甘酸っぱいラブソングであり、「Anthem time」は個々を尊重するチアフルソング。そこから続いたこの楽曲ではどっしりとBPMを落としたビートに乗せて終末思想が描かれるのである。世界の語り部であるメンバー達の表情もさっきまでと同じ人物とは思えないほどにシリアス。
そう、この櫻坂46がもたらしてくれる“落差の快感”とでも形容すべきものは自身が歩んだ4年の歳月を経て、他アイドルのみならずバンド、ソロ、その他諸々のあらゆる音楽の形態を引っくるめてもなかなかに得難い感覚にまで昇華し、その上さらに研ぎ澄まされていると感じた。
続く「何歳の頃に戻りたいのか?」と「BAN」のシングル表題曲コンボではピッチャーゴロやカップ麺などの歌詞が象徴的なように、またも前曲とは急転直下的に今度は市井を生きる人々にフォーカスした世界観が展開され、次に1日目で披露された三期生楽曲の「引きこもる時間はない」と2日目で披露されたこちらも三期生楽曲の「本質的なこと」では対象は違えど、描かれるのは葛藤だ。続く最新シングルカップリング「TOKYO SNOW」では物悲しい思慕の念を降り積もることが少ない東京の雪と重ねる心情がしっとりと描かれ、1日目の「五月雨よ」では雪空を吹き飛ばすような清涼感、2日目の「桜月」では空を舞う雪が温かな桜へと変わっていく季節と感情の移ろいが描かれた。
このような恐ろしいほどに目まぐるしい世界観の展開をワンステージで描き切ってしまう、描き切ってしまえるメンバー達のパフォーマンス力の高さ。そしてその楽曲の世界へ自らを投影させる自己プロデュース力の高さに毎度やられてしまう。しかも今回は華美なステージ装飾、あるいはスクリーンの映像などを用いた演出も基本大々的には用いられることもなく、ライブ用にミックス、アレンジされたビートや上物とそちらにバチバチに呼応しまくるライティングのみを携えての形である。演出ではない、マンパワーの矜持がそこにはあった。
「Start over!」の、鋭いベースのスラップ音の上で4つのリズムでメンバーとオーディエンスが飛び跳ねる光景なんかも他の音楽形態ではなかなか見ることはできないし、そんな一縷の狂気すら孕んだようなパフォーマンスの直後、1日目には“継承”について祝祭的に描かれる三期生楽曲「マモリビト」、2日目はこちらも三期生楽曲で乱暴に言えばアイドルグループによるポストロック、あるいはシューゲイザー的なアトモスフィアへの超弩級カウンターである「静寂の暴力」が続いた。
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