2024.12.02 12:00
2024.12.02 12:00
舞台に立つ者にとって、いつか自分もと憧れを抱くシェイクスピアの世界。この冬、新たにシェイクスピアの扉を叩く者たちがいる。
それが佐久間由衣と長井短だ。稀代の悪役・シャイロックを草彅剛が演じることで話題を集める舞台『ヴェニスの商人』で、富豪の娘ポーシャを佐久間、その侍女ネリッサを長井が演じる。
じっくり話すのはこの取材が初めてという二人に、舞台のこと、そして10代の頃に流行ったことからアラサーあるあるまで同世代トークをたっぷりと語ってもらった。
闇堕ちするキャラが好きなんです
──お二人ともシェイクスピア作品に初出演。シェイクスピアにどんなイメージがありましたか。
佐久間 非現実というか、敷居が高いイメージがありましたね。今まで『ハムレット』と『ロミオとジュリエット』、あとはニューヨークで『マクベス』を観たことがあるんですけど、まさか自分がシェイクスピア作品をやるなんて、全然考えていませんでした。
長井 私は演劇を始めたときから1回はやりたいなと思っていたんです。『夏の夜の夢』がすごく好きで、私は自分の背の高さを気に入ってるんですけど、この背の高さをより愛せる戯曲だなと思って、いつかやってみたいなと。
佐久間 そうなんですね。
長井 あとは私自身、これまで同世代の劇作家が書いた現代劇をやることが多かったので、シェイクスピアに限らず、古典作品だったり翻訳劇をやってみたかったというのもあります。
佐久間 今回、『ヴェニスの商人』の台本をいただいて、エンターテイメント性が高いなと思ったんですよ。
長井 読んでて楽しかったですよね。出てくる単語が馴染みがなくて難しいなと思うところはありますけど、話の展開も追いやすいし、シェイクスピアは初めてという人に向いているんじゃないかなという気がしました。
佐久間 起承転結もはっきりしてますし、友情や恋愛、師弟関係、そして嫉妬や憎しみといった人間の感情がギュッとつめこまれていて、エネルギーが溢れる戯曲だなと思いました。
長井 あと、昔の戯曲って女性同士が親しくて、協力して何かを勝ち取ろうみたいな関係がそんなに多くないイメージがあって。佐久間さんの演じるポーシャと、私が演じるネリッサの仲が良いのもうれしかったポイントの一つですね。
──『ヴェニスの商人』といえば、クライマックスの判決が有名です。
長井 楽しいですよね。みんなやっぱりとんちみたいなのが好きなんだなって。一休さんと同じシステムというか(笑)。
佐久間 一休さん(笑)。
長井 高圧的な人間を出し抜きたいという欲望が昔からあるんだなって、すごい親近感が湧きました。
佐久間 私は本当どうなるのかなって、ちょっとドキドキしました。
長井 ポーシャはめっちゃ大変そうですよね。
佐久間 男性の格好をして、裁判を仕切らなくちゃいけない。読んだときも、読者として楽しむというよりは、これをどうやって演じていけばいいんだろうというプレッシャーの方が強かったです。
──強欲なシャイロックと、高潔なアントーニオ。対照的なキャラクターですが、お二人はどちらに魅力を感じましたか。
佐久間 アントーニオです。
長井 私、シャイロックだな。
佐久間 え、シャイロックですか。心配……(笑)。
長井 漫画とかゲームでも大体闇堕ちするキャラが好きなんですよ。
佐久間 なるほど。
長井 確かにシャイロックは意地悪だし強欲だし。でも、なんでそうなっちゃったのかなみたいなことが気になる。だから、私はそっちに恋してしまう気がしますね。
佐久間 どうしてそうなっちゃったんだろうというのは私も気になりますけど、恋まではいかないかもしれない(笑)。私はアントーニオの友達思いなところが好きです。『走れメロス』を思い出すというか。こういう人が報われないのはあまりにも胸が苦しいというか。
長井 アントーニオはいい人なんですよね。でも、人が良すぎて、もう友達いるじゃんって思っちゃう(笑)。
佐久間 確かに。私がいなくても、もう周りに人がいるしって(笑)。
──そんなシャイロックを草彅剛さんが演じます。
佐久間 個人的に爽やかなイメージがあるので、そんな草彅さんがどんなふうに演じるんだろうと、楽しみですね。
長井 私からすると、テレビ画面で見てきた人というイメージで。そのときの印象は、陽の人、善の人。“みんなの草彅さん”が強欲なシャイロックを演じるというのは確かに気になりますね。
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