本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第15回
「音楽を突き詰めたい」乃紫と考える、長く活躍し続けるために必要なこと
2024.10.16 19:00
2024.10.16 19:00
どこにも弱みがないアーティストになりたい
本間 「踊れる街」はちょっとワンステップが上がってる作品だと思ってます。キックとスネアが時代の先取りになってるし、ギターの処理も、かき鳴らし系のギターだけじゃなくて、構築されたギターっていうのが珍しいなと思って。
乃紫 ありがとうございます。構築っていうのは……?
本間 置き場所とかフレーズとか、どのポジションで弾くかとか、どういう音色でやるかっていうのだね。
乃紫 こんなに深く聴いてくださる方いないです、本当に(笑)。作曲のソフトを触り始めた時に、使い方がわからなくて、「普段聴いてる音楽ってどんなんだっけ?」ってもう一回聴き直して。立体パズルとして見た時に、耳コピでこのへんにこの楽器が鳴ってるみたいな。それを打ち込みで入れてみるみたいな作業から始めたんですよね。
本間 多分センスでわかってる部分もあると思う。ストリングスもどういう並びで積めばいいのか、鳴るのかっていうのは経験値が必要だし、勉強してずっとやらないとわかってこない部分もあるんだけど。特にギターに関しては一本か二本で壁になっちゃうから。
乃紫 音の壁ですよね。
本間 そう。だから全部ぶつかっちゃう。声もぶつかるし、スネアも消されちゃうし、ハイハットは見えなくなっちゃうし。5本入ってるのに全部見えるっていうのは、エンジニアの力もあるかもしれないけど、ギタリストにフレーズをリクエストする形とか、バランスがすごいなと思ってて。それでメロディーがちゃんと抜けてくるでしょ。そういう意味で、ギターアレンジとしては素晴らしいものだと思った。
乃紫 ありがとうございます。ギターとか楽器に関しては、楽器のプロじゃないって言ったんですけど、もし私がギターを弾いてるギターうまい子だったらアプローチの仕方がまた違ったと思うんですよ。だからいい意味で癖がないのかもしれないです。バッキングがここにあると心地がいいからここに置くみたいな。左右とりあえず置いて。目立たせたい音は真ん中に置く。音の配置と柔らかさと音色を効果として捉えて、声とかも「初恋キラー」だったら合いの手をガチャガチャ入れてるんですけど、それも楽器として使うみたいな感じで。
本間 ベースラインも指示してるんでしょ? すごいですよ。
乃紫 たまに「コードぶつかってるんでここは変えてもいいですか?」みたいなのがあります。ぶつかってたんだみたいな。
本間 ぶつかってるとか気にしなくていいんですよ。それがロックですから。ストリングスラインとボーカルがちょっと半音ぶつかってるみたいなのあるけど、大丈夫。両方良いフレーズだからね。
乃紫 そういう音楽とか楽器に詳しい音楽業界の人は気になるかもしれないけど、世界の人口の何割なの?って話なんですよね。ほとんどの人は音楽に興味がないのが前提で、そういう人が聴いて良いなら、理論が間違っても良いと思っています。
本間 全然良いんです。イングリッシュガーデンみたいなね、雑草みたいなのが生えてる方が季節感もあるし、ちっちゃい花がポロポロと咲いてたりするし。その違和感みたいなものっていうのは、サウンドには必ず必要だと思ってて。引っかかりにもなるし。服で言うと差し色みたいなものだね。それは写真やってたらわかると思うんですよ。構図ってきれいに収まってる構図もいいけども、ちょっとアンバランスな構図とか、被写体ブレみたいなのっていいじゃないですか? 被写体が動いちゃったからぶれちゃったっていうのは、それはそれで面白かったりするのもあるし。
乃紫 逆光でも白飛びしててもいいですし。
本間 全然良いよね? ハービー・山口さんっていう写真家の方がいて。和洋問わずアーティストを撮ってる方なんだけど、その人ワンショットしか撮らないんだよね、同じところでは。「一回しか撮りませんよ」って。そうしたら一回しかやらないことに対する撮られる側の集中力って変わってくるし、あっち向いてる人がいてもそれもその瞬間だし、画になるんだよね。だから音楽もそんな感じで、その瞬間切り取ったやつが一番いいからって。その最たるものがライブだと思うんですよね。
乃紫 そうですね。
本間 10年後の自分ってどうありたいと思います?
乃紫 日本中みんなが知ってるアーティストになるのは目標ですね。当たり前かもしれないけど。どこをとっても弱みがないアーティストになりたいです。ライブも強いし、グッズもかわいい。音源もSNSで常に聴くし、チャートの上位にいる。無理かもしれないですけど、それを満たしていきたいです。
本間 結局そういう思いがないと実現しないんで、思いを持ち続けることが大事だと思うんですよね。時には凹むこともあると思うけど、持ち続けることで必ずそっちに向かっていくんですよね。言霊っていうのがあるぐらいなんで。ゆくゆくはちゃんと世界を見れるようなアーティストになれると思います。この13曲でこのクオリティが出せたら、じゃあ 50曲になったらどうなってんだって思うし。頑張ってアジアに響きわたって欲しいし、なんなら北米を狙っていけるようなタイミングを作って。タイアップは好き? それに合わせて作ったりするの。
乃紫 苦手ではないですね。大きいタイアップをやるってなった時に、『君の名は。』のRADWIMPSのような関わり方とかしたいですね。
本間 中の音楽全部やってる感じのね。劇伴もできそうだもんね。
乃紫 やってみたいですね。映画館で聴きたいですよね、自分の曲。