2024.10.10 18:00
ソン・シギョン
2024.10.10 18:00
料理は音楽とすごく似ていて面白い
──今までたくさん日本語カバーを歌った中で、すごく自分に響いた曲というのはありましたか。
今まで歌った曲は、全部響いています。全部自分のものにして歌っているから、歌詞も忘れないし。
日本の曲は本当に美しい。韓国の曲にも韓国の曲の魅力があるけど……。食べ物と同じですね。韓国にはない日本の味があり、日本にはない韓国の味がある。だから惹かれるんです。特に日本の曲は、風、空、季節の変わり目など自然が感じられる。最近の韓国は星も見えないし、そういう風情がなかなかなくて。きっと、PM2.5(微小粒子状物質)のせいだな(笑)。島国というのも大きいんでしょうね。自然が美しくて、世界は海の向こうにある。だから日本の歌やアニメには、僕たちが感動するような美しい世界が描かれるんでしょうね。
──何度も来日されていますが、足を伸ばして、そういう自然を感じるということはあるのですか。
今年の7月に、九州を1周しました。父の80歳のお祝いで家族全員が集まって、バスを借りて、福岡、長崎、大分、鹿児島、熊本で温泉巡りをしました。九州は済州島(韓国を代表するリゾート地)の大きい版みたい(笑)。阿蘇山の高原も済州島そっくりだし、黒豚が名物だし、捕れる魚も似ているし。東京、大阪、北海道などともまた違った感覚を味わえました。楽しかったです。
僕は海外に行くと、毎日、朝晩に散歩をするんです。韓国ではすぐバレちゃうから、なかなかできないことなので(笑)。散歩しながら写真を撮りまくったら、空と海の写真ばかり100枚くらいありました。
──九州はお酒も美味しいから、酒豪のシギョンさんには楽しめたんじゃないですか。
そうですね。子どもには遊園地、ソン・シギョンには九州が最高の場所かも(笑)。酒蔵にも行きましたよ。芋焼酎が美味しかったです。
──芋焼酎はクセがあって苦手な人も多いのですが……。
僕もクセがある人間なので(笑)。やみつきです。スッキリしていて、香りが頭にすっと入って来る感じですね。
──お酒といえば、坂上忍さんのYouTubeチャンネル『坂上家のチャンネル』で日韓を代表する呑んべえ対決をしていましたね。シギョンさんから見て、酒飲みとしての坂上忍さんさんはどんな方でしたか。
「お酒が好きな人に悪い人間はいない」というのは、坂上さんのための表現だと思います。体を鍛えて、ビジネスを大きくして、豪華で贅沢な人生を送るよりも、この1杯を一緒に飲む人がいれば人生はハッピーという人。有名な芸能人なのに、時計にも車にもファッションにも興味がなくて、イヌやネコの保護活動にお金を使っている。ただ酔えればいいのだけれど、1人で飲むのはちょっと寂しい(笑)。そういうところもそっくりで、兄弟を見つけたみたいな感覚でした。
──シギョンさんがお酒を飲むときのポリシーも、「楽しく飲めればいい」ですか?
僕はそれに加えて、美味しいものも大事。この食べ物にはこのお酒を、このお酒を飲むときはこの店に行くというのがこだわりですね。
──ということは……歌以外に興味があることは、食べることと飲むことですか。
20代のころは、自分を飾るためにお金を使ったこともありました。それが芸能人だと思っていたから。でも一方で、それは下品なことだとも思っていたんです。無駄にお金を使わない方が、侍みたいでカッコいいと感じていたから。
でも年を経てコンサート前に禁酒をするようになったら、「飲まないと、時間ってこんなにもあるんだ!」とびっくりしたんです(笑)。飲む以外に、やることがない。ファッションにも芸術にも、何にも興味がない。お酒しか知らないバカげた人生を送ってきたことに、40歳になって気付きました。この年(45歳)になって後悔するのは好きじゃないけれど、ちょっと変わりたいと思っています。
──公式チャンネルでその腕前を披露されていますが、料理は素敵な趣味じゃないですか。料理は昔からお好きだったんですか?
いいえ、「今日何食べる」(2014年~2016年)というおうちご飯のレシピを紹介する番組でMCをしていた時に、有名な料理人が番組で紹介したレシピを家で復習して上手くなりました。それ以降も料理番組をやったし、コロナの間、誰に言われたわけでもないのにInstagramに1年以上、毎日、作った料理の写真をアップしたりも。それでさらに実力が伸びました。最高のレベルとまではいかないけれど、主婦のように和食・洋食・中華・韓国料理、何でも作れるようになりました。料理と音楽って、すごく似ている気がします。向いてますね。楽しいし、面白い。
──YouTubeチャンネルには、料理を作ってゲストの芸能人をおもてなしするコーナーもありますが、おもてなしのメニューはどうやって決めているのですか。
今日もこのインタビューの後に、俳優のパク・ソジュンさんがゲストで来るんです。今日は、冷たい茹で肉、豆腐チヂミ、キムチ炒め、茹で肉のだしで作った大根のスープを作る予定。メニューはあらかじめソジュンさんに電話で「何食べたい?」ときいて決めました。ソジュンさんは焼酎が好きで、韓国料理が好き。「ちょっと食べてから、ウイスキーを飲みたい」というので考えたメニューです。
──誰かのために何かをすることが好きなんですね。
そうですね。そこが、歌と一緒なんだと思います。歌を作って、聴いてくれる人が気に入ってくれるかちょっとそわそわして。「すごくいい歌」と言われると嬉しい。
──本当に歌と同じですね。喜んでもらうためにやる。
そうですね。だから、反応がないと辛い。曲がヒットしなかった時って、せっかく作ったごはんを残されたお母さんの気持ちと同じなんじゃないかな?
──シギョンさんは、お母さんが作ってくれた料理にはちゃんと「美味しい」というリアクションをされるんですか。
しますよ。昔はいい子だったので(笑)。でも、うちのお母さんの料理は、本当に美味いんですよ。僕の食道楽はお母さんの影響かもしれないですね。
──12月の「年末コンサート」以外に、日本での新曲の予定などは?
これまで日本でリリースした曲は、僕が韓国で作った曲に日本で歌詞を乗せたものが多かったのですが、僕は日本の市場にそんなに詳しくないから、プレッシャーも大きくて。だからこれからは、日本では歌手に専念したいんですよ。僕の声という食材を使って、美味しい料理を作ってくれる日本のプロデューサーさんに曲作りはお任せしたいと思っています。とにかく僕は歌を歌う人なので、歌うことに集中したいと思っています。