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自分を重ねたくなる脚本と演出、豪華役者陣の“絶妙さ”とは

その“モノガタリ”は誰のもの?江口のりこ主演『ワタシタチはモノガタリ』開幕

2024.09.09 12:00

2024.09.09 12:00

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絶妙なキャラクターを見事に演じた役者陣

本作のストーリーライン自体は割りとシリアスで、そして特に奇をてらったような言葉もギャグもないのに、客席には笑いが多く起こる。それは、出演俳優陣たちがとにかく芸達者なことも大きいだろう。横山拓也の脚本は会話自体がユーモアとウィットに富み、登場人物たちがとにかくよく喋る! 使われている言葉はとても日常的なのに、絶妙なタイミングと速度で交わされる会話は聞いているだけでも気持ちよく、思わず笑ってしまう。江口のりこと松尾諭、両人とも今や映像界で引っ張りだこの名バイプレーヤーであることは言うまでもないが、今作でその実力を改めて実感する人も多いのでは? 特に江口のりこのツッコミのキレ、その気持ちよさたるや! 永遠に見ていたいとすら思える。

また、その2人に絡む松岡茉優と千葉雄大の実力は言わずもがな。記者会見で「出演者の方々の、今までと少し違った一面が見られるのでは」と語った演出の小山。「稽古していけばいくほど、それぞれの方のいろんな面……繊細な部分だったり、割とパワフルな部分だったりとか、こんな意外な面もあったんだなと思わされるような瞬間がたくさんあった」とのことだが、特にこの2人の2役のギャップは相当なものだ。松岡茉優の“人気女優”役は見事すぎて爆笑してしまう。あと千葉雄大演じるウンピョウの“現代アーティストにいそうな”感じ。そういうところのさじ加減が本当に絶妙なのだ。

千葉雄大演じるウンピョウ

本作は、演劇らしいドラマチックな出来事がたくさん起こるわけではない。派手なステージングアクトが連発されるわけでもない。でも……とにかく、刺さる。特にある程度の年齢を重ねている人たちには、思い当たるふしが多いのではないだろうか? 「30歳まで独身だったら結婚しよう」という“冗談めいたつもりでも、実は頭の片隅で保険のように期待していた自分に嫌気が差す”約束だったり、「何者かになりたかったかつての自分と、そうでない現実のギャップ」だったり。そういうエピソードに少しでも胸の奥がざわつく人は、特にこの作品がグッと来るはずだ。

かといって傷をえぐり出すような露悪的な作品ではなく、むしろその逆。記者会見で松岡茉優は、作品について「根っからの悪人は1人も出てこない」と語ったが、本当にその通り。かつての自分と、今の自分とを重ね合わせて、想いを馳せたあとに抱きしめたくなる。PARCO劇場という空間にピッタリの、とても優しく、良質な作品。ぜひ多くの人に観て欲しい。

『ワタシタチはモノガタリ』初日前会見より

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作品情報

PARCO PRODUCE 2024『ワタシタチはモノガタリ』

PARCO PRODUCE 2024『ワタシタチはモノガタリ』

東京・PARCO劇場:2024年9月8日(日)〜9月30日(月)
福岡・キャナルシティ劇場:2024年10月5日(土)・6日(日)
大阪・森ノ宮ピロティホール:2024年10月11日(金)〜10月14日(月祝)
新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場:2024年10月18日(金)・19日(土)

【チケット(全席指定・税込)】
東京:土日祝12,000円/平日11,000円/U-35チケット6,000円/U-18チケット3,000円
福岡:S席11,000円/A席8,000円/U-35チケット5,500円
大阪:12,000円
新潟:S席11,000円/A席8,800円/B席5,500円

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

作:横山拓也
演出:小山ゆうな
出演:江口のりこ 松岡茉優 千葉雄大
/入野自由 富山えり子 尾方宣久 橋爪未萠里/松尾諭

美術:乘峯雅寛 照明:日下靖順 音響:清水麻理子 映像:大鹿奈穂・上田大樹
衣裳:伊藤佐智子 ヘアメイク:宮内宏明 ステージング:田井中智子 演出助手:畑田哲大 舞台監督:齋藤英明・幸光順平
宣伝美術:榎本太郎 宣伝写真:伊藤大介 宣伝衣裳:伊藤佐智子 宣伝ヘアメイク:谷口ユリエ・岡澤愛子(松岡茉優) 宣伝映像:尾野慎太郎 宣伝:吉田プロモーション
制作:沢田侑穂・掛田裕子 プロデューサー:祖父江友秀・山家かおり 製作:小林大介
制作協力:ニベル 企画製作:株式会社パルコ

江口のりこ

アーティスト情報

1980年4月28日生まれ、兵庫県出身。
00年に劇団「東京乾電池」に入団し、同劇団の公演に参加しながら02年『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(三池崇史監督)で映画デビュー。『月とチェリー』(04/タナダユキ監督)で映画初主演。
『事故物件 恐い間取り』(20/中田秀夫監督)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。
近年の主な出演作に『愛がなんだ』(19/今泉力哉監督)、『ツユクサ』(22/平山秀幸監督)、『川っぺりムコリッタ』(22/荻上尚子監督)、『BAD LANDS バッド・ランズ』(23/原田眞人監督)など。今後の公開待機作として主演作『あまろっく』(24/中村和宏監督)がある。
TVドラマ「時効警察」シリーズ(06・07・19/テレビ朝日)、「半沢直樹」(20/TBS)、「ソロ活女子のススメ」(21/TV東京)、「SUPER RICH」(21/フジテレビ)などでも個性を発揮し、人気を博している。

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