2023.11.13 17:00
2023.11.13 17:00
今は一つに決めず、いろいろと挑戦したい
──やはり舞台で共演経験がある方と映像の現場で一緒になるのは、安心感がありますか?
ありますね。といっても、古川さんとは『エリザベート』のときも現場ではほとんど喋らなかったんですよ(笑)。エリザベートは役柄的にも舞台に出ずっぱりだったり袖でも早変わりが多いし、また古川さんはとてもストイックな方ですから、常に役柄に集中されているし。でも2019年からご一緒していることもあり、遠慮なく言いたいことは言える間柄ではありますね(笑)。実は今回、ご一緒したシーンがすごく集中力を必要とする、とても苦しいシーンばかりだったんです。たぶん、私のことをご存知だから、それを察してそっとしておいてくださって……喋らなくてもそういうのをわかってくれる方が現場に居たのは、本当にありがたったです。
──家定の正室である胤篤・天璋院役で、シーズン1にも登場された福士蒼汰さんの再登場するというのも話題になっていますね。
シーズン1とはまた違う顔が観られますから、この作品のファンの方はとても楽しめるのではと思いますよ。あと胤篤とのシーンは家定が少しウキウキしているというか、とても賢い人物なんですけどその中に可愛らしさが見えるようなシーンになっているんですよね。家定の“女の子”の部分がどんどん出てくるわけです。監督にも「初恋を楽しんで欲しい」と言ってもらって、そういうピュアな恋心も表現できていればいいな、と思います。
──今作を経て、映像作品への意識というのは変わった部分はありますか?
これは舞台もそうなんですけど、慣れるということはないと思います。ただ、“作り込まない”こと……とにかく考えるべきことは考えるけど、本番ではその場の空気や相手の方の感情、監督からのアドバイスを大切にして、自分の中で立ち上がる何かみたいなものだけでは作らないようにしよう、というのは常に思っていて今回もその挑戦はできたかな、と思っています。でもまだ、緊張の方が勝っている気がしますね。
──退団後はミュージカル作品だけでなく、今回のような映像作品や、『泥人魚』のようなストレートプレイ作品など、幅広く挑戦をされていますよね。やはりいろいろとチャレンジしていきたい、という思いは強くあるのでしょうか?
そうですね。とにかく宝塚という舞台上で、娘役を極めるということをやっていたので、今はあえて“何か”というものは決めず、いろいろやりたいなという思いがあります。その中で「これは好きだな」というものに出会ったら、そこを強化していくという風になればいいかなと。だから、刺激になるかなと思うものはなるべくチャレンジしていきたいんですよ。
──そういう意味では『泥人魚』は唐十郎作品でしたし、なかなかの刺激だったのでは……?
チャレンジの結果ですね(笑)。あの作品に関しては、考えてもたどり着けない……「考えるな、感じろ」と言われても感じることすらどうやったらいいのかという。それもまた“考えてしまう”ことで、本当に難しいなと。でもあの作品で唐十郎さんの娘さんの美仁音さんが出演されていたんですけど、やっぱりお伺いするといろいろと考えているんですよね。わからないなりに考えて考えてその先に生まれたものだったり、リアリティが生まれたときが凄く楽しいと。それは私にはわからない感覚で頭を抱えたんですけど、ある日最後のシーンで宮沢りえさんと対峙した時、自分が泣いているんです。セリフ等を100%理解できているわけではないのに泣いている。それは不思議な感覚で……だから、『泥人魚』を経験できたのはとても良かったと思っています。
──今後も、まだまだ「チャレンジ」は続いていく、と。
そう考えると、ミュージカルや演劇というカテゴリだけでも、まだまだ挑戦できるものはたくさんあるんですよ。私は常に「ファンの方を退屈させないような自分でいたい」と思っているんですけど、いい意味でファンの方を振り回して、期待を裏切っていきたい、その姿を常に楽しんでいただきたいなと。もちろん「ファンの皆さまが好きな私」というのもきっとあると思うんですけど、その「皆さまが好きな私」の姿が増えていったらいいな、と思うんです。
宝塚時代は自分の中で思う「娘役」と自分がかけ離れていることとか、すごく悩んだんですね。でも頑張ってそれを何か自分の物にしていったら、いつか「面白い」と言ってくれる人が出てきてくれるんだなと。それを実感してしてからは、そういう部分も含めて自分の個性だと思うようになりましたね。何か一つにまとまりたくはない、常にはみ出た感じでいたいな、とすら思うようになりました。
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