幾田りら、松下洸平、渋谷龍太らとの制作秘話を明かす
武部聡志が「ジブリをうたう」に込めた狙いと意義 今の時代に“歌い継がれるべき”名曲とは
2023.11.02 18:00
2023.11.02 18:00
トリビュートの意義は時代を超えること
──人選のバリエーションという意味ではバンドの方もいらっしゃるし俳優さんもアイドルの方もいて。松下洸平さんとはどんな繋がりなんですか?
洸平くんは何度もテレビの番組とかでご一緒して、彼の歌のポテンシャルというか、スキルみたいなものを素晴らしいなと思っていて、いつか一緒に仕事したいと思っていたんですね。それで今回いい機会だったのでお声掛けしたところ、これも「カントリー・ロード」歌いたいというふうに洸平くんの方から言ってくださって。僕は洸平くんが歌うのだったらやっぱり洸平くんに合うサウンドを作りたいなと思って、“カントリーロード・松下洸平バージョン”のつもりでアレンジに臨みました。
──ゴスペル的なコーラスですね。
あれはね、僕が入れたいというアイディアを出しました。洸平くんの歌を録る前からそういうものを入れたいと思っていたのですが、洸平くんが歌入れ全部終わった後にちょっとゴスペルっぽいコーラスが入ったらいいなって、ポロっとそこで言ったんで「よし。やっぱり考えてたことは一緒だったんだな」と思って最終的に歌の後にコーラス入れましたね。
──ところでオリジナルで存在感が一番強い楽曲というと?
どれも強いですよ。オリジナルの持ってる説得力とか、映像的にシーンが浮かぶことであったりというのはすごく強いですよね。幾田りらさんが歌ってくださった「いのちの名前」は彼女が割と小さい頃からこれを歌っていたというストーリーがあって。これは彼女自身が「この曲を歌いたい」という希望があったので、それはもうぜひ願ったり叶ったりというか。この曲はピアノインストゥルメンタルとしても知られていますし、歌が乗ったバージョンもあとからできたと思うんですが、すごく幾田さんに声に合ってる曲だなと思いましたし、実際歌入れの時に歌のうまさというか、今一番勢いのある、そういうものを声から感じましたね。だからりらちゃんの歌入れはすごく楽しかったです。
──そしてボーカリスト以外のプレイヤーでは唯一角野隼斗さんが参加しています。
これはもう僕がこのアルバムの企画が進んで、だいぶ人選が進んだところで一曲やはりインストゥルメンタルアーティストに参加してもらいたいなと考えました。今一番一緒にやりたい人は誰だろうな?と思ったらかてぃん(角野隼斗)だったんですね。以前に僕はかてぃん(角野隼斗)が弾いてるゆずの曲をテレビの番組で弾かなくてはいけないという時に、「なんて難しいんだ」って愕然として(笑)。すごい超絶だなと思って、彼にダイレクトメッセージを送ったことがあるんです。それ以来、メッセージ上のやり取りでいろんなことを会話していたのですが、「今回こういうアルバムを作るのでぜひ角野くんのピアノをフィーチャーしたいんだ」と言ったところ、彼自身もジブリの楽曲をカバーして動画をあげていたり。だからやっぱりジブリの曲っていろんなジャンルのミュージシャンに刺さるんだなというか、やっぱり久石(譲)さんは素晴らしいなと改めて思いましたよね。
──そして満島ひかりさんはご自分で「ひとりぼっちはやめた」を選ばれたんですね?
満島さんとは何度もやり取りして、もうその曲は他の人が選んでるからダメだって曲も出てきましたし、違う曲も出てきたし、何度目かの正直でこれに落ち着いたんです。「ひとりぼっちはやめた」っていわゆる駿さんの映画の本線とちょっと違うじゃないですか、楽曲として。ただやっぱり素晴らしい楽曲だし、矢野顕子さんのすごく印象的な楽曲ですから、まず矢野さんの許諾が下りるかどうかというハードルがありました。矢野さんに問い合わせたところ矢野さん自身が満島さんのファンで、「満島さんが歌ってくださるのなら喜んで」とご快諾いただきました。
──そしてバンドマンからもうお一人、SUPER BEAVERの渋谷(龍太)さんはいかがでしたか。
これは最後の1組を渋谷くんにやってほしいなあって僕は熱烈なラブコールを送って。彼とはFNS歌謡祭で安室奈美恵さんの曲をカバーして歌うというプログラムを僕のピアノとストリングスとギターのシンプルな編成でアレンジをして、渋谷くんが素晴らしい歌を披露してくれて。彼自身も僕のアレンジを気に入ってくれたという経緯もあって、そこですごくいいバイブレーションでセッションができたんですね。それがなかったらこれは実現しなかったかもしれないんですけれど、それがあった上で「一緒にやろうよ」って声をかけたところ、忙しいスケジュールを割いて参加してくれて。楽曲は彼からこれ(「時には昔の話を」)を歌いたいというふうに一択できました。
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