押井守は「現代文学を表現する最適のスタイル」と評価
村上春樹作品が初のアニメ映画に 2011年の東京が舞台の『めくらやなぎと眠る女』来年初夏公開
2023.10.16 18:00
© 2022 Cinéma Defacto – Miyu Prodcutions – Doghouse Films – 9402-9238 Québec inc. (micro_scope – Prodcutions l’unité centrale) – An Origianl Pictures – Studio Ma – Arte France Cinéma – Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma
2023.10.16 18:00
村上春樹原作の長編アニメーション映画『めくらやなぎと眠る女』が2024年初夏に劇場公開されることが決定し、場面写真が公開された。
本作は村上春樹の6つの短編(『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』)をピエール・フォルデス監督が翻案したアニメーション作品。監督が「ライブ・アニメーション」と名付ける実写撮影をベースにしたアニメーション制作技法で作られており、村上春樹作品の不思議かつ生々しいリアリティを再現することに成功した。
物語の舞台は2011年の東京。東日本大震災から5日後、刻々と被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、置き手紙をのこして小村の元から姿を消した。妻の突然の失踪に呆然とする小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるために北海道へと向かうことになる。同じ頃のある晩、小村の同僚の片桐が家に帰ると、そこには2メートルもの巨大な「かえるくん」が彼を待ち受けていた。かえるくんは迫りくる次の地震から東京を救うため、こともあろうに控えめで臆病な片桐に助けを求めるのだった。めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下。大地震の余波は遠い記憶や夢へと姿を変えて、小村とキョウコ、そして片桐の心に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは本当の自分を取り戻すことができるのだろうか。
本作は監督にとって初の長編アニメーションでありながら、昨年6月のアヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映され、同映画祭で審査員特別賞を受賞。今年3月に新しく始まった新潟国際アニメーション映画祭では見事第一回目のグランプリに輝いた。同映画祭の審査員を務めた押井守は本作の受賞理由として「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」とコメント。監督自らが音楽も手掛ける本作は、レザルク・ヨーロッパ映画祭作曲賞を受賞したほか、世界各国の映画祭で高い評価を得ている。
また、村上春樹原作の映画としては初のアニメーションとなる本作は、『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)や『バーニング』(イ・チャンドン監督)などと並べて紹介されるほか、東日本大震災を背景にした作品としてヨーロッパでは新海誠監督の『すずめの戸締まり』と併映されるなど、世界での公開後も広がりを見せている。
なお、ピエール・フォルデス監督は10月28日(土)に早稲田大学国際会議場で行われる国際シンポジウム「世界とつながる日本文学~after murakami~」にパネリストとして、また11月5日(日)にはコンペティション長編部門に選出された第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭での本作上映にゲストとして登壇が決定している。
ピエール・フォルデス監督 コメント
『めくらやなぎと眠る女』が日本で公開されると聞いて、とても幸せな気分です。この映画は、純粋なひらめきと野心の両方から生まれました――史上最も偉大で最もインスピレーションに溢れた作家の作品から得たひらめきと、アニメーションにおいてテクニックだけではなく語り方をも一新しようとした野心の産物なのです。様々な物語とキャラクターを絡み合わせつつ、この映画は、様々な物語とキャラクターを絡み合わせつつ、2011年の地震と津波という大きな出来事が、登場人物たちをいかに目覚めさせ、自分の人生を生きようと試みさせるのかを探っていきます。私が村上春樹の小説を読んでいるときに感じたような、そしてこの映画を作っているときに感じたような大きな刺激を、観客に感じてほしいと思っています。私にとってこの映画は、控えめに言っても近年作られた最も革新的な長編アニメーションなのです。この映画が、優れたアニメーションを生み出すことで知られた国で公開されることに興奮しています。私はこの映画の脚本を、新幹線の中でお弁当を食べながら書き終えたのですから、なおさらです!