今年もフル満喫した庄村聡泰が最も印象的だったアクトは?
フジロック総括1万5000字レポート(後編) 誇るべき日本を感じた2日目夜〜最終日
2023.09.07 18:00
FOO FIGHTERS(Photo : Taio Konishi)
2023.09.07 18:00
FUJI ROCK FESTIVAL ’23最終日のヘッドライナーはLIZZO。第65回グラミー賞年間最優秀レコードに「About Damn Time」が輝くという絶好のタイミングでの来日。稀代のポップスターが今年のフジを華やかに、そして艶やかに締めくくってくれるであろうその瞬間を目撃せんと実に大勢の待機組が待ち構えている。そりゃやっぱこのタイミングだもん。観ときたいよなあ。定刻25分弱を過ぎたところで暗転。ステージセットとして据えられた扉からLIZZOが登場。フルバンド、そしてダンサーを従えた絢爛豪華な編成にてライブは「CUZ I LOVE YOU」からのスタート。そしてギターのカッティングが軽快にリードする「JUICE」に「2 BE LOVED」と大盤振る舞いなセットリスト。MCでは日本語も交えつつ何度も”ニッポン!”と煽る。そういえば“Japan!”じゃなくて“ニッポン!”てのもなんだか珍しいというかあまり聞いたことがなく、これも彼女なりのサービス精神なのだろうかなんて思うとより一層の愛おしさで持ってこちらもライブに参加したくなるというもの。そんなLIZZOのあらゆるものを認め、そして肯定していこうという精神がGREEN STAGE全体に伝播していく。
中盤衣装を着替えたLIZZO。なんとこちら、武内直子による漫画『美少女戦士セーラームーン』の変身シーンを模したものであるとのこと。“日本でどうしてもやりたかったことがある”とのことで“ムーンプリズムパワー!メイクアップ!”と一声。本当の本当に、嬉しそうなLIZZOであった(笑)。その後も得意のフルートの腕前を披露したり自身の楽曲「Coldplay」の前フリとして“大好きなバンドの曲を”としてCOLDPLAYの「YELLOW」をカバーしたり客席に掲げられた自身のイラストに目をつけ、そちらにサインしたりと、単なるライブというよりは総合エンタメショウといった趣のもの。「About Damn Time」にて大団円を迎えたLIZZOであったが、その表現の全てには受け手へのホスピタリティ精神が根底としてあることが感じられ、”世界中のお互いがそうでありますように”という祈りのステージングであるように筆者は感じた。
かくしてGREEN STAGEは全アクト終了となったが、やはりどうしてもWEEZERは観たいのだ。今まで何度も聴いているし何度も観ているし、もう今から向かったところで半分も観られない状況ではあるものの、やはりあの愛すべきメガネ(1人はメガネじゃないけれど)たちに会いたい。会わずにはいられない。こうしてWHITE STAGE到着とほぼ同時にプレイされたのはファーストからの「Say It Ain’t So」。パンパンのWHITE STAGEは大合唱だ。筆者も思わず歓喜の声が漏れてしまう。そして安心した。昨夜FOO FIGHTERSの新メンバーだったPatrickがちゃんとドラムを叩いている。ああよかった(笑)。バンドはちょうどラストスパートを迎えんとしていた頃合いであった模様で、そこからは「Hash Pipe」そして曲名まんまの「Thank You and Good Night」で本編を終え、程なくアンコールに応える形でファーストから「Surf Wax America」と「Buddy Holly」のコンボでフィニッシュ。文句ナシの選曲。来てよかったと心から思う。
もはや疲労骨折寸前の踵を引きずり、なんとかたどり着いたのはRED MARQUEEのGINGER ROOT。今年1月の国内ツアーを見逃してしまったことと、フジ最終日である今日は絶対何か仕込んでいる違いないと思ったからである。予想は大当たり。80年代のテレビ番組をオマージュした力の入りまくったMVでの演出をライブにも持ち込んでくれたようで、RED MARQUEEを丸ごとタイムスリップさせていた。終盤はこれも絶対やると思ってたYMOのカバー。しかも「東風」「TIGHTEN UP」「RYDEEN」「君に、胸キュン。」と4曲ノンストップ。ラストの「Weather」前にはコール&レスポンスのレクチャーがあったのだが、そのタイミングがあまりにも性急すぎて何度もやり直すという一幕が見られ(しかも彼のMCはほぼ全部日本語)、随所に挟まれる小ボケなど、そんなところにまで精通しているクレバーなライブ運びにはもう、笑うしかなかった。
と、いうわけで本当に大変な文章量となってしまったショウムライターによるFUJI ROCK FESTIVAL ‘23の覚え書きであるが、いかがだっただろうか。私的ベストアクトはひたすらにツボだったJOHN CARROLL KIRBYとひたすらにイカれていたBLACK MIDI。そして裏ベストアクトは1日で2回もカバーを聴いた(どうやらFKJも「戦メリ」をやったらしい)YMOと2年続けて夏フェス来日アクトの衣装として選ばれたセーラームーン(昨年のサマソニではMegan Thee Stallionがセーラームーンのコスプレで登場)。あとなんとか疲労骨折を免れた俺の踵ですかね(笑)。