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山西竜矢が森田想、岡本夏美と描く素直な人間模様 『点滅する女』で目指す“中間”の表現世界
2023.06.11 12:00
2023.06.11 12:00
舞台は完成がないから飽きない(岡本夏美)
──森田さん、岡本さんが今言ったセリフの掛け合いやリズム感というのは山西さんが大切にしているところなのでしょうか?
山西 そうですね。「掛け合いを大切にするぞ!」と思って書いているわけではないですが、自分自身が日常会話でも掛け合うタイプの人間なので、それが出ているということなんだと思います。今、2人とも読みやすいと言ってくれましたが、僕の脚本って人によっては合わない人もいると思うんです。でも今回出ている方はみんな合っている。皆さん、素敵で変な人たちです(笑)。
岡本 いやいやいや、誰が言うてるんですか!(笑) でも皆さん本当に素敵な先輩で。
森田 距離感がいいよね。
岡本 うん。稽古中に私が咳をしていたら金子さん(金子清文)が飴をくれたことがあって。感動しました。もちろん皆さん「大丈夫?」と声をかけてくださるんですけど、こんな下っ端に飴までくださるなんて。でも、金子さんの人柄のおかげで、恐縮しないでいられるというか。感謝を素直に受け取れるんです。皆さんそういう先輩なので、助かっています。
──森田さんは今作が初の舞台出演ですが、初めての舞台ということに対しての意気込みなどはありますか?
岡本 映像とあんまり変わんないでしょ?
森田 うん。声を大きくしなくちゃいけないな、くらい。でもそれは山西さんの舞台だからかも。山西さんは映像のサラブレッドだから……。
岡本・山西 サラブレッド!?
──ハイブリッドですかね(笑)。
森田 そう! 山西さんは映像と演劇のハイブリッドだから、今はまだ演劇感をそんなに感じていないんですけど、会場入ったら「やばい!」とか言うと思う(笑)。でも今のところはまだそんなに違いを感じていないですね。でも、お客さんが直接いらっしゃる空間って、舞台挨拶くらいしかなかったから。
岡本 そっか、人に見られてお芝居をするということがまずないのか。
森田 そう。だから「私のことを知っている方も来てくれているんだ」ということにすごく感動すると思います。
──岡本さんは、映像作品にも舞台にも出演されていますが、舞台の面白さはどういうところだと思いますか?
岡本 舞台って完成がないんですよね。映像は、監督が「オッケー!」って言ったら、その瞬間に完成として皆さんの元に届けられるけど、舞台はそうじゃない。毎日毎日「こうしたい」とか「もっとこうしたほうがいい」みたいなことが千秋楽まで出る。その生っぽさが好きですね。たまに「毎日同じことやってて飽きない?」と言われることがありますが、私はそう感じたことがなくて。追求すれば追求するほど「こうしたい」が出てきて飽きがくることが絶対にない。そこが面白いなと思います。
──山西さんも映像作品にも演劇作品にも携わっていらっしゃいますが、舞台ならではの面白さはどういうところに感じていますか?
山西 1つは、役者の身体がその場にあること。その日のその役者のその身体って、本当にその瞬間しか見られないじゃないですか。全然知らない人たちが集まって、1つの物語を介して空間的に繋がっている瞬間があるというのは感動的なことな気がするんですよね。僕は映画も撮っていて、映像作品もものすごく好きですけど、そのきらめきは演劇にしかないものじゃないかなと思います。あと舞台は笑いやすいですよね。映画はフレームの中で起こっていることだから、面白くても声を出して笑うにはハードルが高いと思うんですけど、演劇は板の上で実際に人が話しているから。言葉のプレゼンテーションという意味では演劇のほうが受け取りやすいのかなと思います。
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