2023.02.15 19:00
2023.02.15 19:00
選曲もパフォーマンスも演出も、キャリアを積み重ねなければ成し得ないものばかりが凝縮されたライブだった。声優、歌手として活躍する水樹奈々の、さいたまスーパーアリーナで2days開催されたバースデーライブ「NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023」。1日目は「LIGHTNING MODE」、2日目は「BLADE MODE」と題し、彼女がこれまで声優として演じてきたヒーローやヒロインたちが出演するアニメ主題歌や挿入歌を中心にセットリストが組まれた。
「LIGHTNING MODE」はアニメ『魔法少女リリカルなのは』の電撃使いであるフェイト・テスタロッサ、「BLADE MODE」はアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』の剣を武器に戦う風鳴翼から着想を得たステージを展開。このレポートでは水樹の誕生日当日ということもあり、サプライズも含まれた非常にハッピーな空間となった「LIGHTNING MODE」の模様をお届けする。
ステージにはアメコミテイストの漫画のコマ割り、中央には飛び出す絵本を模した東京の街のセットが組まれる。OPムービー内の水樹がスケッチブックに万年筆でヒーローの絵を描くと、その独特の画風に場内から笑いが漏れるものの、紙一面が黄色く光り出す。するとステージ中央のビルの上から、黄色い千鳥格子の衣装に身を包んだ水樹が登場。「思いっ切り楽しんでいきましょう!」と23,000人の観客に呼び掛け、「innocent starter」でこの日の幕を開けた。
水樹のバックバンドを務めるCherry Boysにはヴァイオリニストやサックスプレイヤーも参加し、豊かなうわものの音色も加わることで“戦い”をテーマにした楽曲群でも強靭さに加えて優雅さも生まれていた。水樹のボーカルも軽やかさと凛としたムードの両方に溢れ、「BRAVE PHOENIX」など切ないメロディの楽曲にも諦めない屈強な意志が迸る。
3曲立て続けに歌唱した水樹は、「わたしにとってホームであるさいたまスーパーアリーナで、皆さんと年明け最高のスタートを切ることができて幸せだよー!」と笑顔を浮かべる。この会場を“ホーム”と呼べるアーティストは、この世にどれくらい存在するのだろうか。彼女が長きにわたり第一線で走り続けてきたことをあらためて痛感する。すると自身の誕生日であることに触れ、「奈々ちゃんいくつになったのー?」「え~!? 見えな~い!」と声を出せない観客の心を自ら代弁(?)。「誕生日当日に皆さん、そして一緒に歩んできたヒーローヒロインに囲まれる幸せ! 本当に声優冥利、歌手冥利に尽きるなと思っております」と喜びと感謝を告げると、ショーはさらに華やかさを増していった。
「SECRET AMBITION」ではCherry Boysの面々がステージ前方に出て情熱的にプレイするなどヒーロー戦隊を彷彿とさせる硬派なステージを見せ、厳かなパイプオルガンの音色で始まった「迷宮バタフライ―diverse―」では、指先の繊細な動きまで楽曲の世界を反映させた水樹の演者としての佇まいに会場が引き込まれた。Cherry Boysのメンバーが憧れのヒーロー像を反映させたユニークかつパワフルな楽曲を届けた後、ダンサーチームのteam YO-DAとともにうさ耳のカチューシャをつけた水樹が花道へと現れる。これは前回の卯年の2011年に東京ドームで開催された「LIVE CASTLE」にて「次にうさ耳をつけるのは干支が1周したら」とMCで約束したことから。その衣装にぴったりのキュートなナンバー「Mr.Bunny!」と、観客もキャッチーな振り付けに興じた「Angel Blossom」で会場の熱気を高めた。Cherry Boysの生演奏に乗せたteam YO-DAのメンバー紹介を挟むと、なだれ込んだのは「PRIDE OF GLORY」。歌謡曲風のメロディは水樹の力強くレンジの広いボーカルがよく映える。色気の効いたサックスがアクセントになった「Take a shot」までノンストップでライブ本編の往路を走り切った。
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