ヒップホップで社会を生き抜く! 第13回
ケンドリック・ラマーの「前に進む」糧になる名言を紹介 成功や失敗についてアドバイス
2023.02.17 17:00
Kendrick Lamar: Getty Images
2023.02.17 17:00
2022年の5月13日にアルバム『Mr. Morale & the Big Steppers』をリリースし、「SUMMER SONIC 2023」のヘッドライナーを務めることも発表されたケンドリック・ラマー。ラッパーとして初のピューリッツァー賞を受賞し、最も偉大なラッパーの一人として知られている彼であるが、『Mr. Morale & the Big Steppers』は2023年グラミー賞で〈最優秀アルバム〉と〈最優秀ラップ・アルバム〉にノミネートされ、見事〈最優秀ラップ・アルバム〉を受賞。また、収録曲「Die Hard」が〈最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス〉、そして「The Heart Part 5」が〈最優秀レコード〉〈最優秀楽曲〉〈最優秀ラップ楽曲〉〈最優秀ラップ・パフォーマンス〉〈最優秀ミュージックビデオ〉の5部門にノミネートされた。
作品に込められた深いコンセプトで世界中のファンを魅了し、人生をインスパイアし続けるケンドリックであるが、ファンの“糧”になっているのは彼の作品だけではない。滅多にメディアやSNSに登場しない彼の印象的なインタビューや名言を紹介したいと思う。
成功について①
2015年にリリースした名アルバム「To Pimp A Butterfly」の「u」「i」にて、自己嫌悪と自己愛のコントラストを描いたケンドリック・ラマー。「u」では自分に対するマイナスな感情や自己嫌悪、そしてアーティストとして成功をしたが「人間として」の自分への鬱症状を語っており、2016年のForbesのインタビューでは以下のように語っていた。
「私にとって成功とは、ファンが人生を歩み続けたくなるように、その人たちの心と深く繋がることだ。いつも“もう生きたくない”と、自分を傷つけるような子供たちと出会う。でも私の音楽を聴くと前進する勇気がでると言ってくれるんだ。それが私にとっての成功であり、もっとも重要なことなんだ。一人ずつでもいい、そのような子供たちの人生において、私の存在が前に進む糧となるなら、私は音楽をやり続けるよ」
成功について②
2018年に行われた第60回グラミー賞で、ジェイ・Z、タイラー・ザ・クリエイター、ラプソディ、ミーゴスを抑えて『DAMN.』で最優秀ラップアルバム賞を受賞したケンドリック・ラマー。彼は受賞スピーチにて、ヒップホップと“成功”について以下のように語っている。
「この賞は特別なものだ。ラップは私をステージへ上げてくれたし、おかげで世界中をツアーすることもできた。家族をサポートすることもできた。そして真の“アーティスト”であることを教えてくれた。最初は栄誉、車、服など、そういうのが“成功”だと思っていた。でも本当は「自分を表現」し、次の世代、そしてその次の世代に向けて、世界を進化させるためにキャンバスに絵を描いていくことなんだ。ヒップホップは私にその力をくれた」
“ワック”の意味
2017年にリリースされ、世界的な文化現象になったと言っても過言ではない『DAMN.』。ジャズやクラシカル以外のジャンルで初のピューリッツァー賞を受賞したアルバムであるが、収録曲「ELEMENT.」では「ブラックアーティストとワックアーティストには違いがある」と語っている。“ワック”とはヒップホップのスラングで「ダサい」という意味を持つ言葉であるが、ケンドリック・ラマーはRolling Stone誌にて“ワック”の定義を以下にように語っている。
「ワックなアーティストは、他人のサウンドを自分の承認欲求のために使う人のことだ。“自分自身の声”を使うことを恐れて、他人の成功を追いかけるが、自分が持っているものから逃げる人。そのような行為がラップゲームの水準を下げるんだ。皆がケンドリック・ラマーになるわけではない。俺みたいにラップしろって言ってるわけではない。単に“自分であれ”って言っているんだ。単純なことだ。
他人の売上枚数や、他人のスタイルを真似することが気になりすぎて、多くの素晴らしいアーティストたちが失敗したり、クリエイティビティを抑制したりしている。結果的に、それはリスナーを抑制することに繋がるんだ。最終的には、私たちが作る音楽は私たちのためのものではない。朝起きて、仕事に行きたくないと思いながらも毎日働いているような人たちのためにあるんだ」
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