関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第7回
ジェイソン・ステイサムという俳優に酔いしれる『トランスポーター』
2022.11.13 12:00
2022.11.13 12:00
関根勤が偏愛するマニアックな映画な語る連載「関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!」。第7回目は2002年に公開された映画『トランスポーター』。
主人公のフランク・マーティンは退役軍人の運び屋。高額な報酬をもらえるのであれば、仕事をする相手は選ばない。どんな品物も時間厳守で目的地に運ぶ彼が絶対守るルールは「契約厳守」「依頼者の名前は聞かない」「依頼品を開けない」の3つだった。しかし、ある日彼はふとした瞬間にこのルールのひとつを破ってしまい……。
監督はルイ・リテリエが務め、あの『TAXi』シリーズを手掛けたリュック・ベッソンが脚本・製作を担当した本作。南仏を舞台に繰り広げられるカーアクションと、軽快な会話、サポートキャラの小粋さなど、『TAXi』との共通点も多い。そんな本作を通して、大好きな俳優のひとりとして挙げたジェイソン・ステイサムについて語ってもらった。
第7回『トランスポーター』
僕はジェイソン・ステイサムが大好きで、皆さんにも彼の魅力を知ってもらいたい。彼の出演作は他の作品いっぱいありますが、ステイサム入門としては『トランスポーター』が一番かなって。彼の出世作だしね。第1作目は今観直すとステイサムがすごく若いんですよ。ただ、第2作目から急にスターの風格を出してくる。余談ですが、トム・クルーズの『ミッション・イン・ポッシブル』も同じで、最初の映画はクルーズが子供みたいに見えるのに、続編から“スター顔”になっている。スタローンもそうでした。やっぱり顔が売れて、生活が変わったからだと思うんですよね。食べるものとか、含めて。『007』シリーズに出たダニエル・クレイグも言っていました。しかし、彼の場合はマイナスに働いてしまって、みんなに注目されたことで対人恐怖症みたいになってしまったらしい。もう、塞いじゃって。ただ、その後ヒュー・ジャックマンとミュージカルの舞台をやったんです。その時にとにかくジャックマンが外で待っているファンに、1時間くらい写真を一緒に撮ったりサインをしたりする人で。「クレイグもやれよ」って言われて彼もやらされていたらしい。行きも帰りもやらされるので、そうしているうちに「こういう人たちが僕らを支えてくれているんだ」って対人恐怖症を克服できたらしいんですよ。
だからやっぱり、ステイサムも1作目で当たって、それまでより注目されるようになったからこそ、意識が変わって顔つきも変わったんでしょうね。続編になったら急に顔のシワが増えたというか、堀が深まったというか。あれはすごいですね。彼は『ハミング・バード』とか『アドレナリン』とか、多くの映画に出演している俳優でもありますが、とにかく『トランスポーター』シリーズは3作全部観ていただきたいです。
本作は何より南仏を舞台に引退軍人が運び屋をやっている、という物語にロマンがありますよね。1作目はスー・チー演じるヒロインが魅力的。『トランスポーター』といえばシリーズそれぞれに登場する女性陣ですが、みんな負けん気が強くてすごいんです。そんな彼女たちに、喧嘩は強いはずのフランクが弱くなってしまうというのも見ていて面白いですよね。
そして彼女のお父さんを演じたリック・ヤン、あの人の顔も最高! 悪者をやらせたら東洋一ってくらい悪い顔をしているんですよ。映画全体的としては、監督がフランス人だからアメリカ人監督にはない、小洒落た感じがあって好きです。ベッソンの『TAXI』に似た雰囲気もあります。何より、フランクの知り合いのタルコニ刑事がとぼけていて、いいんですよね。伊東四郎さんみたいな感じで。
また、本作のアクションは素晴らしい。これを観て、スタローンも目をつけて、『エクスペンダブルス』にステイサムを重要な役で呼びました。あの辺の正統派アクション俳優の中では今スタローンが(年齢的に)ギリギリで、今はステイサムとドウェイン・ジョンソンの二人が引っ張っているような印象があります。
次のページ