本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第5回 熊木幸丸(前編)
Lucky Kilimanjaroの中心人物、熊木幸丸と語り合うダンスミュージックの可能性
2022.11.20 17:00
本間昭光×熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)
2022.11.20 17:00
ワクワクしながら作るのがいちばんいいこと(本間)
本間 初めてライブ観たけど、カリスマ感あった。勝手にみんながついていくオーラを感じちゃって。
熊木 アルバムのツアーを今年やらせて頂いたんですけど、そこでよりお客さんとちゃんと向き合うようになりました。ある種みんなが踊ることに慣れていない状態のなか、お客さんが踊るためにどういうアクションを僕がすべきかというところで、「一緒に楽しみましょう」という雰囲気をこっちから出さなきゃいけないなとツアーで学んで、改めてお客さんを引っ張っていけるダンスミュージックとしてライブしなきゃいけないなと思って、パフォーマンスが変わりました。
本間 お客さんは声出せなかったしね。
熊木 そうなんです。お客さんが自分から熱を発しづらいので、こっちが熱を与えてそれをお客さんにまわしてもらったほうがよくて。
本間 慣れてないお客さんは「踊れ」とかのきっかけを待ってるところもあったりするし、あとはリズムの構築で「次来る」って分かるようにわざと作ることもあるじゃん。
熊木 そうですね。ラッキリの場合は露骨にクラップが速くなってきたりだとか、ブレイクが入ってとか。
本間 あれは構築美だと思ってて、「来るな」っていう高揚感が間違いなくあるから、ラッキリはその誘導にすごく長けてるなと思って、音楽づくりの根本にそういうことを考えて作っているんだろうなとライブを観てて感じました。
熊木 本当は僕の趣味としてスローなアフロビートでやりたいけど、もしかしたらお客さんは踊りづらいかもしれないので、自分の好きな音楽ともっと分かりやすいハウスミュージックのバランスをどういうふうにLucky Kilimanjaroというバンドで混ぜて出力していくかということはすごく考えていて、腰で踊れる音楽もどんどん発信したいし踊って欲しいけど、そのためにハウスミュージックで楽しく気持ちよく踊ってもらうということを提案しないといけないので、特に踊りやすさを感じてもらうように最近のライブは構築しています。
本間 アルバムもそうだもんね。今ダンスミュージックをやっているバンドのなかでいちばん先頭走ってる感じがします。ライブを観てそれを確信めいて感じたんですよね。そのへんどう思ってるんだろうと思って今日聞いてみたかったんだけど、やっぱりめっちゃ考えてるんだなあ。
熊木 考えているかは分からないですけど、でもお客さんと楽しみたいなという思いはすごくあるので、そのためにタスクとかではなくてワクワクしながら考えています。
本間 ワクワクしながら作るっていうのがいちばんいいことですよね。ライブしてるときの画を想像してるでしょ?
熊木 すごく想像します。
本間 俺もそうだったもん。ライブのときどうなるだろうなっていうのを想像しながら、BPM設定も考えてた。それこそポルノグラフィティの初期なんかは、実験的にBPM100、110、120、130、140の曲を並べてみて、どれがいちばんポルノのお客さんはノりやすいのかなっていうのを客席でずっと観てた。最初ポルノグラフィティを聴いたのってどれくらいの年齢だったの?
熊木 中学2年生くらいからですね。2004年に『PORNO GRAFFITTI BEST RED’S』と『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S』が出たときに。そのタイミングが、僕が音楽を聴き始めたのと同時くらいで、近所のレンタルCDショップのランキングのところにずっとポルノグラフィティのCDがあって、気になって借りたのがきっかけです。それで「僕ポルノグラフィティすごく好きだな」と思って聴いてましたね。
本間 ポルノグラフィティがギター始めたきっかけって聞いてびっくりした。
熊木 楽器始めたきっかけですね、もはや。広島の凱旋公演で演奏した「メリッサ」を観て、ベースとギターの違いも分からないからイントロのサウンドを「これギターでやってるんだろうな、かっこいいな」と思って何も知らずにギターを買ったら違ったという(笑)。
本間 あのイントロはベースだもんね(笑)。
熊木 しかも晴一さんってバッキング的な気持ちよさを出すギターじゃないですか。いわゆるずっとリードギターとかじゃなく、カッティングとか渋いことをやっているんだなとカバーしながら思ってました。
本間 全部を吸収する素養があったんだね。
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